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非正規社員の正社員化は、“まやかし”

平野光俊 神戸大学大学院経営学研究科教授に聞く(前編)

2008年11月8日(土)

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 バブル経済の崩壊後、日本企業は非正規社員を増やすことで人件費の抑制を図ってきた。それに伴って、非正規社員の職域が広がり、中には管理職として正社員と変わらない仕事をこなす人も増えている。

 その結果、正社員との処遇格差が問題化。対策として非正規社員を正社員に転換する企業も出てきた。だが、非正規社員が就く正社員は以前の正社員と同じとは限らない――。

 総合スーパー最大手のイオンで人事部長などを務めた後、経営学者に転身した神戸大学大学院の平野光俊教授は、こう指摘する。同教授の言う新たな正社員の実態とは。

(本誌による要約日経ビジネスマネジメント 中野目 純一)

平野 光俊(ひらの・みつとし)氏
1980年早稲田大学商学部卒業、ジャスコ(現イオン)入社。96年近畿四国事業本部人事部長。97年近畿カンパニー人事教育部長。98年神戸大学大学院経営学研究科で経営学博士号を取得。2000年本社経営企画室次長。2001年本社グループ戦略室次長。2002年イオンを退社し、神戸大学大学院経営学研究科助教授に就任。2006年から現職。専攻は経営組織と人的資源管理。主な著書に『日本型人事管理─進化型の発生プロセスと機能性─』(中央経済社)など
(写真:山田 哲也、以下同)

 今年4月1日に改正パートタイム労働法が施行されました。正社員並みの働きをしているパートタイム労働者に対しては、正社員と同じ賃金を支払うよう企業に義務づけたのがポイントです。

 ここで言うパートタイム労働者とは、パート、アルバイト、契約社員といった、いわゆる非正規社員を指します。これらの非正規社員の中で、正社員と同様の働きをしている人がいるにもかかわらず、賃金などの処遇に格差がついている。この処遇格差が社会的な問題にまで発展した。法改正にこうした背景があったことは、周知のことでしょう。

 処遇格差の解決策の1つとして、多くの企業が非正規社員を正社員に転換しています。目的として「顧客との接点の強化」などを挙げていますが、それを額面通りに受け取ったら、本当の狙いを見失ってしまいます。

 正社員に転換する動きが広がっているからといって、企業の雇用に対する方針が変わったわけではありません。人件費や人員の増減を行いやすくしたい。これが、非正規社員を増やす大きな動機だったわけですが、この点は変わってはいないと見ています。

 むしろ企業は、人件費や人員の増減を一段と実施しやすくしようと考えている。そのために、正社員の区分を作り直しているのが事の本質ではないでしょうか。正社員を細分化して処遇に差をつけることで、人件費を抑制しようというわけです。

 非正規社員の正社員化もその一環。区分は同じ正社員でも、その実態は以前からの正社員とは違う。よくよく見ると、こういうことが少なくありません。

非正規の増加と成果主義は、人件費引き下げが目的

 そもそも、企業が非正規社員を増やしたきっかけは、1990年代前半のバブル崩壊にありました。その影響で業績が悪化した企業は、人件費を抑制する必要に迫られた。そこで、賃金が低くて雇用も調整しやすい非正規社員を増やしたのです。

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「非正規社員の正社員化は、“まやかし”」の著者

中野目 純一

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス副編集長

2012年4月から日経ビジネス副編集長。マネジメント分野を担当し、国内外の経営者、クリステンセン、ポーター、プラハラードら経営学の泰斗のインタビューを多数手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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