「誰でもメディア宣言」

Vol.16 「ゴミ情報」を、宝の山にリサイクル!

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2008年6月26日(木)

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 前回、情報は大別すれば、「フロー」と「ストック」のいずれかだと述べました。しかし、現在は両者のいずれか、もしくはその中間に分類されるもので、これまでにはなかったタイプの情報が出現してきていることについて語ってみたいと思います。

 私はそれを「エコー(こだま)」と呼んでいます。

 エコーはコピーと換言してもいいかもしれません。それは、ある初出の情報を丸々コピーしたり、ソフト的に引っ張ってきて、それらを羅列するだけのものです。これまで考えられていたコンテンツ・ビジネスは、フローもストックも、オリジネートしなければ価値が生み出せないと考えられていました。しかし、エコーはカーボンコピーの寄木細工のようなものです。これまでエコーはノイズと同義でしたが、換金価値が生まれたのはウェブならではといえます。

自らは何も創り出さなくても、収益は上げられる

 エコーはフローとストックのいずれかに属しますが、フローが高いストックとして、その中間に位置することがあります。

 アダルトサイトや射幸心を煽るネットワークビジネス系サイトは、エコーだけで構成されているものが少なくありません。また、SPAMの温床となるアフィリエイト目当ての情報サイトなども然り。他方、ブログに目を向けると、あちこちからコピペしてきた情報だけで構成されるものがありますが、それらもエコーとして数えられるでしょう。

 無論、エコーにもクリエイティビティがないわけではありませんが、その多くは着眼点や、フレームワークのほうに比重が偏り、肝心のコンテンツは空っぽというものが少なくありません。そのため、“張り子のメディア”という様相を呈することもあります。

 ところが、このエコーですが、コンテンツ面で語るべき価値がなくとも、ある種のビジネスモデルを確立することになります。

 たとえばアダルトサイトですが、他者のコンテンツを集積することだけで成立しているサイトは少なくありません。自分はコンテンツを何ひとつ用意しないのですが、集積したエコーでお客を引きつけ、そのPV数をアフィリエイトなどで換金化していくものが存在します。

 また、そのような“張り子のメディア”は、ハウトゥー系や保険、ローンなどの金融商品・サービス比較系にも散見されます。

 たとえば、それらは目新しいコンセプトが登場したときなどに有効です。新しい金融商品やビジネスモデルは、定着するまで誰もがそれに対して不案内なわけですから、必ず検索をします。そこで、早めにそれらしいタイトルのサイトを立ち上げておくと(「徹底比較!○○研究室」みたいな)、当該サービスを提供する企業よりも、上位、もしくはそれに準じるポジションを検索エンジンの検索結果で占めることも可能でしょう(相応のSEOスキルが前提です)。そして、そのようなエコーが導線となって、正真正銘の当該サービス提供企業へのアフィリエイトで換金化をはかることができます。

 もちろん、きちんと運営者自身が概況を述べ、解説し、独自の視点で類似サービスを比較しているサイトも存在しますが、それら解説サイトにリンクを貼るだけのもの、また同じコンテンツ・ソースを見せ方だけ変えて、異名ブランドで立ち上げたエコーなども存在します。

張り子の虎でも、客は来る。中身があればなおのこと

 エコーのなかには、完全に違法なものも散見されます。最近、私が発見した違法なものは、引用の範疇を超えていました。世界中から地球環境に関する情報だけを集めたブログです。

 それは、すべての記事や写真を通信社・他サイトの記事からコピペして構築しているのですが、おそらく原典さえ明示しておけば、“公正な引用(フェア・ユース)”の範疇だと誤解しているのかもしれません。しかし、違法であるにもかかわらず、その手のサイトがほかにないため、一部の者には“便利”なニュースソースであると推測されます。

 エコーの換金化手段は、たいがいアフィリエイトか広告、または本業(!)への誘導です。SEO系の企業が運営している場合もあります。エコー同士が相互リンクしあうことで、SEO効果を狙うこともできます。まともなコンテンツ制作者にとってみれば、これらエコー群は唾棄すべき“張り子のメディア”ですが、インターネットは「訪問されてナンボ」ですので、そのフットワークの軽さと着眼点、貪欲さについては、メディア事業家も見習う点が少なからずあるでしょう。ただし、中身まで張り子のままでは、中長期において価値を下落させ、損失のほうが大きいように思われます。

 そこで、過去ストックが豊富なコンテンツ・パブリッシャーなら、過去アーカイブのエコーを活用することが考えられます。盗用され、むざむざと商機を逸するくらいならば、著作者自身が堂々とオリジナルのカーボンコピーを行なえばいいのです。

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著者プロフィール

小林弘人(こばやし・ひろと)

小林弘人

1994年インターネット黎明期に米で勃興するインターネット文化を伝える雑誌「ワイアード」を創刊。1998年、株式会社インフォバーンを設立。同年、月刊誌「サイゾー」を創刊。「ポッドキャストナビ」「カタロガー」などのウェブサイトを立ち上げる。ブログ黎明期から著名人ブログのプロデュースに携わり、木村剛、眞鍋かをりなど、人気ブログを書籍化し、ブログ出版の先鞭をつけた。また、アップルの iTunesMusicStoreJapanでオーディオブックを販売。稲川淳二のiPod怪談がベストセラーに。 2005年、内閣府と経済産業省によるコンテンツ政策委員会に参加。出版事業の価値向上のために「出版バリューマネジメント研究会」を株式会社インスパイアと共に発足。2007年、全米で著名なブログメディア「ギズモード」の日本版を立ち上げる。メディア・プロデュース/経営の傍ら、大学、新聞社、NPO 等の招聘で講演などを精力的にこなす。現在、共同通信が新聞社に配信する「本の街角」にて、毎月デジタル・コンテンツに関するコラムを連載中。



このコラムについて

誰でもメディア宣言

ウェブの登場で、紙メディアはどう変わるのか。いや、そもそも「ウェブ」と「出版」を、分けて考えるのが間違いではないのか? 日本版「ワイアード」や「サイゾー」を作った小林弘人氏が、よりにもよって出版社のサイトに腰を据え「新しいメディア人、出でよ」という観点で語る「出版進化論」。

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