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第6講 まず変わるべきは部下ではなく自分

2008年11月1日(土)

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2007年1月、九州・アジア経営塾において、企業の管理職層を相手に講演

2007年1月、九州・アジア経営塾において、企業の管理職層を相手に講演

 「気がつけば、部下に対して『ありがとう』を言う回数が増えた」。福岡地所の商業事業本部に勤める榎本佳勝は、部下とのコミュニケーションが一変したことを、うれしそうに語る。

 榎本は、ある時期まで部下が自分の指示した仕事をやるのは、当たり前という考えを持っていた。今は違う。部下あっての自分という気持ちを自然に持てるようになり、それによって感謝の言葉も儀礼ではなく、心の底から言えるようになった。

甘やかしていたのは自分

 榎本の心境の変化はなぜ起きたのか。

 それは、今のままでは部下を甘やかしているだけだ、と気づいたからだ。部下を甘やかしていただけではない。怒って嫌われたくないという気持ちから、部下以上に自分を甘やかしていた、とある人間の立ち居振る舞いを見て自覚させられたからだ。

 榎本は2年前、九州の財界が音頭を取って立ち上げた次世代リーダーの育成を目指す「九州・アジア経営塾(KAIL)」に参加した。KAILは福岡にあるNPO法人(特定非営利活動法人)が運営し、主に九州地盤の著名企業から選抜された社員が参加し、1年間の講義を受ける。

 その講師には日産自動車社長兼CEO(最高経営責任者)のカルロス・ゴーンや、建築家の安藤忠雄、ジャーナリストの筑紫哲也などといった各界の著名人が並ぶ。榎本が受講した時の講師の中に早稲田大学・国際教養学部のカワン・スタントが加わっていた。

 スタントを講師に招いたのは、KAILで講義内容などを取り決めるプログラムディレクターの蓮沼孝だった。書店でスタントの著書『「できない大学生」たちが、なぜ、就職で引っ張りだこになったか』(三笠書房)をたまたま手にすると、その内容に引かれて購入し、一気に読んですぐにスタントに講演を依頼した。

 「ぜひ、あなたの人生を語ってほしい」。蓮沼の情熱のこもった要請を快諾したスタントは2007年1月27日、福岡に出向き、平均年齢43歳の次世代リーダーたち数十人の前で、貧しく、差別を受けたインドネシアでの生活や、日本社会で感じた裏切りなどをとうとうと語った。

投げかけた疑問

 榎本、蓮沼と共にその場に受講生として居合わせた福岡県企画・地域振興部総合政策課の企画主幹、神代暁宏は、その時のスタントの講義を聞き、「人間としての背景の厚みを感じた」と振り返る。福岡地所の榎本も神代と同じようにスタントの生き様に感動を覚えた。しかし、どうしても理解できないこともあった。

 この連載で何度も触れたように、スタントは数々の「裏切り」を受けている。その悔しさに涙すらさえも出ない嗚咽も何度かしてきたにもかかわらず、「どうしてスタントさんは、ポジティブに物事を考え行動できるのだろうか」。

 講演を終えた後のスタントは、早稲田で学生たちに講義したのと同じように疲弊した様子だった。それでもスタントは打ち上げの酒席の誘いに快く応じた。

 榎本は率直に自分の疑問を投げかけた。それに対し、スタントは初めて会う自分に対し、講演後の疲れをものともせず、誠心誠意を尽くして榎本の疑問に答えてくれた。そんなスタントの姿勢を見て、衝撃を受けると同時に1つの考えが頭に浮かんだ。

 「この人は、人に対する愛情が深い。そこには利害関係などない。必要としている人にできる限りのことをなんの衒(てら)いもなくできることは、どれほど人の人生を豊かにできることなのか」

コメント5件コメント/レビュー

激化する競争社会。その中でもまれるうちに、私達の多くは、いつの間にか、相手に勝つことしか頭になくなっているのかも知れません。様々な仕打ちをされた相手に対しても、恨みでなく愛という形で接されるカワン先生は、対立軸を基本とした今の現代社会を変える本質をつかんでおられて、それを体現しておられるような気がします。頭では理解していても、なかなかできない事がたくさんありますが、先生の熱いお話をお伺いすると、「やってみよう」と心が動かされます。(2008/11/10)

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「第6講 まず変わるべきは部下ではなく自分」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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激化する競争社会。その中でもまれるうちに、私達の多くは、いつの間にか、相手に勝つことしか頭になくなっているのかも知れません。様々な仕打ちをされた相手に対しても、恨みでなく愛という形で接されるカワン先生は、対立軸を基本とした今の現代社会を変える本質をつかんでおられて、それを体現しておられるような気がします。頭では理解していても、なかなかできない事がたくさんありますが、先生の熱いお話をお伺いすると、「やってみよう」と心が動かされます。(2008/11/10)

毎回の記事を拝見しております。非常に意味深く、自身を問う毎日です。困ったら・・・また、記事を読む。読み込むことで、また、自身の気づかさせて、頂いております。自身を含め(家族)(会社内)を全てにおいて、自身を高めなければ、子供&人は育たない。大人である私たちも「教わる&育む」ことの、大切さを教授は、説いているのでしょうネ!(2008/11/06)

「人に対する愛情が深い」、これは意味深いことです。部下と上司の間にもちろん必要ですが、学生と先生、親子、夫婦などの間にも非常に重要です。いつでも深い愛情を持って相手に対応するのは簡単ではないです。特に、あまり愛情がない人、冷たい人、また、熱かったり冷たかったりする人と接する場合、精神上はすごくつらいです。その辺について、セミナー、講演などでもいいが、ご指導して頂ければ幸いです。(2008/11/04)

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長