◎前号までのあらすじ
達也は経理部員の細谷真理とともに、ジェピーで行われていた不正支払いや循環取引を間中専務に告発した。しかし関係者は罰せられず、達也は間中専務から転勤を命じられ、愛知工場の副工場長に就任した。
工場では、本社の経理部長、斑目の手によって利益の水増しが行われていた。不正の仕組みを解くカギは、工場にある仕掛品の金額算出方法にあった。達也はその仕組みに気づいた。だが粉飾はまだ明るみになっていない。
公認会計士の西郷による本社の監査が始まり、達也もそこに立ち会っていた。愛知工場での棚卸しの際、達也は西郷に挑発的な態度で接したため、西郷はそのことを根に持っているようだった。達也は本社での監査に立ち会う過程で、会社の定款に重要な条文があることに気づいた。
監査2日目
翌日の午前、西郷は斑目を会議室に呼んだ。斑目は達也に一緒に来るように、声をかけた。
「今期は厳しい決算だったようですね」
と、西郷が切り出すと斑目は表情を変えずに切り返した。
「そんなことはありません。すべて順調というわけではありません。しかし、社長と専務の経営手腕で、この不景気でも利益を出すことができました」
「そうですか。では2、3気がついたことをお聞きします」
「何なりと」
「前期と比べて売掛金が10億円も増えていますが、どのような理由でしょうか?」
「理由はいくつかありますが、なんと言っても期末にワールドワイド電機(WWE)に出荷したのが大きいですね」
西郷は3月30日のカットオフ情報を思い浮かべた。あのことを言っているのだろう。注文書もあるし、間違いなく製品は出荷されていた。
「ほかに理由はありませんか?」
「特にないですね。まあ、監査も始まったばかりですから、ゆっくり調べてください」
と、斑目は余裕を見せた。
「次に、在庫ですが、これも2億円増えています。どうしてでしょうか」
「うちの売り上げは年120億円ですよ。2億円なんて誤差みたいなものです」
「私たちは、その誤差が気になるのです」
と、西郷が反論した。
「よく分かりませんね。これもゆっくり調べてください」
斑目は、たばこを取り出して火をつけた。
「当社は材料も製品もゼロなんですね」
と、達也が聞いた。
「本当は仕掛品もゼロにしたいと思っているんですが、そればかりは難しいですな」
斑目は、大まじめで答えた。
(粉飾の道具である仕掛品在庫をゼロにしたいだと…)
達也は腹立たしさを覚えた。
だが反面、西郷が粉飾をどのようにして見破るのか注意深く見守った。
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