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第46話 「不正のすべてが目くらましの可能性があるのです」

2008年6月18日(水)

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◎前号までのあらすじ

 ジェピーが行っていた数々の不正の背後には、沢口萌と間中隆三のたくらみがあった。玉川梱包への支払いを着服したとして解雇されていた井上部長は、この2人に利用されただけで、依然として子会社に勤務し、毎月手数料として10万円を受け取っていた。

 公認会計士の西郷はジェピーの監査を終え、上司の今川に監査結果を報告した。ジェピーの不正は悪質であり不適正意見にすべきだと言う西郷に対し、今川は「下手をしたら(ジェピーは)倒産するかもしれない」とその意見を退けた。

 西郷は、達也が監査報告の提出を遅らせてほしいという内容の電話をかけてきたのを思い出した。西郷は何かあるに違いないと思いを巡らせていた。その頃、達也と真理は不正の手口に気づいていたのだった。

ふみの病室

 「早百合さん?」

 ふみはベッドに横たわったまま、力のない声で娘に声を掛けた。早百合が伊豆高原で宇佐見に会った翌日、ふみは病室で倒れたのだ。ふみは集中治療室に運ばれ、昨日、1週間ぶりに一般病棟に移されたのだった。

 「お母さん、目が覚めたのね」
 早百合はふみの手を握りしめて言った。

 「ゆっくり眠れたせいか、とてもいい気持ち」
 ふみは笑顔を見せた。しかし、その表情はすぐに曇った。

 「もう私も長くはないわね…」
 ふみの目から涙がこぼれ落ちた。
 
 「でも、いま死ぬわけにはいかない」
 「お兄さんのことね」
 「益夫さえしっかりしていればね…」
 ふみは深いため息をついた。

 早百合はふみの言葉を遮った。
 「違うわ。すべて隆三さんのせいよ。あの人が会社に入ってからすべてがおかしくなった…」

 早百合は間中隆三を嫌っていた。そして、すべての権限を持つはずの社長がどうして隆三にないがしろにされていることに反発しないのか、不思議でならなかった。

 「宇佐見さん、お元気だった?」
 ふみは目を閉じたまま伊豆での様子を聞いた。

 「まだ右手で湯飲みがつかめないの。それに呂律も少し回らなくなっていたわ」
 「そう…」
 ふみは閉じていた目を開いて天井を見つめた。

 「でも、さすがに頭はしっかりしていた」
 小百合がそう言うと、ふみは笑みを浮かべて、楽しかった思い出を話した。

 「昔はね。宇佐見さんに質問すると、すぐにこうしなさいって指示してくれたのよ。お父さんは、先生の言う通りに実行したわ。すると、すべてがうまくいってね…」

 ふみの話を聞きながら、早百合はジェピーをどうすればいいのか、考えていた。益夫は間中に懐柔されている。ふみが頼りにしている宇佐見は、もはやジェピーに影響力はない。

 だが、病弱といえども会社のオーナーは母親のふみだ。議決権株式の過半数を持っているから、間中を辞めさせることもできる。株式は兄の益夫が相続することになるのだから、ジェピーが人手に渡ることはあり得ない。何も心配することはない。

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「第46話 「不正のすべてが目くらましの可能性があるのです」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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