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あの人には残ってもらいたいけど、
あの人には辞めてもらいたい

ポストM&Aにおける「特別な道具」。報酬制度の使い方

  • 松田 大介

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2009年1月9日(金)

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 2008年は本当に激動の年になった。その世界の激変の程度は記憶にないほどで、大きなニュースによって世の中の関心に変化が起き続けていることを肌で感じる日々である。

 今回の原稿の構成を考えていた12月中旬頃、「米国のビッグ3は破綻か救済か」というニュースが取り上げられており、国内では自動車業界を中心に、派遣社員等の非正規社員が解雇されているニュースが出ていた。

雇用者の視点と被雇用者の視点で思い浮かぶこと

 これらのニュースを見聞きして少し複雑な気分になっていた。筆者は学生時代に、あるメーカーの工場内のクリーンルームにて、学費と生活費を捻出するために働いたことがあるのだが、その工場には派遣契約のスタッフも多数いらっしゃり、日頃の世間話まで含めて大変お世話になった経験がある。それと同時に、筆者は事業会社での人事部門のマネジャー経験もあるため、解雇する側の考え、この時のために前もって整えていたであろう準備の中身が思い浮かんでしまっていた。

 ニュースでは「調整弁」という言葉がよく使われているが、筆者の頭の中にはそれとは異なる表現があった。誤解を恐れずに述べるならば、それは「根幹にあるのは人件費を固定費から変動費化させること」だった。

 この考えは、より広範囲に人事制度に関わる様々なトピックにおいて、制度策定側の思惑を一言に凝縮できることが多い。例えば企業は高業績の成長時期には人手が足りないから人材が必要だし、従業員には(ある程度は)利益を還元する必要がある。対して業績低迷時には仕事が減って人手が余ってくるし、利益を捻出するためにはコストを削減したい。となると、このような「業績変化への対応」がしやすい制度設計が策定側に必要になる。

 このような「人件費の変動費化」のためによく利用されるのが、報酬制度である。給与制度、評価制度、報酬制度と、人事制度上の核となるこれら3つにおいて、報酬制度が一番扱いやすい。特に本コラムのテーマであるM&AにおけるポストM&Aでは、報酬制度は「特別な道具」として利用されることがある。

「公平」と「平等」の違い

 もともと評価と報酬がトピックの時は、通常は制度の中身よりもその評価方法(何に対してどのように評価するか)に焦点が当てられるのだが、評価は人間がやる以上、100%満足なものはまずない。評価方法に関する議論が発散しないようにするだけでも大変な作業になることが多い。

 合併した企業の中は特に大変である。もともと、ポストM&Aの現場では、関係者や評価者の様々な思惑が働いて、評価が「平等」になり、「公平と平等は違う」という重要なことは忘れられてしまうことがある。両者の違いは、公平とは「判断が偏っていないこと」、それに対して平等とは「差別することなく等しく扱うこと」である。例を挙げれば、頑張っているスタッフとやる気のないスタッフを評価する立場になったときは、正論から言えば「平等」に評価するのではなくて「公平」に評価すべき、というものである。

 ただし、ポストM&Aの混乱状態では、評価者は被評価者のことはまだ詳しく知らないというだけでなく、合併後の新会社の従業員の給与格差を役職毎に「ならす(=平準化する)」ために、公平ではない「平等」な評価が行われてしまうことも多いだろう。

報酬制度は人事上の課題解決のために利用される

 ここで報酬制度に関するトピックとして、ポストM&Aならではの特徴を2つ挙げたい。1つはこのような特徴を有する面倒で複雑なモノを、その他の制度とともに統合しなければならないという大きな難題があること(詳細は前回)、そしてもう1つは、こんなモノでも活用すれば人事上の課題を解決できるのではないか、と検討されやすいことである。

 具体的には、それは「合併後の新会社における余剰人員削減策」というような「人事上の課題」への活用である。ポストM&Aでは理由を付けて、各種制度の変更がしやすい。新しい会社で組織もまだ固まっておらず、現場の結束もまだされていない状態だからこそ、やりやすいのである。

 報酬制度は使い手によってどのようにでも結果が変わるものだとつくづく思う。ポストM&Aの現場では、報酬制度で人員余剰状態を調整することができてしまう。例としてこんなケースがあった。

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