日経ビジネスは2009年10月に創刊40周年を迎えます。そのカウントダウン企画として、過去の記事の中から、人気シリーズ企画「誤算の研究」を毎日掲載していきます。企業戦略の現実は理論書の通りには進みません。戦略の本質は、むしろ誤算の中に隠れています。その後の成長を確実なものにした企業あり、再編の渦に巻き込まれて消滅した企業あり、ケーススタディーの対象は様々です。記事に描かれているのは過去の出来事とはいえ、時代を超えた企業経営の指針が読み取れるはずです。
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2008年10月6日号より
2006年10月からの番号継続制度で始まった携帯電話各社の陣取り合戦。
順調に契約数を伸ばしたKDDIはドコモ追撃の地位を固めるはずだった。
だが、KDDIは今、苦しんでいる。この2年間に一体何があったのか。
(中原 敬太)
「KDDIが先行していても、そのことをきちんと伝えきっていないのではないか」
9月17日に開かれた定例記者会見。およそ1時間、記者から飛ぶ厳しい質問にも表情を変えることなく、淡々と答え続けていた小野寺正社長。しかし、この質問には苦笑してこう答えるのがやっとだった。「いいご指摘なので、反省材料にさせていただきます」。
今から2年前。auブランドのKDDIは絶好調で、過半数のシェアを持つ王者NTTドコモを凌駕していた。端末の斬新さ、音楽配信「着うたフル」といったコンテンツ、そしてつながりやすさ。テレビコマーシャルで打ち出したキーワード、「顧客満足度ナンバー1」は自他共に認めていた。
さらにその年の10月から始まる番号継続制度(MNP)によって、携帯電話契約者の流動性が高まれば、KDDIの勢いはさらに加速するはず──。これが大方の予想だった。
しかし、その期待は裏切られた。事務手数料や、長期割引による引き留めがネックとなり、MNPの利用があまり進まなかったのだ。ソフトバンクが新たな料金プランを打ち出し注目を集めると、2007年5月、純増数首位の座を奪われ、これまで一度も奪い返せずにいる。今年7月にはMNPで転出者が転入者を初めて上回った。KDDIの誤算を招いたものは何だったのか。

陥った純増数のワナ
携帯電話キャリア間の競争の象徴となっている「携帯電話純増数」。毎月発表される新規加入者と解約者の差で出てくる数字だ。
今年8月を例に取ると、純増数は4社合計で約39万件と携帯電話契約数全体の0.4%に過ぎず、あくまで小さな数字。しかも、シェアが高いところは解約率が同じでも数は多く出る「不公平な指標」とも言える。
だが、勝ち負けを示すには分かりやすいため、メディアでは毎月、この数字が大きく取り上げられている。
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