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第39話 「私の仮説が正しければ、これは循環取引です」

2008年4月30日(水)

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◎前号までのあらすじ

 ジェピーの愛知工場では、本社の経理部長、斑目の手によって利益の水増しが行われていた。不正の仕組みを解くカギは、工場にある仕掛品の金額算出方法にあった。達也はその仕組みに気づいていた。

 本社では公認会計士の西郷による監査が始まり、達也も立ち会っていた。愛知工場での棚卸しの際、達也は西郷に意図的に挑発的な態度で接していた。達也は不正の仕組みを明るみに出すためには、西郷の力を借りるしかないと考えていたからだ。

 西郷による監査は続いていた。黙々と資料を調べ続けていた西郷は、突然口を開き、達也に質問をぶつけてきた。

 「北海道工業から確認状は戻ってきたのですが…」

 といって、西郷は確認状を達也に見せた。

 「この通り、確かに社判は押されています。ただ、コメントは何も書かれていません。おそらく、先方は何もチェックしないで返送したのでしょう。それはそうとして、よく分からないことがあるんです」

 と言って、西郷は達也に売掛金の補助簿を見せた。

 「売上高と回収金額です。売り上げは3カ月に1回、周期的に計上されていて、しかも売上金額はいつもほぼ同額です。

 だからといって、これだけでおかしい、と言っているのではありません。腑に落ちないのは、その回収金額です。

 通常、売掛金は1円の違いもなく正確に振り込まれます。ところが、北海道工業から振り込まれる金額は、請求した金額ではなく、百万円未満を切り捨てた『ラウンド』の金額になっています。ですから、この差額が未回収売掛金としてどんどん膨らんでいます。なぜでしょうか?」

 売掛金にせよ買掛金にせよ、ラウンド金額で決済される場合は要注意だと、以前、達也はMBAの授業で勉強したことがある。その裏には無視できない事情があることが多いからだ。

 西郷は、おだやかな語り口ではあったが、そこを突いてきたのだ。

 鋭い質問に達也はドキリとした。でも、事実を言うつもりはなかった。

 「そうですか。ちょっと帳簿を見せていただけませんか」

 といって、達也は売掛金の動きを眺めた。

 「なるほど。確かにそうですね。もしかして、北海道工業は資金繰りに問題があるのかもしれませんね。でも、売上代金の8割は回収されてますしね…」

 達也は無責任な答えを返した。

 「確かに。しかし、代金がラウンド金額で回収されているということは、請求書の明細単位での消し込みはできていない、ということですよね」

 間髪を入れずに、西郷が聞き返した。

 請求書には1カ月間に売り上げられた製品の品名、出荷日、数量、金額の明細が書かれている。どの製品の販売代金が未回収なのか正確につかんでいないのではないか、と西郷は言うのだ。これは以前、真理が指摘したのと同じ質問だった。

 (まだ本当のことは言えない…)

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

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「第39話 「私の仮説が正しければ、これは循環取引です」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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