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第19話「このご時世に設備投資なんてとんでもない」

2009年1月7日(水)

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前回までのあらすじ

 中堅部品メーカーのジェピーは、メーンバンクである関東ビジネス銀行に61億円もの債務を負っていた。かつて専務だった間中隆三は、ジェピーを自分の家族が経営する会社・満沢不動産の借金の保証人にしていたが、その会社は倒産。ジェピーの債務は膨らんでいた。

 ジェピーは資金繰りに窮していた。この月の25日には仕入れ代金の決済、満沢不動産の債務履行、それに借入金返済期日が待っていた。金額は20億円。なんとか融資を受けなければならないが、関東ビジネス銀行からは、新たな融資を引き出すことはできなかった。

 追い込まれた経理部長、団達也はロンドンに飛んだ。かつてシンガポールのビジネススクールで一緒に学んだ旧友、ジェームズの力を借りるためだった。


 「ダン、この車いくらしたと思う」

 「10万ポンドぐらいか…?」

 「きみに売った! 僕は1万ポンドで手に入れたんだけどね」

 1カ月前まで、このアストンマーチンはジェームズの顧客が所有していた。ところが株の暴落で一文無しになってしまい、ジェームズに1万ポンドで引き取ってほしいと頼んだというのだ。

 「僕はミニクーパーで十分だよ。でも見るに見かねてね…。この国はそれほど酷い状態なんだ」

 ジェームズが運転するアストンマーチンは高速道路を降り、大銀行、保険会社、証券取引所などが密集するロンドンの中心部に入った。この辺りはシティと呼ばれる金融の中心地だ。アストンマーチンは道路に面した小さなホテルの前で止まった。

 「さあ着いた。ここは3つ星だが、清潔だし、セキュリティーは問題ない」

 (ジェームズらしいな…)

 達也はシンガポールの留学時代を懐かしく思い出した。学生の頃もこの男はムダ金は使わなかった。だが、今は巨額のファンドの運用を任されたマネジャーだ。なのに相変わらず質素を貫いている。この男は自分が信じた道をマイペースで歩んでいるのだ。達也は嬉しかった。

 「じゃあ、2時間後にこのレストランで会おう」
 ジェームズはその店の名刺を渡した。

 「ダン、イギリスの食事を侮ってはいけないよ。きっと満足してもらえるはずだ。食後はボクの行きつけのパブで飲もう。そこで、きみの話を聞きたいと思っている」

 こう言い残して、ジェームズはホテルを後にした。

パブ

 「あんなに美味しい中華料理はシンガポール以来だ」

 達也はバーのカウンターに腰を下ろし、満足した表情で言った。

 「そうだろう。ロンドンはインド料理も、フランス料理も、イタリア料理も美味しいんだ。ただ、残念なことにこの国の料理はいまいちだけど」
 ジェームズが学生時代と同じ表情で笑った。

「「熱血!会計物語 ~経理部長、団達也が行く」」のバックナンバー

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「第19話「このご時世に設備投資なんてとんでもない」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官