「渋澤 健の資本主義と道徳」

金儲けだけでなく豊かさを持続させるために

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2008年11月1日(土)

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真正の利殖は仁義道徳に基かなければ、決して永続するものではない。【『論語と算盤』仁義と富貴】

 電卓やパソコンのスプレッドシートが発明される何世紀も前に「算盤」がありました。アジア圏の文明では、木の枠の中に並んでいる複数の串に数え玉が備えてある形を取り、日本には江戸時代初期に中国から到来したと言われているようです。

 およそ270年間におよぶ江戸時代(徳川時代、1603〜1868年)の政治的安定期は、外国勢力から隔離された日本は、文化的、社会的、経済的に独自に発展した時代でもありました。孔子の教え、つまり、仁義を通じて社会的秩序を築く道義は、この時代に武士階級に開花し、社会の知性的基盤となります。

 儒家の祖である孔子は、紀元前500年ぐらいに活動した中国の思想家であり、儒教は紀元300年ぐらいに朝鮮半島から日本に到来したと言われています。「論語」とは、孔子自身ではなく門下生たちが書き留めた書物ですが、2500年間を経た人類の普遍的な智恵であると言えるでしょう。

論語と算盤という懸け離れたものを一致せしめる事が今日の緊要の務めである。【『論語と算盤』処世と信条】

前回の英文記事※1をご参照ください。

日本初のベンチャーキャピタリストだった渋沢栄一

 1868年の江戸期の終末から20世紀初期は、封建時代の社会秩序を解かれた日本が驚くべき経済的発展による世界的近代国家として身を起こした時期です。また、日露戦争(1904〜05年)の勝利によって、それまで西欧諸国の特権であった軍事国家ともなりました。

 明治維新と呼ばれるこの時代は、活気に満ちた多くのイノベーターによる素晴らしい功績に恵まれた、日本史の大きな転換期です。

 そのイノベーターのひとりに渋沢栄一という人物がいました。1840年、現在の埼玉県深谷市にあった豪農商家に生を受け、日本初の銀行設立などの実績により、明治時代を代表する実業家として名声を築くことになります。

 また、株式(合本)制度の先導者であるため、渋沢栄一を「日本近代的資本主義の父」と評価する向きもあります。栄一が設立に関与した会社はおよそ500社と言われ、「日本初の近代的ベンチャーキャピタリスト」と称しても間違いはないでしょう。

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著者プロフィール

渋澤 健(しぶさわ・けん)

1961年、神奈川県生まれ。渋沢栄一の5代目の子孫。小学校2年生のとき父親の転勤で渡米。83年テキサス大学卒業。87年UCLA経営大学院修了、MBAを取得。JPモルガン、ゴールドマン・サックス、大手ヘッジファンドのムーア・キャピタル・マネジメントなどの外資系金融機関を経て、2001年投資コンサルティング会社のシブサワ・アンド・カンパニーを設立。代表取締役に就任。2008年コモンズ投信設立。会長に就任。渋沢栄一記念財団理事、経済同友会幹事 主な著書に『巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」』(講談社)、『渋沢栄一とヘッジファンドにリスクマネジメントを学ぶ―キーワードはオルタナティブ 』(日経BP)、『シブサワ・レター 日本再生への提言』(実業之日本社)など。新著に『渋澤流 30年長期投資のすすめ』(角川SSコミュニケーションズ)。企業の幹部候補クラスを対象にした経営塾「『論語と算盤』の現代的意義」を開催中。詳しい内容はシブサワ・アンド・カンパニーまで



このコラムについて

渋澤 健の資本主義と道徳

明治から大正にかけて日本に近代経済社会の基礎を作った実業家、渋沢栄一。日本で初めて銀行を創立し、日本初の株式制度を導入した「日本資本主義の父」です。栄一が主張したのは「論語と算盤の一致」。すなわち、中国の古典『論語』にある道徳と、“金儲け”である経済という、相容れない2つを融合させることこそ、日本の発展には不可欠という考え方です。混迷を極める世界経済に翻弄され、新たな経済の秩序を模索せざるを得ない現代、栄一の言葉は多くの示唆を我々に与えます。栄一の日本的思想を基に、資本主義とは何かについて考えます。コラムは同じ内容を英語と日本語で交互に連載するスタイルです。日本語は英文の逐語訳としてお読みいただくより、前週に掲載した英文をより深く理解するための独立したコラムとしてお読みいただければと思います。

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