4月、今年も大学には新入生が入ってくる。大学生ともなれば、それなりの国語力は身についていると考えるのが自然だろう。
だが、知っている漢字がどんなに増えていても、また受験勉強の中で古文や漢文も含めて様々な作品を読んでこようとも、そうした経験だけで、相手の考えを理解し、自分の思いを正確に伝える力を十分に身につけているとは言えない。
長崎国際大学薬学部の教授、荒川正幸は今年も新入生に読み書きの能力を向上させる取り組みをしようと考えている。荒川は昨年、1年生の学生を対象にある実験を行った。最初の講義で学生たちに小論文を読ませて、中身の概要をまとめて書かせたのだ。
その目的を荒川は「コミュニケーションスキルの把握と、向上のため」と語る。大学生が普段、新聞や本などを読まなくなったと言われて久しい。普段から物を読んで書かれた内容を理解する機会に乏しい学生たちは、小論文を読み解くのにまず時間がかかる。加えて、理解した内容を自分の言葉で表現するのは、読む以上に多くの時間を費やしがちだ。
「動いている情報」には慣れていても「止まっている情報」は…

「今の学生は、動いている情報を捕まえるのはうまいが、止まっている情報を読み解くことが苦手なようだ」と荒川は指摘する。動いている情報とは、ブログやインターネットの掲示板、短いニュース記事にあるような、何を話題にしているのか、深く考察しなくても分かり、また短時間で情報の価値がなくなってしまうようなものを指す。
一方、止まっている情報とは、小説や随筆、論文、さらにニュースでも短い時事情報ではなく背景や理由なども考察された解説記事や1つのテーマを掘り下げた特集記事などで、情報の価値が瞬時に消えてしまわないものだ。
最近の学生は携帯のメールで頻繁に連絡を取り合い、お得で、面白い情報を取ることには慣れている。それはそれで1つの技能と言えるが、その技能を磨くのに時間を費やしている分、止まった情報と向き合う機会が減ってしまっているのかもしれない。
大学生はもう大人。そんな大人に対して、今さら読み書きの指導をする必要があるのかという声もある。しかし、コミュニケーション能力の基礎を固めるためには、止まった情報と格闘する機会を設けることが不可欠だと荒川は感じている。
半年で時間が半分に
荒川の思いは、確かに一理あるようだ。というのも昨年、この実験を繰り返すことによって学生の読解力と表現力は劇的に向上したからだ。回を重ねるうちに学生たちは読む力、まとめる力、書く力すべてが向上し、半年後には小論文を読んでまとめる時間は半減したという。
学生たちは目に見えるカタチで自分たちの能力の向上に気づくことができ、その成功体験からまた新たに知見を広げようという内発的動機が生まれるのだという。
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