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「死んだように静か」な売り場はビジネスモデルが作る

売り場びと対談:『新宿駅最後の小さなお店ベルク』×『東急ハンズの秘密』【前編】

  • 和田 けんじ

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2009年4月20日(月)

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この連載が単行本になりました。「“元祖”ロングテール 東急ハンズの秘密」からどうぞ

 未曾有の不況といわれる中、多くの流通業やサービス業が苦境に陥っている。

 報道されるのは、大手スーパーの熾烈な値下げ合戦や、低価格ファストフードチェーンの出店増ばかり。しかし、重要なのは価格だけなのだろうか。お客のサイフの紐をゆるめられないのは、消費が冷え込んでいるからなのだろうか。

 「決してそうではない!」というふたりの著者がいる。ひとりは『新宿駅最後の小さなお店ベルク』を書いた井野朋也さん。井野さんは、新宿駅徒歩15秒、わずか15坪の店舗で駅ビル一の坪効率を誇る飲食店「ベルク」の店長。和田さんは「元祖ロングテール」とも言うべき、過剰な品揃えで強烈な存在感を誇った東急ハンズでの経験を語った『東急ハンズの秘密』を出版したばかり。

 ふたりは、ともに現場の経験から、「いまの小売業・サービス業は消費者の根本的な欲求に応えられていない」と言い切る。ふたりの対談から、大不況下でも元気な「売れる店」の秘密が見えてくる。

※和田けんじさんの日経ビジネスオンライン連載「東急ハンズの秘密 過剰な品揃えビジネスの本質」は、こちらから

* * * * * *

――新宿の駅ビルで最も坪効率がいい店舗が、大手チェーンではなく個人店だというのは意外かもしれません。どうしてわずか15坪のお店に1日1500人もの人が押し寄せるのでしょうか。

新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには?
井野朋也 著、ブルース・インターアクションズ、1680円(5%税込み)、2008年7月発売

井野 もちろん、JR新宿駅東口を出てすぐという立地が大きいわけですが、大勢の人が一目散に歩いている連絡通路からはちょっと奥まっているので、実は気づきにくいところにあります。つまり、お客さんの多くは、リピーターです。

 大手チェーンじゃないセルフサービスのファストフードなので、最初の1年はどうしてもお客さんが入らなかった。リピーターが増えて、今では休日のほうが人が多いくらいです。わざわざ来てくださるんですよ。何回も足を運んでもらえるのは、出社前のコーヒー1杯、ランチ、帰宅前のビールとか、いろんな使い方ができるからかもしれません。

和田 先日お店に寄らせてもらったんですけど、すごく回転が早くてびっくりしました。次から次へとお客さんがいらして。あとたくさんのことにトライされていますよね。ポップとか、職人さんの紹介とか、壁で写真展をやったたり。

新宿駅東口徒歩15秒にある、15坪のベルクの店内は活気にあふれる(写真:迫川尚子)

井野 1人客が多いので、退屈しないようにベルク通信という新聞も用意しています。客層は老若男女問わずという感じなのですが、メニューがどんどん増えて100種類以上。お客さんから「こんなものが食べたい」って提案を受けることもあるんですよ。

「何が欲しいか」なんて、分かるわけがない

和田 それは東急ハンズも同じですよ。「こんな商品ありませんか?」って聞かれて、メーカーと問屋さんを調べまくる。連載にも書きましたけど、お客さんのリクエストで「湯たんぽのゴムパッキン」を仕入れて定番商品にしたこともあります。

【連載】ニーズは「仕入れる」もの。その結果が店頭になる

――お客さんから「これが食べたい」「あれが欲しい」と要望が持ち込まれる店というのは、景気が悪くなっても強いですよね。どうしたらそこまで支持されるのでしょうか。

井野朋也(いの ともや)
1960年新宿生まれ。新宿育ち。早稲田大学社会科学部卒業後、塾講師を経て、1990年より新宿駅ビル地下のビア&カフェ「ベルク(BERG)」の経営者・店長。朝4時に起き、夜9時には眠くなる毎日。尊敬する飲食店は、赤羽の「まるます家」。

和田けんじ (わだ けんじ)
消費者にちゃんとモノ売る研究所・主席研究員。1959年生まれ、愛媛県出身。愛媛県立南宇和高校を卒業後、三和銀行に入行。その後、趣味である音楽の知識を生かすべくレコードチェーン店に入社し、1983年には大阪・千日前でロックとジャズの専門店を展開。1991年、東急ハンズに入社。仕入れ販売員として家具・素材・内装材・バストイレ用品・収納用品・アウトドア用品等を担当。2007年に退社。「消費者にちゃんとモノ売る研究所」主席研究員。

井野 最初に心がけていたのは、コーヒーとビールをメインにした「早くて、安くて、うまい店」ということだけ。どう使うかはお客さんに決めていただこうと。すると、「メニューのこの料理とこの料理を混ぜてくれない?」なんてリクエストがくるようになって。で、実際、言われたとおりに混ぜてみたらすごくおいしくて、メニューに即、採用したり。

和田 つまり、お客さんがどんな要望を持っているのかなんてわからないんです。だから、店員は自分が「僕だったらこういうのが欲しい、だってこう使いたいから」と提案するために商品を仕入れて、陳列します。お客さんはそれを見て、「ああ、そういう商品があるなら」といって自分の欲しいものを伝えてくれるんです。例えば、石鹸を戻した時に滑ってこぼれない深さのソープディッシュが欲しい、とか。店員とお客さんでこんなキャッチボールが始まらないと、そういう関係は作れないですよね。

井野 僕は客として毎日のようにハンズに通っていた時期があるんですよ。ベルクのお店を始めてから、10年くらいは家の中がぐちゃぐちゃで、片付けられなくて。これはいけないと思ってハンズに通いつめて、収納オタクみたいになりました(笑)。何も買わなくてもハンズに行って、いろいろ見て。ハンズなら何かあるだろうと思っていましたね。つまり、欲しい物が決まってからハンズに行くんじゃなくて、ハンズに自分の欲しい物を教えてもらいに行く(笑)。

和田 そういうふうに「欲しいものが分からないけれど、とにかくハンズに行けば何かあるだろう」と思ってもらうためには、実は焦点がハッキリと合った品揃えだとだめなんですよね。ピントが絞り込まれ過ぎると、「自分の欲しいものはここにはないな」と思ったお客さんは2度と来なくなる。いろんな好みや目的を持ったお客さんのニーズを想像して、提案する方も試行錯誤して並べるわけだから、品揃えとしては少し焦点がハッキリしない、ぼやっとした感じになるわけですよ。ここはストライクかボールか分からないけど、とにかく球を投げてみよう、みたいなゾーンがある。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官