成果主義の導入に伴って“機能不全”に陥った社員の共同作業の再生。正社員と非正規社員が混在する職場の運営。経済のグローバル化への対応──。こうした要因から、リーダー育成の重要性が叫ばれている。
だが、日常的に使われているリーダーの意味するところを、我々はきちんと理解しているだろうか。人事コンサルティング会社ピープルフォーカス・コンサルティングの黒田社長はこう問いかける。
事実、リーダーの定義は時代とともに変わってきた。「唯一の定義がないのだから、自分の持論を持つことが大切だ」と黒田社長は主張。そのヒントとして、グローバル、オーセンティック、社会企業家の3つのキーワードを示す。
黒田由貴子(くろだ・ゆきこ)氏
慶応義塾大学経済学部卒業後、ソニーに入社。米ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士号)を取得。米系大手経営コンサルティング会社のシニアコンサルタントを経て、1994年から現職。企業の組織開発やリーダーシップ開発に関するコンサルティングや企業内研修を手がける。主な著書に『会社を変える会社を変わる』(ファーストプレス)など。
リーダーやリーダーシップという言葉は古くからある言葉で、我々は日常的に使っていますが、実は確固とした定義はありません。
論者の数だけ定義があると言ってもいいくらいです。それだけリーダーやリーダーシップとは、多元的で複雑なものなのです。
ですから、リーダーやリーダーシップについて唯一無二の定義を求めようとするのではなく、むしろ自分なりの考え、すなわち、持論を持つことが大事だと思います。
しかも、1つの持論を持ったらそれで満足することなく、今求められているリーダーやリーダーシップは何なのかを常に自問自答し続ける。この姿勢が重要だと考えています。
そのためにヒントになりそうな論点を提示しようと思いますが、前提としてリーダーシップに対するこれまでの議論を簡単に振り返っておきましょう。
揺れ動いてきたリーダーの定義
リーダーシップに関して1950年代頃までに主流を占めていたのは、「リーダーとは特別な素質を持った人がなるものだ」という考え方です。
これには、いくつかの疑問が提示されます。リーダーシップとは、本当に限られた人だけに与えられたものなのだろうか。リーダーになる素質とはそもそも何なのか。すべてのリーダーに共通する素質というものがあり得るのかといった具合です。
実際、ある局面においては成功を収めていたリーダーが、別の局面では同じように成功できないということがある。素質は変わらないはずなのに、局面に応じて結果が異なってしまうのはなぜなのか。こうした理論上の限界に突き当たったのです。
そこで次に出てきたのが、人間の行動に注目するアプローチです。リーダーシップは行動に表れる。ですから、リーダーシップを発揮する行動パターンを習得すれば、誰もがリーダーになれるはずだと考えたわけです。
ところが、このアプローチにも限界があった。リーダーシップの発揮につながる普遍的な行動パターンを必ずしも特定できないという問題です。状況が変われば、それに応じてリーダーも異なる行動を取らざるを得ないからです。
この限界を逆手に取って、状況に応じて柔軟に対応できることがリーダーシップであるという考えが、次に浮上しました。
ですが、どういう状況にどのような行動を取るのかという研究を進めていくと、状況というものが無数にあるために、行動のパターンも際限がなくなってしまう。その結果、明快なモデルを作れなくなり、実用性を欠くことになりました。
日本で主流になるのに10年かかった「変革リーダー」
そうした中、80年代に米国で台頭してきた考え方が、「変革のリーダーシップ」です。
英語で「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」と呼ばれるこの理論を提唱したのが、リーダー研究の第一人者として知られる米ハーバード大学経営大学院のジョン・コッター名誉教授です。
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