「「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」」

第38話 「団さん。売掛金について聞きたいのですが」

バックナンバー

2008年4月23日(水)

1/2ページ

印刷ページ

◎前号までのあらすじ

 ジェピーの愛知工場では、本社の経理部長、斑目の手によって利益の水増しが行われていた。不正の仕組みを解くカギは、工場にある仕掛品の金額算出方法にあった。達也はその仕組みに気づいた。

 本社では公認会計士の西郷による監査が始まり、達也も立ち会っていた。愛知工場での棚卸しの際、達也は西郷に挑発的な態度で接したため、西郷はそのことを根に持っているようだった。

 西郷は斑目に、売掛金と在庫の金額が増えた理由を問い、営業キャッシュフローが赤字であることを確認した。達也は「こんな生やさしい監査では何も見つからない」と西郷に詰め寄った。

監査5日目

 翌日、そしてその翌日も西郷は黙々と監査を続けた。達也も終日監査に立ち会っていた。

 「何を聞かれても勝手に答えるな。すべて俺が答える。おまえの仕事は会計監査の邪魔をすることだ」
 斑目はきつく達也に伝えた。

 2人はほとんど会話することなく時間が経った。西郷の仕事ぶりを見ながら、達也は以前宇佐見がこんなことを言っていたのを思い出した。

 「監査は英語ではオーディットという。同じような単語を並べてみよう。オーディオ、オーディアンス…。分かるね。監査とは聞くことなんだ」

 ところが、目の前の会計士はなぜか、一言もしゃべらず、何も問いかけないのだ。

 (何を考えているのだろうか…)

 達也は会議室に漂う異様な空気を感じた。

 (そういえば、宇佐見のオヤジはこんなことも言ってたな)

 「監査という仕事には時間の制約がある。だから、すべての不正を見つけることはできない。だからといって、決定的に重大な不正が見つけられないような監査人は落第だ」

 会計監査はせいぜい2〜3週間で、1年間に作成された膨大な資料をチェックして、そこから問題点を見つけ出す仕事だ。見落としはある。会社側が「目くらまし」を仕込んでおくこともある。

 しかし、ほとんどの「目くらまし」は、監査意見に影響するほど重要なものはない。見つかって欲しくない不正は、慎重に、見えにくいところに隠されている。

 隠された不正を見つけられる。公認会計士の能力はこの一点で決まる。少なくとも、宇佐見はそう考えていた。

 循環取引、支払代金の横領、在庫を使った利益操作。西郷は、これらの不正を見つけられるのか。

 達也はわくわくしてきた。

 「団さん。売掛金について聞きたいのですが」

 西郷が突然口を開いた。

 「前期と比べてワールドワイド電機(WWE)への残高が大幅に増加していますが、理由を教えていただけませんか」
 西郷は、機械的に質問した。

 「そうでしたか。後で調べます」
 と、達也はとぼけた顔をして答えた。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」

「経営に役立たない会計は意味がない」──。カリスマ経営コンサルタント、宇佐見秀夫の教えを胸に、熱血経理マン、団達也が中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。ジェピーの経営は、無力な経営者や不透明な会計システムのせいで、問題が山積み。団は経理部員の細谷真理とともに、会計スキルを駆使してジェピーを立て直していく。物語を読み進めながら、会計、財務の実践的な知識やスキルを身につけられる、いまだかつてない経理ドラマ小説。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン