「熱血! 会計物語〜経理課長、団達也が行く」の中では、不正取引や粉飾決算の具体的な手口が描かれました。井上購買部長が間中隆三にだまされて行った仕入れ代金の水増し請求、原価計算の操作による利益の水増し、そしてジェピー、愛知パーツ、北海道工業の3社間で行っていた循環取引――。
ベテランの公認会計士でも見破ることは難しいと言われる循環取引。「会計物語」では、経理部の細谷真理がおかしな取引を見つけ、その疑問を主人公の団達也にぶつけたことをきっかけに見つかりました。
今回は改めてこの取引について、著者の林總さんに解説をしていただきます。バブルの崩壊もサブプライム問題も、循環取引がわかればその本質が見えてきます。また、利益やキャッシュフローとは何かについても分かりやすく語ってもらいました。
今回の聞き手は、循環取引を見破るきっかけを作った功労者、ジェピー・経理部の細谷真理さんにお願いしました。
真理 林先生、連載お疲れさまでした。団達也さんがジェピーに来てから、仕事がとても楽しくなりました。それまでは腹の中で何を考えているのか分からないおじさんたちの中で、がまんすることばかりでしたから…。それに、会社の経営が管理会計にどんなふうに支えられているかを知ることができて、とてもいい勉強になりました。
今日は、林先生に改めて教えていただきたいと思っていることがあるんです。第7話で私が指摘した、循環取引についてです。団課長にも教えてもらったのですが、納得しきれないところがいくつかあるんです…。
愛知パーツが資金繰りのために始めたという動機は分かるのですが、なぜジェピーが、循環取引みたいな不正取引を始めたのかが、腑に落ちないのです。
林 循環取引は関わっている会社それぞれで思惑が違います。ここで循環取引について、おさらいしてみましょう。
手形を担保にお金を借りるのと同じ
一般的には、比較的資金力があり売上高を増やしたいと考えている大きな会社と、資金繰りが苦しくて目先のお金を追っている中小規模の会社の間で行われることが多いですね。
3つの会社で循環取引が行われている場合を考えてみます。
資金繰りが厳しい会社の初期段階は、1カ月間の収支バランスは取れたとしても、日々の収支バランスが取れない状態です。
例えば、売掛金100万円の入金予定は20日、買掛金80万円の支払い予定を15日だとすると、この場合は、80万円の資金が不足することになります。そこで銀行から短期の運転資金を借り入れて資金をつなぐわけです。この場合、一時的に資金をつなげば、5日後には支払代金より多い現金が回収されますから、元金返済も利息の支払いも問題は生じません。銀行は安心して資金を融資します。
ところが、借金で行った設備投資が失敗して元金や利息が長い間滞っている会社や、入金予定金額が支払予定金額より少ない会社が、続けざまに決済資金ショートを起こしたとしたらどうでしょうか。この場合、貸したお金が返ってこないことは明らかです。当然、銀行は融資するはずがありません。
銀行からお金を借りられないとなると、どこかでお金を調達しなければならない。もし、小切手や手形を振り出しているとすると不渡りを起こしてしまいます。不渡りを2度起こせば、その会社は銀行取引停止になりますから、事実上倒産です。そこで、取引先の会社に対して、商品を売ったことにして、手形を受け取り、銀行でその手形を割り引いて資金ショート分を補うわけです。商品は売っていませんから、この行為は銀行から手形を担保にしてお金を借りるのと同じことです。ところが、この不正処理は決算書を見ただけでは全く分かりません。
真理 お金に困った愛知パーツが陥っていた状態ですね。ジェピーと愛知パーツ、北海道工業の3社間で行っていた循環取引は、資金繰りに窮した愛知パーツの社長が、ジェピーの営業部の石田課長に持ちかけたものだったと聞いています。
確かに、愛知パーツは、ジェピーから受け取った手形を銀行で割り引いて買掛金の支払いに充てていました。でも、ジェピーはなぜ現金ではなく、手形で支払ったのですか?
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



公認会計士、税理士、







