(前回から読む)
これまで述べた情報の分類を旧来の紙メディアに喩えてみましょう。それは、デバイスや形態、流通手法によって定義されてきました。紙メディアの場合、新聞や雑誌が「フロー」であり、書籍が「ストック」です。そして、前回に述べたエコーは単独で影響力をもつまでには至っていませんでした。
現在、情報は紙であろうが、ウェブであろうが、フローとストックが混在しながら存在します。フローの高い順から並べれば、それはウェブであり、低位に紙が位置します。ストックはその逆となり、いずれにせよ、扱うコンテンツの特性にあわせて、メディアの棲み分けは変わっていくことと思いますが、中途半端なものから淘汰されていくことでしょう。
中途半端なものというのは、紙なみに更新頻度が低く、紙と同じことしか書かれていないウェブメディアであったり、紙なのに更新頻度の高さだけがその価値であるものです。前者はウェブとしてフローがなく、存在意義が思い浮かびません。後者は物理的な制約からフローの限界値が低いため、それよりも情報フローの高い電子的メディアと競合します。
ただし、すべてのアーカイブがストックとして価値をもつわけではありません。経年変化により意味が出てくるものもあるでしょう。日記も、まとめて読み直すと、ストックとしての価値が多少なりともあるでしょう。
メディアビジネスの場合、長期において価値が下がらないコンテンツのアーカイブであれば、狙った作り込みがなくてもストックとして魅力的です。新製品情報よりも、専門性が高い用語などの解説記事はストックとしての価値が見込めることでしょう。その意味で、私は専門分野に特化した出版社や新聞社ほどブログやウェブメディアとの相性は良い、とかねてより主張してきました。
読者の読み方に合わせて、情報の売り方を変えていく
さて、となると紙がやるべきことは、ウェブ、紙のアウトプット時差を利用し、また、人間が一度に情報を処理する能力のキャパにあわせて、情報をスクリーニングしてあげることと、手間がかかることや紙という資源を使うことを逆手にとり、稀少性を際立たせたつくりをもたせるなど、旧来のような“情報コモデティ(日用品)”から“嗜好品”への転換を果たすことが必要になってくるのではないでしょうか。
ただし、それも短期的な話であり、いずれeインク【*】などの技術を利用した紙の薄さほどの電子ペーパーが普及すれば、そのような電子デバイスのなかで、フローとストックのコンテンツが混在することになるでしょう(もちろん、エコーも)。そうなると、紙がやるべきことは、さらに絞られてくると思います。
いずれ、「フローばかり見ていると、バカになるよ」とか言われるかもしれないね。
電子ペーパーが紙に取って換わる時代では、デバイスがコンテンツをフロー、ストックと定義するのではなく、属性情報やファイル形式、そして人々の認知がコンテンツを区分することになるでしょう。各ディレクトリーサービス等では、取得したメタデータ(発行者が本ファイルに付与した定義付けの情報)の内容や更新頻度、もしくは人為的な分類(限界があるので、メガ・ポータルには向いていません)やブランドについての人々の認識が情報をフローかストックなのか見分けることになると思います。
もちろん、“週刊なんとか”“日刊なんとか”“本(!)”とかタイトルにつけるのがてっとり早いのですが、ウォールストリートジャーナルの場合、興味深いことに2007年の1月に紙面を業界標準の12インチからさらに縮小し、ニュース記事を圧縮。逆にウェブのほうの情報量を増やし、紙よりもウェブをストックに近づけました。
つまり、電子媒体だからフローが高いというわけではなく、行動属性にあわせて、情報特性も変えていくように推移しているのではないか、ということを本件は示唆します。
この場合の行動属性による差別化とは、紙の新聞は通勤に携行し、カフェでコーヒーを飲みながら読んだりするものだから、そちらを“ブラウジング”させ、オフィスや自宅でPCを起動したときには、“じっくり”とウェブページを読ませるという情報設計の「つくり分け」にあるでしょう(もちろん、紙のコスト圧縮という側面ももちます)。
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