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第10回:買収価格の算定(2)
まずは「お化粧」を落としてもらおう

見直す度に、お互いを深く知ることができる

  • 西村 裕二

バックナンバー

2008年5月1日(木)

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 2008年4月、アクセンチュア株式会社として自ら初となるM&A案件がようやく契約を終えた。我々のグループに入っていただくことになった株式会社ソピアは、オラクル(世界トップシェアの企業向けデータベースソフト)を主軸としたIT コンサルティング企業であり、当社のオラクルビジネスの拡大にピッタリあった企業である。

 ソピアは我々の選定基準のほとんどをクリアし(こんな企業はめったにない!)、二度と出会えないような「理想の相手」だった。しかし、それでも社内プロセスや契約等ではプロジェクトメンバーはとても苦労した。

 私自身は途中で統合後参画予定の先輩に早々とバトンタッチしたが、先方も含めプロジェクトメンバーはこの数カ月、あまり睡眠時間をとれないほどのハードワークとなった。しかし、だからこそ、契約日の充実感は素晴らしかった。今後、統合が始まり、本当の苦労はこれからが始まるが、ひとまずほっとしたというところだ。

 話を本題に戻すと、前回では企業価値は少しの変数の変化で大きく変動する、まるで「壊れもの」のようであること、これらの変数の決定には「専門家」に任せず、経営者がリーダーシップをもって参画すべきであるというお話をした。今回は企業価値算出の精度を上げるために、事業計画(=キャッシュ成長率)をどう見直すのかを説明したい。

事業計画は買収先の経営者と共同で作る

 事業計画の見直しは買い手と売り手が行う最初の共同作業である。当然、まだ契約をしていないわけであるから、買収先の企業が買い手企業に提出できる情報は限られている。そのため、この機会に事業計画を基に深いディスカッションをすることは有益だ。ディスカッションを通じて、企業の価値観や経営者の人格・考え方等が理解できるからだ。

 今回のソピア社との案件でも、社長を初めとした経営幹部の方と我々のメンバーが事業計画についてかなり突っ込んで議論を尽くした。

 しかし、買収が決まる前にそこまで深いディスカッションができるのか? と疑問に思われる方が多いかもしれない。私に言わせれば、それはまったく逆だ。ディスカッションに前向きでない経営者では、これから共同で事業運営をやっていくパートナーにはふさわしくない。むしろ、買収を再考すべきである。

 

計画は現実とは乖離しているのがあたりまえ

 M&Aの際には、買収先の事業計画の「お化粧」には気をつけろとよく言われる。

 「お化粧」とは会社を高く売るために、事業計画をよく見せるわけだ。そのような悪意がある場合は論外だが、悪気がなくとも、正当な理由で事業計画が現実から乖離している場合が多い。「事業計画」と一口でいっても、経営者の事業計画に対する考え方の違いや企業文化の違いにより、事業計画に持たせる意味合いが異なるからだ。事業計画には次のような3つのタイプがある。

  1. 自らのストレッチのために、高めの数字を設定した「強気の」事業計画
  2. 最も確からしい「現実的な」事業計画
  3. 絶対遵守できる数字を設定した「慎重な」事業計画

 例えば、ある日本企業の例では3つの事業計画が混在している。営業部門は営業マンにハッパをかけるために、「強気の」数字をベースに行動し、需給調整や製造部門では「現実的な」数字で行動し、投資家や上司への報告は「慎重な」数字を報告する。特に、業績管理に厳しい企業では、上司に対して抑え目の数字を報告する傾向が強い。お心当たりがそれぞれおありではないだろうか。どのタイプも経営管理上は「誤り」「悪い」とはいえないが、企業価値算定の際には、いかに「現実的な」事業計画を見極めるかがポイントになる。

基本は、どんどん質問すること

 M&Aの場合は価値算出のために許された時間は短く、スピーディーに実施しなくてはならない。効率的に価値算出を行うためには、ゼロベースで事業計画を作るのではなく、買収先の経営者の立案した事業計画をベースに考え、適切な切り口で論点を定義し、どんどん質問して精度を高めていく方法が現実的だ。

 何を質問すればいいのか?

 簡単だ。過去の実績、市場や競合他社と比較した場合の事業計画の「異常値」を見極め、「なぜ?」を繰り返して深掘りしていくのだ。

 そのために最初にやるべきなのは、経営者の事業計画に対する考え方、つまり強気で立てているか慎重に立てているかを見極めることだ。これは、今までの事業計画に対して計画値と実績値を比較する、つまり今までの事業計画が実績を下回ってきたか、上回ってきたかを調べればよい。

 ただし、企業の業績により強気か慎重かが変わることがあるので注意が必要である。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官