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第12回: 統合準備(下)
統合ノウハウは人質交渉術に学べ

  • 西村 裕二

バックナンバー

2008年10月7日(火)

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 M&Aが成功したとしても、それはあくまで始まりにすぎない。次に待っているのは「統合」だ。そして、ご想像頂けると思うがこの作業(DAY1以降)が非常に難しい。きっちりプランを立てて準備をしておかないと、成功の絶頂から奈落の底に突き落とされる。

 「統合」(ポストM&Aという場合もある)のやり方を説明する教科書では、一般的には三菱東京UFJ銀行のケースのような、同じ業種、サービスを吸収・合併する水平統合を想定して説明していることが多い。日本のM&Aは水平統合のケースが多いことに加え、水平統合は作業量が膨大で、専門性も高く難しいためだ。

 しかし、本稿で推奨している技術、製品ブランドや流通網などの獲得を目的とする「ケイパビリティ型M&A(買収先のケイパビリティ=“強み”を活かすことを目的とする企業買収。詳しくは第6回を参照)」においては、水平統合の統合アプローチを適用してはうまくいかない。

 なぜか。水平統合における企業価値向上の源泉は、コストや投資の重複を徹底的になくし「効率化」を図ることにある。となると、2つの企業の統合度合を目一杯高めないと、統合効果を最大化できない。

 統合範囲は一般的には研究開発・調達・生産・物流・営業・流通からそれを支える間接業務まで、両社の持つ企業活動全体に及ぶ。水平統合では、買収先が同業他社であるため、買収先事業に関する知識も豊富であるという有利な側面があるものの、短期間に全社の戦略・組織・業務・情報システムを見直し、くっつけねばならないため、大変な作業になる。

水平統合アプローチではうまくいかない

 ちなみに当社には、グローバルの統合ノウハウを日本での経験を盛り込んでローカライズした統合の際の「TO DO」を網羅した、とても分厚い「統合ハンドブック」というものがある。そのハンドブックには大きな作業だけでも数百にもおよぶ項目が記載されている。すべては抜け、漏れを防ぐためだ。

 作業量の膨大さは、例えば、比較的規模の大きい水平統合を実施する大手金融機関や製薬会社の統合作業では、数十人もの外部コンサルタントが1年、あるいは場合によってはそれ以上常駐するケースも珍しくないことから感じていただけるだろうか。

 一方、水平統合とは異なり、ケイパビリティ型統合の価値向上の源泉は、「効果性(=成長)」である。ケイパビリティ型統合においては、両社を組み合わせていかに成長を実現するかの知恵を絞ることが、統合の肝になる。

できるだけ統合「しない」

 例として、日本のメーカーが英国のブランドメーカーを買収する場合を考えてみよう。買収によってブランドを獲得し、日本・アジアにて販売することを効果として見込んでいる場合を想定する。日本やアジアでの顧客ニーズを反映した商品のローカライゼーションや、商品特性に合わせた製造・営業・流通網を整備することが、統合効果創出のために必要な作業になる。

 水平統合のように、バリューチェーンの全体の統合は必要なく、獲得したブランドを製造できる設備を社内外から調達し、売れるための流通・営業体制を整えることにフォーカスする。2社の統合というより、むしろ既存の流通網や営業体制を有効に活用しながら、新しい事業基盤を作るイメージだ。

 統合にあたってのリスクは、前述した成長のシナリオが実現できないケースだが、もう一つ大きなリスクがある。優秀な人や人に紐づいたケイパビリティが流失することだ。

 少し古い情報だが、ハーバードビジネスレビューの調査(*)によれば、買収された企業の離職率は統合後1~2年間に大幅に増加し、その後少し緩和されるものの、10年近くも高い離職率が続く傾向にあるという。それを避けるためには、相手企業の経営者や社員が高いモチベーションを持って、気持よく働いてくれるような環境をつくることが必要だ。

* 「Journal of Business Strategy」(Vol.29 No.4 2008)by Jeffrey A. Krug and Walt Shill

 そしてその人の流出の最も大きな要因は…たぶんもうお分かりになるだろう。

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