最近、「デザインに今の苦境を乗り越えるヒントがあるのでは」という期待をもって、製品戦略の際にデザインに関するものがクローズアップされるようになってきている。米アップルのiPodやMacBook、サイクロン方式の掃除機の英ダイソンなどはその代表例だ。
そんな事例を聞くと、自社の製品についてもデザイン志向の製品を投入したくなるものではないだろうか。
今回は、仮に、そんな状況で「デザイン」に関する議論が行われたら、どんな話が展開されるのか、というところからスタートしたい。この議論の参加者には事前にアイデアを準備してもらっている。さて、参加者はどのような視点で、アイデアを持ってくるだろうか。これから、実際に筆者が参加したことがある、とある議論の発言を再現する。
「デザイン志向の新製品開発」で議論がされる時
この議論の参加者だった下村氏(仮名)は、グッドデザイン賞を受賞した三菱重工業の印刷機の例を持ってきた。この機械の利用者が愛着を持って手入れをマメにするようになったため、結果として設備の稼働率が上がったり、工場をきれいにしようという意識が向上して5Sの達成度が向上したりするといった話を聞いたそうである。彼は生産ラインの現場での勤務経験があったため、このような話に思わず意識が向いたようだった。
「工場の中にある産業機械は、性能が発揮できれば十分だ」という発想からは、想定できない効果を、デザインを強調することで発揮することができるのでは、というのがこの下村氏の主張だった。
この話を聞いた参加者の山沢氏(仮名)は、「ダイソンの掃除機も興味深いんですよね」と言った。彼は商品企画部門での経歴が長い。先日、地下鉄の銀座駅のとある場所でダイソンの掃除機が分解されているディスプレーを見て、ダイソンの話題を持ってきていた。そんな彼が述べたのは、ダイソンの掃除機では、吸引したゴミが見えるような製品設計がされていることだった。
ゴミが見えることで、利用者がこまめにゴミを捨て始めたのではないか、というのが山沢氏の考えだった。「ゴミをこまめに捨てることで、ゴミによる目詰まりが解消されて吸塵力が落ちない」という商品設計の視点でデザインについて意見を述べたのである。
技術志向とデザイン志向の違い
「国によって、好まれるデザインには違いがあるそうなんです」。これまでの議論の流れとは少し違った視点で述べたのは、大石氏(仮名)だった。彼は、製造業の生産技術に詳しく、製品のデザインから実際に製品が量産体制に入るまでのことに意識が向いていた。
「海外を意識してデザイン志向だけで製品を作ろうとしてもうまくいかないし、機能だけで国による好みのデザインを無視すると、海外市場では期待した通りの販売目標に届かないこともあるそうなんですよね」
確かに、デザインと機能が連携していないと、そもそも発売に間に合うことさえ危ない時もある。例えば、ある総合電器メーカーの家電製品では、デザインを決めて製品の写真等をメディアにリリースした後に、製品内の基板等の配置からCPU(中央演算処理装置)の放熱の問題にどうにも対処できなくなって、期限通りに発売できるかどうか、という状況に直面した。
製品デザインを変えれば放熱問題に対処できるのだが、デザイン担当部門もリリース後だから製品デザイン変更については譲らない。この製品では発売直前まで大変苦労したと聞いている。
発言から見えてくること
以上、参加者たちの発言を再現してみたが、読者は何を感じられただろうか。デザインという切り口で、議論のネタになるものを持ってきていたが、それは当然各個人の経験から生まれた視点による分別がされていたものだった。
もともと「デザインの好みは人による」と言われている。だから、センスが必要、いや嗜好的なところがあるからダメ、そう言いながら隣のアップルの製品の成功を見て「やっぱりデザインも重要だよね」と言ってしまう。ダイソンの製品のデザインと、衣料品のデザインでは、製品化につなげるまでに検討することが全く異なる。つまり同じデザインという一括りで考えるものではない。こんなことは当たり前だと思われるだろうが、「デザインを製品戦略に絡めて議論がされる時は、この区別がなかなかされていない」というのが筆者らの実感である。
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シスコシステムズ、マーケティング企業を経てプログレス・パートナーズに参画。事業戦略、新製品戦略、マーケティング戦略、M&A戦略の策定支援の他、M&Aにおけるデューデリジェンス、企業価値評価、ポストM&AのIT統合や人事制度策定支援等の経験がある。執筆活動にNBオンラインの『
製造業における設計開発業務コンサルティングに従事後、ISIDやSAP、NTTデータビジネスコンサルティングにてPLMコンサルティングビジネスの立ち上げに携わる。大手自動車及び部品メーカー、重工業メーカー等の製造業における設計・生産領域における多くの業務改革プロジェクトを手がける。著者『

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