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第36話 「利益とキャッシュフローがねじれている」

2008年4月9日(水)

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◎前号までのあらすじ

 達也は経理部員の細谷真理とともに、ジェピーで行われていた不正支払いや循環取引を間中専務に告発した。しかし関係者は罰せられず、達也は間中専務から転勤を命じられ、愛知工場の副工場長に就任した。

 工場では、本社の経理部長、斑目の手によって利益の水増しが行われていた。不正の仕組みを解くカギは、工場にある仕掛品の金額算出方法にあった。達也はその仕組みに気づいた。だが粉飾はまだ明るみになっていない。

 公認会計士の西郷による工場の棚卸し監査が終わり、本社の監査の日を待つばかりになった。監査に立ち会うことになった達也は東京に戻り、真理に久しぶりに会った。達也は、間中がジェピーを乗っ取ろうとしているという話を真理に打ち明けた。会社が乗っ取られるかもしれないと気づいたのは、ジェピーの大株主である財部ふみだった(ふみは財部益夫社長の母親)。

監査1日目

 西郷はジェピー本社が入っている丸ビルを見上げていた。

 (こんな豪華なビルに本社を構えるなんて…)

 単なる感情ではない。会社にはそれぞれふさわしい場所がある、と西郷は思っている。ジェピーが商社や海外の得意先が多い会社なら話は別だ。人は外見で判断しがちだ。だから、バイヤーがこの豪華な建物を見て、良い意味で勘違いすることもあるだろう。そうなら高い家賃も宣伝費のようなものだ。

 だが、ジェピーはいまだ中小企業で、得意先のすべては日本企業なのだ。しかも、顧客の工場は地方に点在している。東京のこの豪華なビルに本社を置く理由はない。

 (経営者の見栄で丸ビルにオフィスを構えているとしたら、決算数値も見栄を張っているかもしれないな)

 と、西郷は思った。

 西郷が受付に着くと、太い体を上下に揺らして斑目がやって来た。斑目は軽く挨拶を交わした後、西郷を経理部の会議室に案内した。

 テーブルには決算書と元帳と伝票が置かれていた。椅子に腰を下ろすと、斑目はこのビルからの眺めがいいとか、おいしいレストランがたくさんあるとか、およそ監査とは関係のない話を止めどもなく続けた。

 西郷は「私も半年前まで東京にいましたので、このビルには何度か来ました」と言って、一方的に雑談を打ち切り仕事を始めた。

 「では、12時少し前に戻ってきます。それからお食事でも」
 「お気遣いなく。適当に済ませますから」
 西郷はやんわりと斑目の誘いを断った。昼食をごちそうになったからといって、監査に影響するわけではない。久しぶりの東京だし、昼食くらい気楽に食べたいと思ったからだ。

 「あっ。それから、定款と取締役会議事録と稟議書をお見せいただけませんか」
 と、西郷は斑目に依頼した。
 「今日は書類を見せてもらい、質問は明日以降お願いします」
 「分かりました」といって、斑目は会議室から出ていった。

 西郷はエクセルに過去3期分の決算数値を入力して、数字の動きを丹念に追った。損益計算書では、確かに利益は出ている。ところがキャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローは赤字だ。つまり、商売した結果、現金が減ってしまったということなのだ。

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

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「第36話 「利益とキャッシュフローがねじれている」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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