• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

その設備投資は、本当に大丈夫ですか

経営者の意識が数値化される資産除去債務

  • 松尾 絹代

バックナンバー

2008年5月28日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 企業にとって、将来の競争力を左右する経営戦略の1つである設備投資。その方針を策定する際に検討すべき項目が、新たに増える。除去費用だ。

 これまで設備投資の検討項目は、会計的には、必要な資金の調達額や維持更新費用、減価償却費の規模が中心になってきた。今後は、土壌改良費用など設備を除去した時にかかる可能性のある費用についても、注視が必要になる。会計基準の変更で2011年3月期から、今まで簿外債務となっていた資産除去債務を、財務諸表に計上しなくてはならなくなるからだ。

 我が国の会計基準では、これまで設備の除去費用は、実際に除去をした時に計上することが一般的だった。実際、既存の財務諸表でも、設備除去費用は計上されている。2007年度の有価証券報告書を見ると、事業再編に伴う資産処分損、拠点統廃合費用など、が計上され、中には10億円を超える事例も数件あった。

 だが2011年3月期から、要件を満たす除去費用は、将来の支出がほぼ確実となった段階から計上しなければならない。たとえ設備を除去するのが何十年先でもだ。このように我が国の会計基準が変更されたのは、国際会計基準とのコンバージェンス(共通化)の一環だ。新基準に移行する時、過年度に計上すべきであった除去費用は全額特別損失に計上する。

 新会計基準の移行で、経営者にとって、環境に無関心な設備投資の結果が、多額の資産除去債務という形で数値化されることになる。これまでは除去コストに無関心な設備投資を行っても、自分が経営陣にとどまっている間に費用計上がなければ、直接その責任は問われなかったが、今後はそうはいかなくなる。新基準は、環境に対する経営者の意識を問うものと言える。

有形固定資産の取得、使用で生ずる債務

 資産除去債務とは有形固定資産を取得したり、使用することによって生じる債務だ。法令や契約で支出が義務づけられる除去費用が対象だ。法律上や契約上の義務と同等と言える過去の判例なども対象だ。除去とは、設備を利用除外にすることを言う。手段は売却、廃棄、リサイクルなど様々だ。

 ただし、転用や用途変更のように形を変えて利用する場合は含まないし、遊休のように明確な利用除外と言えない場合も含まない。また有形固定資産には、貸借対照表上の有形固定資産だけでなく、リース資産や投資不動産も含む。とても幅が広いのだ。

 法令で義務づけられる除去費用の例は、土壌汚染対策法上の浄化費用や大気汚染防止法上のアスベスト対策費用などだ。契約で義務づけられる除去費用の例は、不動産賃貸借契約で定められる原状回復費用や借地権契約で定められる上物の除去費用だ。

 今後、環境対策のための新しい法律が公布され、新たな環境費用が義務づけられればそれも該当する。なお、新基準の除去費用には、すべての除去費用が該当するわけではないので注意したい。法律や契約で義務づけられるもの、またはそれに準じるものが新基準の対象なので、自分の意思のみで支出するような除去費用は対象ではない。

発生時点で計上

 設備の取得時や使用中に資産除去債務が発生すれば、その時に計上しなくてはならない。例えば、工場の土壌汚染が発生した時点、建物にアスベストが使用されていることが判明した時点、原状回復義務を定めた不動産賃貸借契約を締結した時点が債務の発生時だ。

 資産除去債務は、除去のための見積もりキャッシュアウトフロー(現金支出)を現在価値に割引いて計算される。例えば5年後に1000の除去費用が見積もられたとする。これを割引率3%で割引計算すれば現在価値は863となる(1000を1.03の5乗で除した数)。この863は資産除去債務という負債に計上するだけでなく、資産残高にも加算する。

 資産に加算された863は減価償却計算の対象だ。資産と一緒に耐用年数で規則的に償却する。また、資産除去債務を割引計算しているため、時の経過に伴って債務額を調整しなければいけない。債務に割引率(この場合3%)をかけて期間費用(この場合863×3%)を計算し、費用計上して負債に加算する。除去費用は設備の使用期間を通じて費用計上されるのだ。

 なお、賃貸ビルなどの場合、除去費用に敷金を充当することが一般的だ。この場合は、資産除去債務という負債は計上しない。代わりに、返還されない敷金を除去までの期間で規則的に償却する。除去費用が設備の使用期間を通じて費用計上されるのは同じだ。

コメント0

「知らずには済まない、会計の盲点」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官