経済学で、人を資本とみなす「人的資本」の概念を開拓した。
リーダーを育てるには、自分で考える力を養う教育、身近なモデル、
さらには上下関係を超えて議論できる風土が大切と説く。
充実した社会人教育と移民政策は、
人口減少社会の日本に、さらなる成長をもたらす。

ゲーリー・ベッカー
1930年生まれ。米プリンストン大学数学科卒業、55年米シカゴ大学経済学部博士課程修了。米コロンビア大学教授を経て70年シカゴ大学教授。92年教育や犯罪など市場以外で見られる人の行動や相互作用の分析にミクロ経済学を応用した功績でノーベル経済学賞受賞。
リーダーシップは、優れたリーダーの背中を見ながら学ばなければいけません。経営大学院では、リーダーシップをうまく教えていないように思います。というより、教えるだけでは不十分なのです。
まず、他人から面と向かって批判を受けることに、慣れるべきですね。相手が年下だったり、地位が下の人間であったりしても、対等に意見を戦わせる。そこから、「箱の外で考える(think outside the box)」ことを学べるからです。
「箱」には、前例や経験などこれまでのやり方が詰まっています。それとは違う新しい視点から考える。考え方の違う相手とのやりとりが、創造的なリーダーを育てるのです。
経済学の世界でも、数学的な手法やスキルは確かに大学で学べます。でも、良い研究をするには、周囲に優れた研究者がいることが重要です。優れた研究者が、日々していることを見ながら学ぶのです。同じことがリーダーシップにも言えます。良いリーダーのそばで学ぶことが、一番の勉強になる。
質の高い教育が成長に必要
かつて日本の大学で6週間、講義したことがあります。日本の初等教育は世界でも評価が高いのに、大学や大学院教育といった高等教育は、決して評価が高いとは言えません。中学校、高校までは非常に強力です。しかし、大学は、非常に優れた大学もありますが、得てして「大学」と呼べるレベルには達していない。
それは、2つの伝統のためだと思います。
1つ目は、日本の大学生は米国の大学生ほど勉強しない。良い大学に入るために一生懸命勉強するものの、入ってしまえばあまり勉強しなくていい。これは変えるべきです。
2つ目は、自力で考えることを十分に教えない。講師と意見を戦わせることをせず、批判を嫌がる。米国人の学生は全く違い、とにかく講師を批判する。時々、やりすぎじゃないかと思うこともありますが。
批判すれば、講師から反応が返ってくる。良い講師は、批判を受け入れ、間違っていれば間違いを指摘し、正しければ、説明しながら意見を変えるでしょう。そのやりとりが必要なのです。礼儀正しくなければなりませんが、若い人も目上の人の考えをどんどん批判するべきです。
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