「「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」」

第44話 「俺たちの着服が見つかってもどうってことはない」

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2008年6月4日(水)

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◎前号までのあらすじ

 公認会計士の西郷による監査が終了した。

 西郷は、ジェピーが関わっている不正な取引や利益の水増しを次々と達也に向かって指摘しただけでなく、達也が知らなかった経理部の沢口萌が会社の現金を着服していたことまで暴いた。

 達也は斑目に萌の着服の事実を突きつけたが、斑目は動じない。しかも、西郷は監査の結果が不適正意見になるとは限らないと言う。

 達也は不安に襲われていた。

 西郷が帰ると、達也は缶コーヒーを買いに自動販売機の置いてある給湯室へ向かった。

 「課長」
 うしろから真理の声がした。
 「今晩、お時間ありますか?」
 真理のただならぬ表情を見て、何か伝えたいことがあるに違いない、と達也は直感した。
 「わかった。じゃあ7時に根津で…」

 達也は缶コーヒーを取り出すと、何事もなかったように部屋を出た。

寿司屋

 「いらっしゃい。真理ちゃん、お待ちかねの団さんだよ」

 達也を見て、寿司屋のオヤジは真理をからかった。

 「まずビールを1杯」
 と言って、達也はカウンターの真理の隣の席に腰を下ろした。

 真理は達也のコップにビールを注いだ。  
 「監査、大変だったわね」  
 「斑目のやつ、何を考えているのかさっぱり分からん」
 「どういうこと…」
 「これで適正意見ですねって、喜んでいるんだ」
 「で、会計士は?」
 「1週間ですべての不正を見破った。すごい会計士だよ。でも、何か釈然としないんだ…」
 達也はビールを口の中に流し込んだ。
 「どういうこと?」

 真理は達也がなぜ憮然とした表情でいるのかが分からなかった。

 「西郷は、監査意見について何も言わないんだ」
 「それはそうよ。まだ監査が終わったわけではないし、監査報告書のサインは今川先生でしょ」
 真理の言うとおりだ。

 「適正意見なんてあり得ないよ」
 分かっていても、達也は不愉快でたまらない、といった表情で立て続けにビールを飲み干した。

 そんな達也に向かって、真理はニコリと微笑んでこう言った。

 「今日はね、おもしろい情報を2つ持ってきたの」
 それは達也がそれまで見たことのない、いたずらっぽい笑顔だった。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」

「経営に役立たない会計は意味がない」──。カリスマ経営コンサルタント、宇佐見秀夫の教えを胸に、熱血経理マン、団達也が中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。ジェピーの経営は、無力な経営者や不透明な会計システムのせいで、問題が山積み。団は経理部員の細谷真理とともに、会計スキルを駆使してジェピーを立て直していく。物語を読み進めながら、会計、財務の実践的な知識やスキルを身につけられる、いまだかつてない経理ドラマ小説。

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