「「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」」

第37話 「決算書という虚像に騙されるかもしれない」

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2008年4月16日(水)

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◎前号までのあらすじ

 達也は経理部員の細谷真理とともに、ジェピーで行われていた不正支払いや循環取引を間中専務に告発した。しかし関係者は罰せられず、達也は間中専務から転勤を命じられ、愛知工場の副工場長に就任した。

 工場では、本社の経理部長、斑目の手によって利益の水増しが行われていた。不正の仕組みを解くカギは、工場にある仕掛品の金額算出方法にあった。達也はその仕組みに気づいた。だが粉飾はまだ明るみになっていない。

 公認会計士の西郷による本社の監査が始まり、達也もそこに立ち会っていた。愛知工場での棚卸しの際、達也は西郷に挑発的な態度で接したため、西郷はそのことを根に持っているようだった。達也は本社での監査に立ち会う過程で、会社の定款に重要な条文があることに気づいた。

監査2日目

 翌日の午前、西郷は斑目を会議室に呼んだ。斑目は達也に一緒に来るように、声をかけた。

 「今期は厳しい決算だったようですね」
 と、西郷が切り出すと斑目は表情を変えずに切り返した。
 「そんなことはありません。すべて順調というわけではありません。しかし、社長と専務の経営手腕で、この不景気でも利益を出すことができました」
 「そうですか。では2、3気がついたことをお聞きします」
 「何なりと」

 「前期と比べて売掛金が10億円も増えていますが、どのような理由でしょうか?」
 「理由はいくつかありますが、なんと言っても期末にワールドワイド電機(WWE)に出荷したのが大きいですね」

 西郷は3月30日のカットオフ情報を思い浮かべた。あのことを言っているのだろう。注文書もあるし、間違いなく製品は出荷されていた。

 「ほかに理由はありませんか?」
 「特にないですね。まあ、監査も始まったばかりですから、ゆっくり調べてください」
 と、斑目は余裕を見せた。

 「次に、在庫ですが、これも2億円増えています。どうしてでしょうか」
 「うちの売り上げは年120億円ですよ。2億円なんて誤差みたいなものです」
 「私たちは、その誤差が気になるのです」
 と、西郷が反論した。

 「よく分かりませんね。これもゆっくり調べてください」
 斑目は、たばこを取り出して火をつけた。
 「当社は材料も製品もゼロなんですね」
 と、達也が聞いた。
 「本当は仕掛品もゼロにしたいと思っているんですが、そればかりは難しいですな」
 斑目は、大まじめで答えた。

 (粉飾の道具である仕掛品在庫をゼロにしたいだと…)
 達也は腹立たしさを覚えた。
 だが反面、西郷が粉飾をどのようにして見破るのか注意深く見守った。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」

「経営に役立たない会計は意味がない」──。カリスマ経営コンサルタント、宇佐見秀夫の教えを胸に、熱血経理マン、団達也が中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。ジェピーの経営は、無力な経営者や不透明な会計システムのせいで、問題が山積み。団は経理部員の細谷真理とともに、会計スキルを駆使してジェピーを立て直していく。物語を読み進めながら、会計、財務の実践的な知識やスキルを身につけられる、いまだかつてない経理ドラマ小説。

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