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債務超過に繰延税金資産取り崩し
決算書に見るビッグ3の「未来」

  • 杉田 庸子

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2008年11月26日(水)

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■ 米GMとフォード・モーターの決算動向

(2008年1月~9月)
単位:100万ドル
GM フォード
総売上高 118586 117085
(前年同期比) -11% -9%
営業損失 -13948 -9019
(前年同期比) -758% -4236%
当期純損失 -21264 -6696
(前年同期比) -49% -7709%
営業キャッシュフロー -9661 3269
(前年同期比) -350% -19%

 米国発の金融危機が実体経済にも濃い影を落とし始め、米政府は対策に追われている。経営危機に陥ったゼネラル・モータース(GM)とフォード・モータークライスラーのビッグ3への緊急融資策はその目玉だ。

 クライスラーに関しては現在80%近い株式を投資ファンドが保有する非公開企業なので、正確な決算数値は判明しないのだが、2008年第1四半期だけで5億1000万ドルの損失を計上したと発表されている。

 GMは今回の決算の結果、自動車業界支援策が承認されなければ、年末まで営業キャッシュフロー不足に陥る可能性が出てきた。

繰延税金資産の取り崩しで巨額損失

 長年「世界一の自動車メーカー」として君臨してきたGMがそこまで追い込まれた。その背景には、米国内での自動車事業の不振のみならず、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の深刻化で、元金融子会社GMACが住宅ローンに関連した損失を計上することとなったことが大きい。

 GMの決算が危険水域に入ったのは、繰延税金資産を取り崩し、390億ドルもの損失を計上した2007年第3四半期のことだ。繰延税金資産は会計上の利益と税務上の課税所得との差を埋めるための会計技術的な資産のことだ。言い換えれば、将来発生する税金(損金)を当期に前払いしたと考え、この前払いしたものを将来回収する時のために、繰り延べているものが繰延税金資産である。

 ある会社が繰延税金資産を計上するためには、その会社に将来も課税所得が発生することで、その課税所得を減額させる可能性を持っていることが必要だ。逆に言えば、仮に将来に赤字になり納税できなくなれば、繰り延べたものを「将来の税金を減らす」ために使う機会を持てないことになる。

 繰延税金資産の取り崩しを行うということは、将来に十分な収益(課税所得)を獲得できず、前払いした税金を回収できる可能性が低くなっている状態を、会社自らが認めざるをえなかった状況と言える。昨年10月に30ドルだったGMの株価がその後下降し始め、現在は10分の1程度に落ち込んでいるのは、今年9月のリーマン・ショックに端を発した金融市場の混乱も大きいが、2007年第3四半期の決算で繰延税金資産の取り崩しがあり、その時点で将来の業績に不安感が強くなったことも、その根底にある。

会計と税務のズレを示す

 ここで、繰延税金資産がどのように計上されるのか、簡単な例を使って説明しよう。繰延税金資産は会計と税務の処理に生じるズレを反映する税効果会計の適用によって発生する資産だ。会計と税務のズレとは、1つは会計上では収益や費用と認識されるものが、税務では益金(会計上の収益と同義)や損金(会計上の費用と同義)と認識されなかったり、その逆に会計上では収益や費用と認識されなかったりするものが、税務上は益金や損金と認識されることがあるケースを言う。

 例えば、このようなケースがある。A社が2007年決算で経営の危ぶまれる取引先に対し、貸倒引当金の計上を1億円したとする。会計上、貸倒引当金は費用と認識されるので、2007年のA社の会計上の納税額は、1億円の貸倒引当金も費用と処理された後の税前利益に実効税率をかけた額になる。税前利益が10億円、実効税率が40%の場合、4億円が納税額になる。

 しかし、税務上、積んだ貸倒引当金が損金と認められるのは、ざっくりいうとその取引先が法的に破綻して回収できなくなった時なので、A社は 2007年にはその1億円を税務上の費用(損金)して使うことができない。ゆえに、税務上は、会計上の税前利益の10億円に貸倒引当金の1億円を加えた11 億円が課税所得となり、納税額は11億円の40%である4億4000万円となる。

 税効果会計は、この会計上と税務上の納税額の違いを調整する。A社の場合、税前利益は10億円に対し、4億4000万円の法人税が発生した。これに、税務上と会計上の納税額の差である4000万円を法人税等調整額として減算することで、税効果会計適用後の当期利益は、10億-4億4000万円+4000万で6億円、当期の税金費用4億4000万-4000万円で4億円、となる。法人税等調整額の4000万円は、貸借対照表上は、繰延税金資産として計上される。

 このケースで、2008年に取引先が実際に倒産したとする。分かりやすくするために、2008年にA社の税前利益、実効税率が2007年と変わらないとすると、2008年の税効果会計適用前の会計上の納税額は10億円に40%をかけた4億円となる。

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