世界同時不況が日本の自動車業界を直撃する。トヨタ自動車や日産自動車などの大手メーカーも大幅な赤字に転落せざるを得ない危機的な状況だ。今回の異変をいちはやく感じ、対策に乗り出した鈴木修会長。
「30年間右肩上がりで社内に安泰ムードを招いてしまった」 昨年12月には社長を兼務する新体制を敷き、再び現場でも指揮を執り始めた。
「工場にはカネが落ちている」――工場から発想する“独自の経営”で、これまでも時代の先行く新商品、画期的なモノづくりを実現してきた。
「危機はチャンスだ」。鈴木会長は今回の危機にどう立ち向かおうとしているのか。
サブプライム問題が発覚する前から在庫調整を指示
―― まず、今回の世界同時不況についてお伺いします。スズキは、米国のサブプライムローン問題に端を発した危機が明らかになるよりも前、一昨年から在庫調整をすすめ、2007年から2008年にかけて約1000億円の在庫を減らしています。
販売実績はまだ良かった時期だけに、スズキの対応の早さは自動車業界では驚きをもって語られています。
なぜ、鈴木修・会長兼社長(以下鈴木会長)には分かったのですか。何を見て異変に気がつかれたのですか。
鈴木修会長 (写真:大西 成明)
鈴木修会長 「何で分かったんですか」とよく聞かれるんですが、異変は論理的に説明できるもんじゃない。勘です。“勘ピューター”です。
一昨年、昨年も上期までは数字はいいんです。昨年は主力の軽自動車「ワゴンR」は良かった。実際、軽自動車の販売台数で5年連続1位になり、振り返ってみれば「2008年普通車も含めた全車種の中で最も売れたクルマ」にもなった。
でも、「メーカー別の国内販売台数ではスズキは日産を抜き、トヨタに次ぐ第2位の地位になりましたね」とか「すごいね、すごいね、修さん」とか、おだてられはじめると、だんだん「なんか違うな」と思うんだな、俺は(笑)。
「国内の販売台数が2位になりました」と言われても「でも利益で見ればどうか」と考えます。「今期も他社が赤字でも黒字ですね」と言われても「たまたま」としか思えません。そもそも、うちはトヨタじゃない。中小企業なんだから(笑)。どんな好調な状況でも“一歩引いて見る”のがクセになっているんです。
―― 今回書かれた著書のタイトルも『俺は、中小企業のおやじ』。連結売上高約3兆5000億円の中小企業というのも不思議な気がします(笑)。
鈴木修会長 3兆5000億円でもうちは中小企業です。
昔は、大企業といえば資本金や人員数、売上高、歴史、利益といった物差しで判断されてきた。でも、現在はそうした物差しではなく、自らの業界でシェアがナンバーワンかどうか、すなわちプライスリーダーであるかどうかが肝心なんです。
ですから、小さな規模でも強い個性や特徴を備えた特定商品で、極めて高い市場シェアを持つ会社こそが大企業です。
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