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知識の活用よりも忠誠心
人的資源を無駄にする日本社会

「霞が関埋蔵金」問題を世に広めた
元財務官僚 高橋洋一・東洋大学教授に聞く

2008年7月27日(日)

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 海外経験のある職員も増えているのに、一向に変わらない日本の官僚組織。高橋教授はそれを、「組織への忠誠心を重視し、せっかくの知識を封殺する」日本の風土が原因だ、と指摘する。


 世界の政策会合の現場では、博士号がなければ通用せず、高橋教授もまた、努力して学位を取得した。天下国家のリーダーを志す若い世代には「まずは博士号を持て」と助言、まだ見ぬ次世代リーダーの出現に期待をかける。

(聞き手は日経ビジネス オンライン副編集長 真弓 重孝)


 ―― 民間企業でも、官僚の世界でも、例えば米国の大学院で学位を取ったり、外資系企業に勤めたり、海外経験のある日本人は増えているのに、社会の意識はあまり変わらないですね。

 高橋 日本の官僚が米国トップスクールの大学院に行っても、その経験を生かし切っていません。せっかく留学したって、帰国した後で役に立たせる機会が全くないのですから。

 ―― ノーベル賞経済学者のポール・サミュエルソン教授は、「日経ビジネスマネジメント」夏号で、日本では、英語が出来、海外で経験を積んだ人はかえって出世できないと苦言を言っていました

海外で得た経験を還元できない日本の風土

写真1

高橋洋一(たかはし・よういち)氏

1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科、経済学部経済学科卒業。80年大蔵省(現財務省)入省。財政金融研究所(現財務総合政策研究所)、プリンストン大学客員研究員、理財部長など経て、2003年8月に内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)に就任、郵政改革を担当する。その後、内閣参事官を経て退官、現在に至る。2007年にいわゆる「霞が関埋蔵金」を世間に広める役割を果たした。著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省!』(講談社)、『「お国の経済」』(文藝春秋)などがある

(写真:菅野 勝男)

 高橋 日本の官僚制度では、役所に忠誠を尽くすことが何よりも大切ですからね。海外に留学したら最後、逆に「お前は留学させてもらい、海外で役所に食わせてもらったんだぞ」と言われ、立場が弱くなってしまう。その状況で海外で学んだ最先端の知識や経験を応用しようとすると、硬直化した組織の論理と矛盾が出てしまい、せっかくの知的財産が活用されずに封殺されてしまうのです。

 私は1998年から3年間、米プリンストン大学国際問題研究所に客員研究員として留学しました。研究所が経済学部と同じ建物にあり、当時経済学部長だったベン・バーナンキ現FRB(米連邦準備理事会)議長ら、世界に名だたる経済学者の講義を聴講したり、著名な学識経験者などを招いて毎日のように開かれるハイレベルなセミナーに参加したりしながら大いに学びました。私はその時に得た知識や経験を日本社会に率直に還元しているつもりですけれど・・・。

 そうせざるを得ない事情もあります。例えば、日本銀行の人が海外で得た知見を基に発言なんてしたら、全部日銀批判になってしまいますからね。バーナンキ議長など、以前から日本銀行の政策は間違っていると世界で何度も公言していましたから、そうした発言を基にして自分の意見を日本で言えるわけがないのです。

 せっかく貴重な知識と経験を得たのだから勇気を出して何かやってみればいいと思いますけど、何か、仕方がないんですねえ、日本の組織では。海外の制度をそのまま真似できる場合は、まだ官僚でもどうにかなります。でも本来、真似ができなくなって自分の頭で物を考えなければいけないからこそ、世界トップクラスの最高学府で知的トレーニングを積んだ経験が役に立つんだけど、日本の風土では無理なのです。

 僕の見立てでは、一番の元凶は、出身省庁が最後まで面倒を見てくれる制度です。安倍晋三内閣の時に、こうした制度を最初に改革してください、と言ったのです。最後は出身官庁に戻るという人が、誰の言うことを聞くかと言えば、当然戻り先ですよ。だから私みたいに戻り先だった財務省の言うことを一切聞かないと、たとえ国益になっても、とんでもない変わり者にされます。

再就職あっせんは、天下り推進ではない

  ―― 高橋さんらが提唱した再就職あっせんは、天下り推進のイメージがあります。

 高橋 それはまったく違います。民主党のイメージ戦略がうまかったのとマスコミもこの案をつぶす側に回って激しく批判をしたからです。民主党は、人材バンクで天下りのあっせんできると言うけど、全然違いますよ。今も人材バンクがありますけれど、7年間で再就職した人はたった1人ですよ。実績が出せないのは当たり前です、おみやげが付いてないのだから。

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「知識の活用よりも忠誠心
人的資源を無駄にする日本社会」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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