「NEXT BIG THING キャピタリストが見る新潮流」

サヨナラ!「ちまちま省エネ」時代〜新トレンドはコストダウンにも温暖化対策にも効く

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2008年8月21日(木)

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 NEXT BIG THING! ベンチャーキャピタリストはIT(情報技術)、バイオの“次に来る巨大潮流”を追い求めている。本稿ではNEXT BIG THING「クリーンテック分野」の投資で先行する海外(主に米国)事例を拙訳書『クリーンテック革命』(ファーストプレス)に触れながら紹介する。さらに、この分野はわが国にも先進的な事例がある。ニッポンの事例とニッポンの投資実務家の思いも語ろう。

 「省エネ」と聞いて、半そで開襟シャツや半そでスーツ(!)ではしゃぐ大平正芳や羽田孜を思い出すというと歳がバレてしまうが、太陽光発電、風力発電、バイオ燃料ときた後で「省エネ」というと苦笑を禁じえない読者も多いのではないだろうか。

 事情は米国でも同じで、拙訳『クリーンテック革命』でも、70年代のエネルギー危機を背景としてカカーター大統領がカーディガン姿で倹約の美徳を訴えたスピーチが引用されている。そうとは書いていないものの「ケチくさい」という印象に対してクギを差している。

ひと味違う「省エネ」

 しかし最近の「省エネ」は一味違う。最新技術による省エネはエネルギー消費50%減とか、80%減というものもある。これはあなどれない。本コラムの連載3回目で「ドイツでは2007年時点で総電力需要に対して再生可能エネルギーが14%を生み出す」と述べたが、省エネで総電力需要そのものを50%削減すれば温暖化対策としてはそれより優れているのだ。

 またクリーンテックの定義として「従来の効用を妥協せずに、再生不能エネルギーの消費を減らす技術」としたことを思い起こしていただきたい。「冬の室温を20℃にして、さぁ、あなたもウォームビズを始めましょう」と声がけし、「なんか寒いなあ」と震えながらちまちまと省エネするのが「省エネ1.0」なら、最先端のヒートポンプで従来と同じ暮らしをしながらエネルギー消費を半分にしてしまうのが「省エネ2.0」だ。

 クリーンテック分野でのベンチャー投資のパイオニアの1社NGENパートナーズのピーター・グルブスタインは「グリーンビルディングは革新的ビジネスとは言い難い」と言いながら「応用先である巨大市場の受け入れ準備が整っている進化」として注目している(米green buildings NYC誌 2007年1月11日)。その「応用先」の1つが建造物。最近では、「グリーンビルディング」と称する省エネ技術を結集させてエネルギー効率を飛躍的に向上させた建造物が増えている。拙訳『クリーンテック革命』でも先進的なグリーンビルディングが幾つか紹介されているが、直近の事例を見てみよう。

 カリフォルニアワインで有名なナパにある「ガイア・ナパ・バレー・ホテル」は総工費13億円を費やした客室132室のホテルだ。屋外プールやフィットネスセンター、エステが揃うが、それだけでは目新しさはない。このホテルはLEEDゴールド認証を受けており「クリーン度」で他のホテルに大きく水をあけている。消費電力の12%をまかなう太陽光発電設備、天窓からの自然採光、断熱性の高い窓ガラスや太陽光の効率的反射で空調設備依存性を低下させ同規模比26%の消費電力削減を実現した。水の再利用や、節水型のシャワーやトイレで40%の節水も実現している。集客は順調で同様のホテルを他のエリアで展開する。(日経流通2007年12月12日)

LEED認定ビルが増加

 LEED(Leadership in Energy Efficiency Design)は、全米グリーンビルディング評議会(USGBC)が認定した建物と敷地の環境性能を評価する自発的な格付制度だ。環境負荷を抑制するグリーンデザインを施したビルを、環境改善貢献度を示す指標で点数評価する。省エネ対策に加えて飲料水の削減、代替エネルギー導入、建材の有効利用、快適性といった観点からの評価も点数化し、最終的に「シルバー」、「ゴールド」、「プラチナ」のようにわかり易い格付けを行う。持続可能な建築戦略について国としての基準をつくったことでLEEDはまたたく間に広く普及した。2007年は前年度比40%増の5423件のビルがLEED登録されるなど、LEED認定ビルは年々増加している。

 個々の省エネ技術に派手さはないが、具体的に適用され、エネルギー効率の高さや明確な格付けで見える化されると、俄然勢いが増すものだ。初期コストは増えているのだが、長期的視点で投資回収して帳尻をあわせる考え方は太陽光発電もグリーンビルも同じだ。

 最新の省エネ技術が集約されたグリーンビルディングではどんな技術が活用されているのか。スタンフォード大学のキャンパスに新設された「ヤン・ヤマザキ環境・エネルギービルディング(Y2E2)」はその名の通り、ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤンがヤマザキ・アキコ夫人と共同で寄付した7500万ドル(の大半)を費やして建築された16.6万平方フィートの建物だ。シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタリスト、ガイ・カワサキによれば、Y2E2は太陽光発電や各種の機能性窓によって温度上昇を防ぐほか、自然採光や自然通気に適した建築構造、光、熱、二酸化炭素等の検出センサーによる自動調整機能、水冷式空調システムなどにより、従来工法比で56%ものエネルギー削減を実現したそうだ。樹木への散水などに再利用水を使うことで同規模のビルと比較して飲料水を90%節約した。極め付けは、排泄物の量によって水洗水量を調節できる「デュアルレバー」式水洗システムだ!

ん?ちょっと待てよ?「大/小」使い分け水洗トイレなんて我が国じゃ当たり前じゃないか?

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著者プロフィール

瀬川 明秀(せがわ・あきひで)

日経ビジネス副編集長。

飯野将人(いいの・まさと)

飯野将人 東京海上キャピタル株式会社勤務。日本興業銀行(現・みずほコーポレート銀 行)にて10年間有価証券ディーリング業務を担当した後、ゼネラル・エレクトリ ックにおいて企業買収および買収先企業の経営改善、ならびにベンチャー投資。 その後日米複数のベンチャー企業における経営参画を経て2003年から現職(ベン チャー投資担当パートナー)。東京大学法学部卒。米国ハーバード大学経営大学 院修了。 訳書に『クリーンテック革命』がある。

堤 孝志(つつみ・たかし)

堤 孝志人 三井住友海上キャピタル株式会社勤務。ニチメン(現・双日)およびその子会社(現・テクマトリックス)において海外ICTベンチャーとの提携を通じた事業企画、輸入内販業務に従事。その後Worldview Technology PartnersにてアメリカのICT分野の投資先支援に従事し、2003年から現職(投資開発第一部部長)。エレクトロニクス、情報通信、クリーンテック分野を中心に幅広く投資活動を行う。東京理科大学工学部卒。カナダ・マクギル大学経営大学院修了。訳書に『クリーンテック革命』がある。

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