• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

第41話 「材料は独身者、仕掛品は既婚者なんですよ」

2008年5月14日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

◎前号までのあらすじ

 本社では公認会計士の西郷による監査が始まっていた。監査は最終日を迎えていた。

 西郷は、愛知パーツ、ジェピー、北海道工業の3社間で行われていた取引を「循環取引」だと達也にはっきりと言った。さらに、ジェピーの愛知工場で行われていた加工費の計算方法の問題点について、達也に核心に迫るような質問を浴びせかけた。

 西郷は、加工費を作業の進捗状況を基準にして計算するのではなく、仕掛品の材料費を基準に計算する方法の本質的な問題点を見抜き、「これを認めてしまえば、簡単に決算を粉飾できる」と断言した。

 達也は西郷が斑目のたくらみを見破りつつあることを内心では喜んでいたが、何食わぬ顔で西郷を挑発し続けていた。

 「誤解を招いたとしたら誤ります。先ほど言ったように私は経理課長としてではなく、団達也個人として、材料と仕掛品の区分も含めて、あなたの仮説を知りたいのです」

 「分かりました」と言って、西郷は説明を始めた。

 「説明するまでもなく、ジェピーの棚卸し実施マニュアルには<決算棚卸に際して未使用の部品は材料倉庫に戻す>と書かれています。

 つまり、在庫をこの通りに整理すれば、製造工程にある在庫はすべて仕掛品ということです。何の変哲もない普通の規定なのですが、しかし、よく考えると実に曖昧な規定です」

 西郷は手元のノートを開いて材料倉庫、製造工程、製品在庫と大きく書いて、それぞれを丸で囲んだ。

 「最初私は、部品が材料倉庫にあるか、あるいは製造工程にあるかで、材料と仕掛品に分ける方法は分かりやすいし、何ら間違いではないように思っていました。これが盲点でした。

 先に言ったように、それを認めると利益操作が簡単にできてしまうからです。つまり、この方法は間違っているんです。

 じゃあ、正しい方法は何なのか。どのような基準で材料と仕掛品を区分すべきか、実は当社の監査期間中ずっと考えていました」

 西郷は湯飲みを手に取って、冷めた日本茶を一口飲んだ。

 「それで、結論は出たのですか?」
 達也は、はやる気持ちを抑えるのがやっとだった。

 「普通、私たち会計屋は、材料と仕掛品をどのように区分すべきか、ということは考えたりはしません。最初から区分されている材料と仕掛品を、どのように評価するかを考える。だから、この規定は会計の専門家の盲点を突いているんです。

 このため、材料と仕掛品の正しい区別の仕方は何なのか、そして問題の本質がどこにあるのか、それがなかなか分からなかった。でも、はっきり分かりました」

 と言うと、西郷はそれまで見せたことのない笑みを浮かべた。

 「一言でいえば、“結婚”したかどうか、です」
 「えっ。何ですか…?」

 あまりに唐突な答えに達也は驚いた。西郷は理由を面白そうに話し始めた。

 「材料は独身者、仕掛品は既婚者なんですよ」

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

一覧

「第41話 「材料は独身者、仕掛品は既婚者なんですよ」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

現在の携帯電話は、昔の電話と比べて100倍豊かでしょう。クルマもきっとそうなります。

ジェンスン・フアン エヌビディア創設者兼CEO(最高経営責任者)