国際展開を進める日本企業の人事担当者の最重要課題は、優秀な現地の人材の獲得にある。ところが実態は、優秀な人材を確保するどころか、いかに辞められないかに腐心する企業が少なくない。
「権限が与えられない」「キャリアパスが見えない」…。現地の優秀な人材がこぼす不満は、日本的人事制度を海外拠点にも強要してきたツケでもある。
こうした点を修正し、人材育成に本腰を入れ始めているのが、三井住友・三菱東京UFJ・みずほコーポレートの3行だ。そのグローバル人材つなぎとめの施策とは。
2007年、1人当たりGDP(国内総生産)で、日本を抜いたシンガポール。目をむくような斬新な建築、雲をも突き抜けんばかりに林立する高層ビル群。大通りは間断なく車が流れ、オフィスビルは高級感が漂う豪勢さを誇る。アジアで最も豊かな国となったシンガポールは、多くのグローバル企業がアジア太平洋の拠点を置く場所でもある。

シンガポールにある三井住友銀行のアジア人材開発拠点。10カ国・地域の現地スタッフが定期的に研修を受ける
昨年、その金融街の一角にあるオフィスビルで、ある日本企業の人材育成プログラムが始動した。アジア太平洋地域10カ国・11拠点に支店を持ち、現地スタッフ約1700人を抱える三井住友銀行である。昨年5月に、アジアの現地スタッフを対象にした研修を実施する専門の研修を開始。アジア各国・地域の現地社員を集め、数週間に1回の割合で研修を続けている。
その最大の狙いは、現地社員の能力の底上げにある。「新興国の多くでは金融に精通した人材が少ない。人材を育成して、全体のレベルアップを図る必要がある」と、国際統括部の川端信之副部長は言う。研修では、金融業務を中心に、リーダーシップやコミュニケーションなどのカリキュラムが組まれている。
ただし、三井住友銀行が人材育成に力を入れている理由は、これだけではない。
日本企業離れの食い止めを狙う
現地の人材に嫌われる日本企業――。三井住友銀行は、ある危機感を募らせている。それは、現地の優秀な人材がブランド力のある欧米系の金融機関に次々と奪われている現実だ。
「シティバンク、スタンダードチャータード、HSBCなど、現地の優秀な人材はまず日本以外の金融機関を目指す。初めから日本企業を、という人材は少ない」と、シンガポールの人材派遣会社社長は言う。現地の人材の多くは、日本企業を第1志望にしないのである。
その理由は、はっきりとしている。「日本固有の人事制度を押しつけられることに耐えられない」(前出の人材派遣会社社長)のだ。「昇進しても決して日本人支社長より偉くなれない」「仕事の権限がとても限定的」「給与体系が日本人とは違う」…。こうした点を敬遠し、次々と優秀な社員が抜けてゆく。いわば、日本企業の孤立が深刻化していたのである。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




