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第11回: 統合準備(上)
「この期に及んでも」ひっくり返すことを恐れるな!

統合の成否はDAY1までに決まる

  • 西村 裕二

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2008年6月19日(木)

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 今年4月、日本板硝子で大きな人事異動が行われるとの発表がなされた。6月にピルキントンのチェンバース氏が日本板硝子の新社長に就任し、同時にピルキントン出身の取締役の数がこれまでの10人中3人から8人中4人と半分を占めるようになるというものだった。

 日本板硝子が、2006年に6000億円余りでピルキントンを買収したことは記憶に新しいと思う。そのときは、「日本企業が約2倍の売上高の英国の名門企業を買収した」と大きく取り上げられたわけだが、今回の人事異動に関する日本のジャーナリズムの論調では「逆征服」と評されているようだ。

 この点に関し、私は、純粋に次の2点を示唆したい。

 1つめは、経営者は特にM&Aにおいて企業価値を向上することにフォーカスして意思決定を行うべきで、メンツに左右されてはいけないということだ。簡単に言えば、M&Aを行う経営者のモットーは「花より団子」であるべき。今回の人事は、日本板硝子現社長の藤本勝司氏(編注:6月27日に会長就任予定)が話されているように、企業価値向上のためのベストな選択なのだろう。

 2つめは、日本人が海外企業を統合しコントロールすることはとても難しいということだ。特に自社よりも大きな企業を買収する場合はなおさらである。ほぼ全てのM&A案件を成功させている日本電産の永守社長でさえも、国内で1年かかる統合は、クロスボーダーM&Aでは3~5年かかる。海外の企業・組織を日本人が変えていくには時間がかかる、とおっしゃっている。

「M&Aは3割しか成功しない」は本当か?

 「成功」したM&Aというのは3割弱しかないということを様々な調査が示している。また、近頃は、買収を発表すると買い手企業の株価が下がるというケースが増えている。これらは、M&Aは失敗する確率が高いと多くの人が考えている証拠だろう。

 確かに統計的に平均値で見れば、M&Aの失敗確率は高い。しかし、M&Aは経験を重ねることにより失敗する確率を減らすことは可能であろう。自分自身が経験を積み重ねるごとに実感するのは、いかに「統合準備」が大事か、ということだ。統合作業が始まる前に、どれくらいの準備ができるか、これこそが成功のための重要なポイントである。

 そこで、M&Aの重要なマイルストーンでもあるDAY1までの準備作業について整理しておきたい。

 M&Aではお互いが買収の方向で検討することに合意した「基本合意書」を締結し、その後、デューデリジェンスを行い、統合条件を最終化し、統合正式契約を結び、新会社として業務をスタートする。

 基本合意を締結する日を「DAY0」と呼び、新会社として業務をスタートする日を一般的に「DAY1」と呼ぶ。DAY0とDAY1の間に買収契約締結があるが、その前後で情報開示度合いが変わってくる。合併契約締結前には情報開示に制約があるが、契約締結後はかなりの範囲で情報開示が可能になるため、より深く突っ込んだ事前準備が可能になる。

統合の成否は業務開始日(DAY1)までに決まる

 DAY0からDAY1は半年から1年くらいが平均的なケースだ。その間には交渉・デューデリジェンス・詳細企業価値算定・契約締結等の買収契約に向けた「契約実行」とDAY1からの統合に向けた「統合準備」の2つが並行して実施される。

 M&Aにおいては、DAY1以降の統合後の作業が最も大変であり、一般的には全体の作業の8~9割を占めるといわれている。DAY1以降は、統合が本格化し、会社の基本的に全ての業務や組織を見直すことになるし、また専門的な知識を持つ会計士、法律家、人事専門家、経営コンサル等が入るため、確かに大変だ。

 しかし、DAY1までの「統合準備」は、統合に比べ作業量は少ないが、成否がほぼ決まるほど重要だ。

 「統合準備」として、DAY1までに次の5つのことがうまく行えれば統合がスムーズに行くといえよう。

  1. 「適切なパートナー」であるかの見極め
  2. 統合目的・シナジーの現実性のチェック
  3. 統合基本方針の作成
  4. マスタープランの作成
  5. 両社のコアメンバー同士が仲良くやっていく雰囲気作り

いまさら「適切なパートナーであるかの見極め」とは?

 統合準備は、DAY1以降の統合作業の責任者となる人を統合準備の責任者に選別することから始まる。だが、契約実行チームにはディールを実現させたいインセンティブがあるため、本当に正しい選択をしているかを客観的に見られない場合がある。このため、統合準備チームは、冷静に自分の目で買収企業を見て、自社の成功にとって適切なパートナーになり得るかを「統合のしやすさ」などの視点から再度見極める必要がある。

 というのも、DAY1までの間には「破談」というオプションがあり、まだ引き返せるからである。一般的に「破談」は「失敗」とみなされているが、うまくいかない相手を見極めてさっさと別れ、「損切り」することは、非常に有意義な選択だ。

 クライスラーとダイムラー・ベンツ、AOLとタイムワーナー等の事例を振り返った場合、「統合」を上手に行えば成功だ、といえるかどうか、お考えいただけば自明だろう。そもそも、相手方が「適切なパートナー」でなかったというケースもあるのだ。

 ただし、企業の業績により強気か慎重かが変わることがあるので注意が必要である。

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