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巨大流通企業の誕生は可能なのか

  • 石垣 浩晶

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2008年8月2日(土)

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 伊勢丹と三越の統合(2008年4月)、阪急百貨店と阪神百貨店との経営統合(2007年10月)、イオン8267によるダイエーの事実上の子会社化(2007年3月)など、近年は流通再編の流れが強まっている。

 少子高齢化で市場の拡大が見込めない国内の流通市場においては、かつてのダイエーのように、将来の成長を前提として店舗を拡大していくビジネスモデルは通用しなくなった。限られたパイの中でシェアを奪い合う構造で、その手段としてM&A(合併・買収)や業務提携が盛んに行われるようになってきている。

 合併や買収は、仕入れ価格の引き下げや間接部門の適正化といった費用削減の効果が期待でき、企業側にとっては経営効率が上がる手段と言える。だが消費者の立場に立てば、長期的には市場での競争を減退させ、その結果、価格の引き上げなど副作用を引き起こす懸念もある。

 独占禁止法では、合併や買収を通じて市場の競合関係が失われた結果、市場全体として価格が独占的になる可能性を懸念して合併規制が行われている。今後の再編で巨大百貨店やスーパー、チェーン店などが出現する場合には、一般的に競争が激しく規制されにくいと考えられる段階においても、合併や買収の禁止、もしくはある一定の条件での認可、となる可能性がある。

地理的範囲、値上げ可能性、他業態との競争関係が焦点に

 一般的に流通業界の合併・買収の是非を問う場合、まずは競争への影響を見る要素として、地理的な範囲を考慮する。次に値上げの可能性を検証する。これらは、各店舗単位で分析されることになる。さらに、他の業態との競争をどこまで考慮すべきか、ということも論点となり得る。

 例えば、東京の銀座に立地する百貨店の場合、三越、松屋、松坂屋は中央通り沿いに面して隣接していることから、これらの3店舗間の競争は極めて熾烈に行われていることがうかがえる。

銀座にある主要な百貨店

 もし、基本的に顧客獲得競争がこの3百貨店間でのみ密接に行われているとすると、三越が価格を引き下げて販売を行えば、松屋や松坂屋から顧客を奪うことができる。しかし、松屋と松坂屋はおそらく対抗して価格を引き下げて顧客を取り返そうとするだろう。つまり3百貨店が独立して操業されていることから、競争の結果として独占的な価格が維持されるとは考えづらい、と言える。

 このような場合に、仮にこの三越・松坂屋・松屋が合併して、巨大な「三越松坂松屋」百貨店が誕生すると、店舗間競争は完全に消滅することになる。「三越松坂松屋」百貨店が価格を引き上げたとしても、顧客はあきらめてその百貨店から購入するしかなくなってしまう。このため、3百貨店が1つの百貨店に統合されることになれば、競争は完全に消滅し価格は独占的なレベルにまで引き上げられてしまうことになる。

都道府県、町村など地理的範囲は複数の単位で審査される

 これまでは「三越を中心とする中央通り沿い」という範囲が競争の範囲と仮定したが、これらの百貨店の競争の範囲の実態は、これよりも広いと考えるべきであろう。例えば、銀座にはほかにプランタン銀座、モザイク銀座阪急、有楽町西武、バーニーズニューヨーク銀座店などが立地している。三越で買い物をする消費者は、中央通り沿いの百貨店だけでなく、少なくとももう少し広い範囲に存在する百貨店での買い物も、選択肢の1つとして考えているだろう。

 もし、競争の範囲がこのようにもっと広く捉えられるのであれば、「三越松坂松屋」百貨店が価格を引き上げるような行動を取ったとしても、プランタン、阪急、西武、バーニーズといった代替的な百貨店の存在がある。それらが価格引き上げを抑制する競争相手として存在していると考えることができる。

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