• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

第3話「その負債じゃなくて、連帯保証です」

2008年9月10日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回までのあらすじ

 ジェピーの間中隆三専務と斑目淳次経理部長は、粉飾決算の首謀者として、会社を追われた。数々の不正を明るみに出した功労者、団達也は取締役経理部長に昇格。一方、達也の右腕となって奔走した細谷真理は、達也の推薦で、財部益男社長から経理課長昇進を打診された。

 しかし、達也の進言が裏にあると察した真理は、社長の目の前で昇進を断ってしまった。

 達也はジェピー再建のカギは人材の配置と金の効率的な運用と考え、独自に最適な人事の構想を練っていた。

 そんな折、真理の口から「間中さんの置きみやげ」という一言が出てきた。達也はその言葉が重要な意味を持つことを直感した。


社長室

 ジェピー社長の財部益男は、愛知工場長の三沢充と達也を社長室に呼び出していた。益男が2人の前に広げたのは、自分で書いた手書きの組織図だった。

 「こんな体制を考えてみました」

 何度も書いたり消したりしたあとが残る組織図を見て、達也は益男の意気込みを感じた。

 「どうでしょうか?」

 益男は社長とは思えないへりくだった物言いで2人に感想を求めた。組織図は、製造部、営業部、経理部、人事部4つの部門から構成されていて、それぞれのトップが取締役兼部長となっていた。一番右端は製造部門で、その統括責任者の欄には取締役製造部長三沢充と書かれていた。

 工場は愛知工場とジェピー発祥の地である長野工場の2カ所あり、愛知工場長を三沢が兼務し、副工場長は金子修平となっていた。達也は愛知工場に新たに設置された「生産技術課」「経理課」という2つの課にも目を奪われた。それぞれの責任者は生産技術課長金子恭平、経理課長が木内修二となっていたからだ。

 生産技術は、設計・開発された製品を生産(量産)するための技術で、生産技術課は工場の新設やラインやロボットなどの自動機の設計・製作などを行う部門だ。高品質で低コストのコネクター、可変抵抗器、スイッチなどを量産するには、生産技術力がカギになる。優秀な生産技術者が会社の浮沈を決すると言っていい。

 おそらく社長は、三沢の進言に従ってロボット設計の天才、金子を愛知工場と生産技術課の責任者したのだろう、と達也は思った。しかし、達也は一方の経理課の責任者が木内だということに納得できなかった。木内は三沢工場長の味方のようなふりをして、陰で間中や斑目に情報を流していた裏切り者だ。

 「木内さんが経理課長になってますね。どのような理由でしょうか」

 「彼は業務担当だったが、実際の仕事は経理だったからね。この組織図は、単に業務課を経理課に変えただけだよ」

  (部門名を直しただけだって! この社長は何にも分かっちゃいない)

 達也は益男の言葉を聞いてあきれ果てた。木内が愛知工場の経理課長になるということは、自動的に達也の直属の部下になるということだ。

 これまでスパイのようなことをしていた男が、今回のゴタゴタでは何ひとつお咎めなしなのだ。達也の顔がみるみる紅潮していった。達也の憤慨を感じ取った三沢が口を開いた。

 「実は経理課長を誰にするかについては社長に相談されたんだ。その時私が、『木内君でいいんじゃないですか』と答えたんだよ。彼は決して悪い人間ではない」
 三沢が言い終わらないうちに、達也は思わずつぶやいた。
 「工場長…」

 (なんて人がいいんだ)

 弱者を装い、何食わぬ顔をして自分の寝首をかこうとしたこの男を、三沢は許したのだ。それどころか、何事もなかったように前と同じ仕事を続けさせようしている。ところが、この社長はそんな工場長の気持ちの機微など全く理解していない――。

 (先が思いやられるな…)
 達也はため息をついた。

「「熱血!会計物語 ~経理部長、団達也が行く」」のバックナンバー

一覧

「第3話「その負債じゃなくて、連帯保証です」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

すきま時間を活用できることに気づいた消費者は、時間価値をかつてないほど意識している。

松岡 真宏 フロンティア・マネジメント代表