(前回から読む)
ブログを始めとするウェブ上の情報発信は、他のメディアに比べて更新頻度こそ命であり、そこでは情報の「フロー」が優先されます。それは、決して「鮮度」を意味するわけではなく、前回にも述べたように、ウェブ上では「発信し続けること=存在すること」なので、フローは否が応でも高まっていく運命にあります。
しかし、一方でアーカイブされていく情報も、後において重要性を帯びてきます。それは検索エンジンによってその情報を欲する人々が時間軸を超えて存在するからです。これは情報の「ストック」となります。そして、ストックは、文脈(コンテクスト)を形成する情報として、時間経過とともに変質します。なかには、そうならないものもありますが、書籍のように独立した(スタンド・アローンな)外部メディアとして存在することができる情報がストックには含まれます。
電子メディアの性格がもたらすデフレスパイラル
「フローする」情報は、もともと紙メディアよりも電子メディアとの親和性が高く、情報の取得・加工、配信までの時差をどんどん短縮していきます。やがて、OOH(屋外広告)も電子化され、デジタルサイネージに切り替わることで、フローの高いメディアに生まれ変わるかもしれません。静的な看板よりも、電子的にコンテンツを入れ替えることで、時間帯を変えての表示が可能となり、高収益を見込めるからです。
ただし、電子コンテンツの難しい点は、フローが高まることで、価値の逓減も早くなるということです。これを、わたしは「電子メディアの収穫逓減」と呼んでいます。
フローが激化すると、総体的に価値のデフレーションに繋がりかねません。つまり、貴重だったものが、どんどん巷にあふれ、その逆に人々はメディアリッチな体験者になっていきます。メディアリッチになる一方で、それらの価値は低くなるというパラドックスをはらんでいます。
エロを想起すれば、わかるかな?
それは制作側に対しての高コスト化を招きますが、残念ながら、相応の対価を得ることは困難でしょう。フローが高いがゆえ、価値のデフレが起きているので、コンテンツ自体の価額はいまより上がらないためです。つまり、タダ同然で入手できるのにもかかわらず、それに対価を払おうとは思わない人は増える一方ですが、同時に、コンテンツへの期待値は高まるばかりなのです。
カネを払わないヒヒョーカばかりが増えるってこった。
おそらく、今後は動画など工数の多いメディア形式がネットや携帯でも主流を占めるだろうと思われていますが、つくる側がロボットでもなく、YouTubeやニコニコ動画のようなCGMでもない限り、制作するプロフェッショナルを潤わさないというシナリオが考えられます。
技術革新はコストを下げますが、フローを高めるあまり、人間を駆逐するという側面を秘めています。大昔なら労働者が自分たちを失業に追い込む機械を破壊したところですが、現代のラッダイト(機械破壊主義者)は、破壊してもキリがないほど無数のPCに囲まれて暮らしているため、共生の妥協点を探ることが肝要です。
技術革新は、業界全体を構造不況に陥れかねません。これを乗り切るためには「身軽である」ということが、「誰でもメディア」時代の必須条件になります。「身軽」ということは、固定費、設備投資が少なく、人を多く抱えない、ということです。
参入障壁が低いことが、価格低下を加速する
加えて、もうひとつ悪いお知らせがあります。
それは総体の収益が減少するのではないかということです。ウェブや携帯メディアは、紙媒体やテレビのように新規参入が困難な業界と違い、同一ジャンルにフローが高いメディアが続々と参入する可能性が高いため、総体的な利益が減少してしまう可能性が高いと思われます。
電子メディアは、情報以外に、メディアそのものの流動性(フロー)の高さが特徴として挙げられます。つまり、いつでも、どこでも、だれでも立ち上げられるがゆえです。それにより、あっという間に市場が飽和する可能性があります。「ゼロサム・ゲーム」【*】ならまだマシですが、新規参入者は広告費のダンピングや寝ないで働くという無茶をするので(笑)、場合によっては「マイナスサム・ゲーム」【*】のような事態が起こりえるかもしれません。
【*】マイナスサム・ゲーム : ゲームに参加している人の利益総和がマイナス。全員の利益が減少するため、全員が敗者になりえる。
旧来メディアのように代理店がメディア企業と結託して、利益を守ろうという団結や意志が強固ではないため、メディアと代理店側がそれぞれ暴走をしかねず、業界全体を不況に陥れる可能性がついてまわるのです。
加えて、日本のインターネットメディアの広告費の単価が米国に比べて安価なことを勘案すると、メディアが気軽に構築できる時代において、そのメディアが立脚するジャンルによっては、「誰も儲からない宣言」を発動しなくてはならない不安が常につきまとうのです。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。










