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プロローグ:「社員稼業」

2009年4月8日(水)

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 今から8年前の2001年、経営危機とも言える状況に陥った松下電器産業(現パナソニック)は社員、OBをも巻き込むリストラに取り組む一方で、新しいタネまきをしていた。

 パナソニック・スピンアップ・ファンド(PSUF)。同社の創業者である松下幸之助のような起業家精神を持つ社員のアイデアに投資する社内ベンチャー制度を始めていた。事業案件の審査には社外の専門家を入れ、立ち上がった後も経営のプロにチェックさせるなど、社内ベンチャー制度特有の甘さを排除。さらに、新会社は3年で黒字化、5年で累損を一掃しなければ解散させるのが条件だった。

 これまでに571件の応募があり29社が設立した。その中で生き残った会社は・・・。

 パナソニックから生まれたベンチャーたちを追う。


 PSUF出身のベンチャー社長に注目した理由は3つあります。

中長期的な視点に立った経営判断は正しかったのか

 経営理念以外聖域はない――。2001年の松下電器産業(現パナソニック)の改革は高い関心を集めました。「45歳以上の社員は要らない」「OBも一緒にリストラの苦労を」といった刺激的な言葉が飛び交ったリストラは世間でも話題を集めました。もはや社内の新しい事業に挑戦することなど無理ではないか。当時の社員のマインドは委縮していました。

 そんな“空気”を真っ向から打ち破るべく導入したのがこの社内ベンチャー制度だったのです。

パナソニック・スピンアップ・ファンドのホームページ
(画像をクリックするとページへジャンプします)

 制度の目的は「起業家マインドの具現化と自由に挑戦できる企業風土の醸成」でした。導入当初は、具体的な例もなく取り上げづらかったのですが、8年立ちました。厳しい時期にも中長期の視点で意思決定をし継続的に実践してきた姿勢には見習うべきものがあります。実際、自由に挑戦できる風土は生まれたのでしょうか。社員が目指したいと思う実例は何件か出てきたのでしょうか。この制度を通じて振り返ることで、「中長期的な視点に立った経営力」を見ていきたい。これが第1の理由です。

珍しい理念ありきのベンチャー

 もう1つの理由は、「経営理念を持つベンチャー企業」への興味です。ベンチャー経営者たるもの自分で始めた事業への関心がないものはいません。が、会社の設立当初から確固たる経営理念を確立している社長は少ないのです。乱暴な言い方かもしれませんが、理念よりも最初は明日のおカネ。会社を潰してはならないと考える経営者にとっては「まずは今日・明日の仕事が大事」なのです。

 ところが、実際にヒトを雇い、気持ちよく働いてもらおうと考え出すと、会社で働く意義が必要になってきます。社長はなぜ働くのか。社員はどうすればやる気になってくれるのか。「仕事の意味、人生の味」を求めていくと経営理念に辿り着いていきます。

 日経ビジネスオンラインでは「強い会社は社員が偉い」などで理念を重視する新しいベンチャーを取り上げていますが、そうしたベンチャーの中でも今回のPSUFベンチャーたちはちょっと変わっています。

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「プロローグ:「社員稼業」」の著者

瀬川 明秀

瀬川 明秀(せがわ・あきひで)

日経ビジネス副編集長

日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ビジネスアソシエなどを経て、日経ビジネスオンライン開設後はオンライン編集がメインの業務。2012年からは日経BPビジョナリー経営研究所の研究員を兼務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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