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第11回  任天堂を復活させた、ある戦略

  • 佐久間 陽一郎

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2008年9月20日(土)

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 任天堂7974が8月29日、2009年3月期連結決算の業績予想を上方修正した。連結純利益は前期比59%増の4100億円、連結売上高は初めて2兆円に達する見通しだ。売上高、利益とも過去最高を更新する。

 同社の好業績を牽引しているのは、携帯型ゲーム機の「ニンテンドーDS」と据え置き型ゲーム機の「Wii(ウィー)」だ。その好調ぶりからは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション」シリーズに押されて、劣勢に立たされていたかつての面影は全く感じられない。

任天堂の「Wii」の勝因

 任天堂が復活したのはなぜか。一言で言えば、競争の舞台を変えたからだ。

 据え置き型ゲーム機の「Xbox360」を販売する米マイクロソフトを含めた3強はかつて、動画のスピードと美しさを競っていた。そのために、SCEと親会社のソニー6758は、東芝6502、米IBMと共同で開発した高性能CPU(中央演算処理装置)の「Cell(セル)」に巨額の資金を投じた。

 そのCellを初めて搭載したのが、SCEの据え置き型ゲーム機「プレイステーション3」である。動画のスピードと美しさの点では、任天堂のWiiを圧倒している。ところが、販売台数ではWiiがプレステ3を大きく引き離してきた。

 これは、任天堂のWiiがプレステ3とは異なる市場で新規の顧客を獲得したからにほかならない。

 ゲーム機の性能がどんどん高まるにつれて、一般の人はついていけなくなり、ゲーム機の購入に興味を示すのはマニアだけになってしまった。そこで、任天堂はWiiによって、高性能のゲーム機には見向きもしなくなった一般の人を再び顧客にすることを目指したのである。

 ゲーム機に背を向けた人たちに受け入れてもらうため、性能よりも操作性の簡素化にこだわった。さらに、価格も実勢でプレステ3の3分の2程度に抑えた。こうした点が歓迎され、Wiiのユーザーは、ゲーム機を使ったことのない主婦や高齢者などにまで広がった。

価値向上と低価格を両立する「バリュー・イノベーション」

 この任天堂のWiiのように、既存市場での競争を避け、競争相手のいない未開拓の新市場を創り出す新たな経営戦略がここ数年、注目を集めている。

 フランスのビジネススクール「INSEAD(インシアード)」の教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュの2人が2005年に出版した共著『ブルー・オーシャン戦略』(ランダムハウス講談社)で提唱したものだ。

 まず、既存の顧客を相手にして、多くの企業が過当競争を繰り広げている市場を「レッド・オーシャン」と位置づけている。血で血を洗うような競争の激しさから赤色に染まった海というわけだ。

 これとは対照的に、これまでは顧客でなかった人を相手にして、独占的に収益を上げることができる市場を「ブルー・オーシャン」と定義する。激しい競争がなく、血で赤く染まっていない真青な海という意味だ。

 多くの場合、かつては顧客でなかった人を顧客にするブルー・オーシャンの方が、顧客の人数は多く、市場の規模も大きくなる。

図版:ブルーオーシャン戦略の概容

 ブルー・オーシャンに位置づけられる市場を創出する戦略のカギとして、キムたちが提示しているのが、「バリュー・イノベーション」だ。これは、顧客にとっての価値の向上と低価格を同時に実現するというものである。

ユーザーに対して操作性の良さという新たな価値を提供する一方で、価格を抑えた任天堂のWiiは、まさにバリュー・イノベーションの実践例と言える。

ポーターの競争戦略などへの批判から生まれた

 提唱者のキムたちによれば、ブルー・オーシャン戦略は、米ハーバード大学経営大学院教授のマイケル・ポーターの競争戦略や、前回に紹介したリソース・ベースト・ビューとは全く別物だという。

コメント4件コメント/レビュー

>任天堂はWiiによって、高性能のゲーム機には見向きもしなくなった一般の人を再び顧客にすることを目指したのである。高性能機の失敗から学んだのは「64」で失敗してからで、ゲーム作りにしても、高性能機で失敗した64時代から一環してゲームマニア向けではないゲーム作りをして、実際に子供には支持されていました。任天堂の現在の成功は、一貫した任天堂のゲームに対する方針の賜物であると思います。(2008/09/22)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>任天堂はWiiによって、高性能のゲーム機には見向きもしなくなった一般の人を再び顧客にすることを目指したのである。高性能機の失敗から学んだのは「64」で失敗してからで、ゲーム作りにしても、高性能機で失敗した64時代から一環してゲームマニア向けではないゲーム作りをして、実際に子供には支持されていました。任天堂の現在の成功は、一貫した任天堂のゲームに対する方針の賜物であると思います。(2008/09/22)

任天堂のWii・DSによる日本におけるブームは既に峠を越したように思います。女性・高齢者を巻き込んだ大流行は、本来のゲーマーがそっぽを向いた流行だったのかいったん下火になると反動は大きいのではないでしょうか。PS3の画質の美しさやPS3のゲーム本来の面白さなどがゲーマーを引き付け、ゲームにうるさい息子は任天堂は見向きもしませんでした。今年の欧米の任天堂ブームも来年は疑問視され、上方修正されたあとの任天堂の株価も昨年のようにはいかないようです。今年の日本の任天堂のブーム下火が来年の欧米の姿になるだろうと見られているからでしょう。(2008/09/22)

このコメントを書くために、過去の分すべてを読みました。そして思ったことは、私は野中さんの講演も聴き、ポータ、ハメルも読んで学びました。しかし、これらを会社で、仕事で活かせなかった、という残念な結果を背負っています。私の説得力に問題があったのはわかりますが、幹部に聞く耳がない、理解するアタマがない、というのもあるのではないでしょうか。コアコンピタンスを「競争力」と思っている人があまりにも多い。(2008/09/20)

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三品 和広 神戸大学教授