日経ビジネスは2009年10月に創刊40周年を迎えます。そのカウントダウン企画として、過去の記事の中から、人気シリーズ企画「誤算の研究」を毎日掲載していきます。企業戦略の現実は理論書の通りには進みません。戦略の本質は、むしろ誤算の中に隠れています。その後の成長を確実なものにした企業あり、再編の渦に巻き込まれて消滅した企業あり、ケーススタディーの対象は様々です。記事に描かれているのは過去の出来事とはいえ、時代を超えた企業経営の指針が読み取れるはずです。
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1992年6月22日号より
株価急落による評価損計上、景気後退期の新工場稼働など、誤算とも思える事態が相次いでいる。産業界全体の量的拡大が難しくなる中で、景気循環論に立った強気経営は成功するのか。
(長崎 隆司)
「おかげで45億円節税できた」と株価急落にへこたれない社長
「株式の評価損を89億円も出したのは恥ずかしい話だが、おかげで予定より45億円も節税できた」。工作機械メーカー大手、森精機製作所の森幸男社長は、株価急落にもへこたれていない。

株主安定化のため住友銀行、三和銀行などとの間で拡大した株式持ち合いが裏目に出て、1992年3月決算で、売上高801億円の11%強にも達する投資有価証券評価損を特別損失として計上。税引き前利益は前期を78%も下回る58億円となった。その結果、納税額も大幅に減った。評価損だから、カネが社外に流失することはない。
とはいえバランスシート上の資産が減少したことは事実。株価回復を待たねば損失は取り返せない。無借金で当面の資金繰りに困らない強さをよりどころにした釈明とも聞こえる。
評価損ばかりでなく、森精機は最近、誤算とも思える事態にしばしば直面しているが、森社長は平然としている。
ライバルメーカー、OKK(大阪機工)の株式を大量に買い入れたが、2年近くもこう着状態が続いていることでもそうだ。森精機が、OKKの筆頭株主になったことが判明したのが90年秋。今やOKKの発行済み株式のうち13%強を保有する。ところがそれ以上に具体的な動きはなく、「森精機は何を狙っているのか」とさまざまな憶測を呼ぶばかりだ。
92年3月期の有価証券評価損のうち十数億円はOKK株の値下がりによる分。OKKは92年3月期には経常赤字に転落、93年3月期には最終損益も赤字になる見通しだ。評価損を出したうえ、相手の業績が不振では、株式取得のメリットは薄らいでしまったようにも思える。
それでも悠然と構えていられるのは、森一族が発行済み株式の約20%を握るオーナー型企業だからだ。2人の兄が創業、その後に森幸男社長も加わって3兄弟で育てた。兄2人は今、取締役相談役と監査役。86年の社長就任以来、現社長がワンマン体制で会社を引っ張っている。
VRA2年延長で量的拡大望めず顧客の設備投資減少で受注ダウン
OKK株取得の狙いについて森社長は明確に説明しない。業界関係者の多くは、「老舗のOKKは技術の蓄積があり、自動車・部品メーカー向けシステムに強みがある。汎用機の量産で伸びた新興の森精機にとってOKKは魅力的なのだろう」と解説する。OKK側でも森精機の狙いが何なのか、つかみかねている。「今後どうなるかは森さんに聞いてくれ」(広田信幸社長)と、静観を決め込んでいる。
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