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第10講 教えの喜びは、教師の特権にあらず

2008年12月26日(金)

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 その光景を見て、一瞬、目を疑った。教室では私語が厳禁のはずなのに、学生たちが教授であるカワン・スタントの存在をさして気にかける様子もなく、自由に話し合っているからだ。

 一方、スタントと言えば、ニコニコ笑いながら教室を歩き回っている。いつもは、講義の最後にヘトヘトになるくらいエネルギーを消費しながら学生たちに熱く語りかけているのに、そこで目にするスタントは明らかに違っている。

 これまで紹介してきた「スタント・メソッド」の根幹は、教える側が本気の姿勢を身体で示すことで、教えられる側のやる気に火をつける、というものだった。しかし、その教室でのスタントは、あからさまな本気の光線を、学生たちに対して、発してはいなかった。

「これまでにないキセキです」

学生たちが席を動き、自由に教えあう。スタントの講義では珍しく“うるさい教室”となる(写真:菅野 勝男、以下同)

学生たちが席を動き、自由に教え合う。スタントの講義では珍しく“うるさい教室”となる
(写真:菅野 勝男、以下同)

 「私のクラスで、新たなキセキが起こっています。これまでにないキセキです」

 スタントは、興奮を抑えきれないような語り口で、編集部に電話をかけてきた。落ちこぼれ学生たちを救い、数々の「奇跡」を起こしてきたスタントが、今まで経験したことのないような奇跡を起こしているクラスとは、どのようなものなのだろうか。

 その内容を見に出かけた。講義は、早稲田大学国際教養学部で毎週木曜日の4限に開かれている「デジタル基礎技術」。教室に足を運ぶと、上述したように、いつもと違う教室の雰囲気に驚かされた。

 スタントの講義は通常15人程度の学生のクラスが多い中、その教室には40人近い学生がびっしりと詰まっているのだ。文系の学生が多い同学部において、デジタル基礎技術はマイナーな講義だ。2年前にはたった2人の学生だった講義が、今では口コミもあり、40人を超える学生が応募するまでになった。

 スタントは常々、「欧米では1クラス15人までが当たり前。そうでないと、教える側が一人ひとりの学生をしっかりと指導していくことはできないからだ」と語っている。

 かつて、ある教授がスタントに語った。「全員を見るなんていうのは不可能だ。優秀な2割の学生だけを引っ張ればいい。それ以外は無視して構わない」と。そうした意見に対し、スタントは一線を画す。

 スタントが講義を行う際、必ず実践していたのが「caring」だ。学生一人ひとりの習熟度や学習意欲を確認しながら、落ちこぼれを作らないようケアし続ける。そのためにはクラスの人数を15人程度に絞らないと、とてもでないが、一人ひとりに手が回らない。そのはずだった。

コメント15件コメント/レビュー

一環境審査員です。企業の発展、成長を期待しながら会話しているつもりでも、受けて側では、そのようには思っていない事とが多々あります。 自分の思いが相手に伝わり、相手が納得して行動して行く一コマを教えて頂いた印象です。 事例的に審査の場で活用してみたいと思います。(2009/01/05)

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「第10講 教えの喜びは、教師の特権にあらず」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

一環境審査員です。企業の発展、成長を期待しながら会話しているつもりでも、受けて側では、そのようには思っていない事とが多々あります。 自分の思いが相手に伝わり、相手が納得して行動して行く一コマを教えて頂いた印象です。 事例的に審査の場で活用してみたいと思います。(2009/01/05)

私はデジタル基礎技術の講義に参加している学生です。このコラムのことをとても嬉しく思いながら拝読いたしました。スタントメソッドを中心に、先生と講義のことを第三者の視線で書かれているため、少し新鮮な気持ちを感じながらも、改めて先生の偉大さを確認しました。教室の中は先生と生徒たちの「真剣な顔」と「満足の笑顔」が始終見られます。ほかの生徒たちの、理解する喜びを通して自信をつけていく姿は、私にとって背中を押すものであり、教室内は私にとって知識を得る場だけでなく、心が成長できる場です。このような影響力を持つ授業はほかにありません。少しずつ、でも確実にスタント先生の力を受け取って、生徒たちは自分たちの力も強めていきます。春に講義を終えるとき、自分も含めほかの生徒たちがどのように変わっているか、とても楽しみです。(2009/01/03)

カワン教授の教え方はすばらしいと信じるが、この記事には「ミニ・カワンを作る」という内容が記されているだけで、メソッドの機微、具体的な授業の進め方が不明である。(2009/01/01)

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