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第11講 やる気にもリバウンドがある

2009年1月17日(土)

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 「先生、ボクの変わる姿を見てください。今日から物語は始まります」

 2008年11月13日、早稲田大学国際教養学部教授のカワン・スタントは「デジタル基礎技術」7回目の講義後にある男子学生が書いた感想文に、涙した。

 「決して成績が優秀でもなく、授業の遅刻や欠席も多かった彼が、人生の主人公として『今日から物語が始まる』という素晴らしい言葉を書いてきた。諦めずに、投げ出さずに彼と向かってきたことは無駄ではなかった」。スタントは心の中で言葉を震わせていた。

 毎回の講義の後に必ず学生に「3行感想文」を書かせるのが、学生の心に火をつける「スタント・メソッド」の1つだ。学生が講義で何を感じ、どう変化していくのかを自分の言葉で書かせる。

時には厳しく指導するが、その後はきちんと一人ひとりのケアを忘れない

時には厳しく指導するが、その後はきちんと一人ひとりのケアを忘れない
(写真:菅野勝男、以下同じ)

 短い感想文から、彼ら彼女らがどのような成長を遂げ、またどのような助けを求めているのかを読み解く。それが、スタントが常に心がける、学生一人ひとりへの「ケアリング」につながるのだ。次の講義や普段の学生たちとのコミュニケーションに生かされる。

 スタントは、1993年に日本で教鞭を執るようになって以来、ずっと学生に授業を終えた後に、その日の感想文を提出させてきた。15年を超える期間に提出された感想文の数は恐らく何千枚、もしかしたら1万枚を超えるかもしれない。

 大量の数の感想文を読みながら、スタントはこれまで数え切れないほどの感動と落胆を経験してきたが、涙まで流すことはほとんどなかった。スタントは、なぜその1枚の感想文に涙したのか。

「なぜ遅れた。君の名前は…」

 冒頭の感想文を書いた男子学生は、その日、デジタル基礎技術の講義に大幅に遅刻してきた。スタントはその男子学生が教室に入り最後列の席に着いた時、わざわざ講義を中断して彼の元まで歩み寄り、全員の前で激しく怒った。

 「なぜ遅れた。君の名前は。講義を受ける権利があなたにはあるから教室内にいることは許すが、ボクはあなたを欠席扱いにする」

 突然の剣幕に、彼は驚きの表情を見せるが、スタントの言葉に反発することはなく、教室に残った。

 実はこの学生、2年前にスタントの別の講義を受講していた学生だった。彼は当時から講義には遅刻や欠席が多い“常習犯”だった。その当時は、スタントもただ厳しく接するだけではなく、「このままなら単位を認められないよ」と言い聞かせるように注意していた。

注意しても繰り返す元のもくあみ

 しかし、そんなスタントの気配りにかかわらず、その学生は、やる気を見せたかと思うと、また遅刻や欠席を重ねてしまう状況だった。それでもスタントは忍耐強く彼に注意を続けていた。しかし、直後はやる気を示しても、時間が経つと元のもくあみだった。

 これをスタントは「やる気のリバウンド」と呼ぶ。ダイエットに挑戦し、1つ目標に近づいたところで気を抜いてしまい、結果的に元の体重に戻ってしまったり、逆にそれ以上の体重にまで太ってしまったりするリバウンド。これは「やる気」にも通ずるとスタントは語る。

 「ダイエットも勉強も仕事だってみんな同じ。最初は嫌で動き出すまでに労力が必要だが、一定段階を超えると成果が表れて楽しくなってくる。1回行動を起こしたところで満足してはいけない。行動に習慣性を持たせなければいけない」

コメント7件コメント/レビュー

「スタント・メソッド」の一つである「心に火をつける」をよく実践し、実例として2年前「落ちこぼれ」だった学生の心を育てて、救いあげたのは実に美しい!メソッドをただ真似ではだめで、やはり「本気」でないと人を育たないでしょう。(2009/01/25)

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「第11講 やる気にもリバウンドがある」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「スタント・メソッド」の一つである「心に火をつける」をよく実践し、実例として2年前「落ちこぼれ」だった学生の心を育てて、救いあげたのは実に美しい!メソッドをただ真似ではだめで、やはり「本気」でないと人を育たないでしょう。(2009/01/25)

この先生のすごいところがたくさんある。みんながやりたがらないことを一所懸命に、一歩一歩に取りかかって、しかも世間一般「無理」、「無駄」と思われる人、「できない人」、「やる気のない」たちもターゲットにし、業績を上げているのをスゴイ。(2009/01/25)

やる気を瞬間から習慣へということにすごく感心しています。やる気を引出すより続いて維持することがもっと大事です。そんなこともできる先生なんて本当に感心しています。まわりにそんな方がいれば幸いです。(2009/01/25)

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