◎前回までのあらすじ
ジェピー社長の財部益男は、アメリカの電子部品大手、UEPCのCEO、マイケル・ウッズの招待を受け、ニューヨークに向かった。益男がニューヨークのUEPCトップと面会することは、ジェピー社内では誰も知らなかった。
益男はマイケルの自宅で催されたパーティー会場に行った。まるでハリウッド映画に出てくるような豪華なパーティーには、有名な音楽家や野球選手も集っていた。益男はもてはやされ、すっかり夢見心地になっていた。
元専務の間中隆三とともにジェピーを追われた沢口萌は、銀座の高級クラブに勤めながら密かに“復讐”の時を待っていた。萌はアメリカの投資ファンドの日本支社長であるリンダと東京駅に隣接するビルの20階にあるホテルのロビーで初めて顔を合わせていた。
東京駅近くのホテルロビー
萌はリンダがなぜ達也に敵意をむき出しにするのか、興味を覚えた。
「リンダさん、質問していいかしら」
萌は穏やかに言った。
「なぜ、そんなに団さんが嫌いなんですか?」
「あの人のことが嫌い? そうじゃない。今でも好きでたまらない。だから余計に許せないの」
2人はロビー階にあるラウンジにいた。リンダは、窓の外に広がる景色を眺めながら話を続けた。
「萌さん。私の夢はアジアの金融を牛耳ることだった。だから、大学院はハーバードではなくシンガポール大学を選んだ。そこには私よりずっと優秀な男がいた。それがダンだった。彼と付き合ううちに、上海と東京とシンガポールを結んだネットワークが見えてきたと思ったわ」
リンダは目を輝かせた。
「わたし、こう見えても北京大学で最優秀賞を取ったのよ。それに、ミス中国に選ばれたこともある。欲しいものは何でも手に入った。あらゆる男性たちは私の望みを叶えようと必死だったわ。でも、私の目にかなった人はいなかった…」
「団さんと会って人生が変わったのね」
萌が聞くと、リンダは「認めたくないけどね」と言ってかすかに口元に笑みを浮かべた。
「私とダンが組めばどんな夢でも実現する、と思ったわ。それなのに彼は宇佐見とかいう老人に騙されて、名もない日本のスモールカンパニーに就職してしまった。信じられなかったわ。私が初めて心を開いた男は、私を裏切り、去ってしまった」
リンダは唇を噛んだ。
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