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社員5人の蔵元、「こだわりの日本酒」で中国市場を拓く

中谷酒造(奈良県大和郡山市)【前編】

  • 田原 真司

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2009年2月3日(火)

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 天津市郊外にある経済技術開発区。トヨタ自動車、パナソニック、キヤノンなど日本の大手製造業の工場が数多く進出している巨大な工業団地の一角に、日本酒好きの駐在員たちの憩いの場となっている和食店「古狸庵」がある。

 落ち着いた雰囲気の店内では、京都出身のオーナ・シェフ、古江進二郎さんが腕によりをかけて味も見た目も繊細な日本料理をふるまってくれる。刺身や焼き物に使う魚介類の多くは、日本から空輸された新鮮なもの。野菜類は地元産だが、古江さんがひとつひとつ吟味したこだわりの素材ばかりだ。

 この季節、天津は昼間でも気温2~3度の寒さ。一日の仕事を終えた後、古江さんの料理を肴に飲む熱燗は、日本酒党にはたまらない。ここが中国であることを忘れさせるような、ほっとするひとときだ。

天津で醸されるぜいたくな純米酒

天津の醸造所内で純米吟醸酒のもろみの発酵具合を確認する中谷正人社長 醸造所は天津市郊外の工業団地にある

天津の醸造所内で純米吟醸酒のもろみの発酵具合を確認する中谷正人社長(上)。醸造所は天津市郊外の工業団地にある(下)

 そんな古狸庵では、カウンター席の向かい側の棚に「朝香」という見慣れない銘柄の酒瓶がずらりと並んでいる。奈良県大和郡山市の清酒メーカー、中谷酒造が、天津で現地生産している日本酒だ。

 朝香には吟醸、大吟醸、にごり酒など豊富な種類があり、そのすべてが米と米麹だけを原料に仕込んだ純米酒。中国には日本酒を生産するメーカーがいくつかあるが、醸造用アルコールや糖類をまったく加えない純米酒に特化して生産しているのは中谷酒造だけである。

 味と品質は折り紙つき。古狸庵のようなこだわりの和食店で、日本人の常連客に愛飲されているのが何よりの証左だ。天津市や隣の河北省では、戦前から日本と同じジャポニカ種のコメが栽培されている。中谷酒造ではこのコメを専用の精米機で60%以下(純米吟醸の場合。大吟醸は35%以下)までぜいたくに磨き、日本の清酒酵母を用いて醸造している。

 中国の清酒市場はまだまだニッチで、市場規模などの正確なデータはない。だが、朝香は間違いなくそのリーディング・ブランドだ。中谷酒造は醸造所のある天津のほか、北京、上海、広州など主要10都市に営業拠点を構え、数千店もの日本料理店と取り引きしている。同社の中谷正人社長は、「ある程度本格的な和食を提供している店なら、朝香を置いていないところはほとんどない」と胸を張る。

事業規模も知名度も日本と中国が逆転

 高度経済成長と日本食ブームの波に乗り、朝香の売れ行きは好調だ。2008年の天津での生産量は、前年比2割増の約3000石(約540キロリットル)に達した。損益も、2000年に黒字化してから毎年増収増益を続けている。

 一方、中谷酒造の日本での生産量は年間約500石(約90キロリットル)に過ぎず、取引先もつきあいの長い少数の卸に限られている。日本では「萬穣」という銘柄を主力にしているが、一般の和食店や酒販店で見かけることはほとんどない。

 清酒という日本の伝統文化に密着した商品にもかかわらず、商売の規模でも銘柄の知名度でも、日本と中国がすっかり“逆転”しているのだ。

 中谷酒造の日本の従業員数はわずか5人。典型的な地方の家族経営の蔵元である。それがなぜ、中国で清酒のリーディング・ブランドに成長できたのか。詳しくは後述するが、背景には「中国で本物の日本酒を造る」ことにこだわり続けた中谷社長のチャレンジ精神がある。

 日本の地方では今、数多くの中小零細企業が未曾有の金融危機に凍えている。酒造業界では、消費者の日本酒離れや後継者難も重なり、廃業に追い込まれる蔵元が後を絶たない。しかし、どんなに厳しい時代にも、生き抜くための突破口を開くのはチャレンジ精神あふれる経営者たちだ。もちろん、すべての中小企業が同じことをできるわけではないが、日本ではなく中国に市場を求めた中谷社長の経験から、学べることは多いはずだ。

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