「「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」」

第40話「会社は上昇基調に乗ってしまえば、凡庸な者にも社長は務まる」

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2009年6月24日(水)

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前回までのあらすじ

 ジェピー創業者の未亡人の財部ふみが長らく心臓病を患い闘病中だった。ふみはジェピーの大株主でもあった。

 ジェピー社長で、ふみの息子である益男は、アメリカ出張中にふみが危篤に陥ったことを聞き、急遽、帰国した。大手電子部品会社UEPCとの間で、ジェピーに不利な合意書に署名する寸前だった。

 ジェピー元専務の間中隆三は、当時の経理部員、沢口萌と共謀して会社のカネを横領したとされ、萌とともに会社を追われていた。間中は益男の従兄弟であり、専務時代は益男の右腕としてジェピーを牛耳っていた。

 ジェピー長野工場では、経理部長の団達也のアイデアが功を奏し、工場の4ラインすべてが黒字化。1カ月間の在庫滞留資金量は3割ほど減少した。売り上げも利益も増えたために、運転資金は減少した。

 さらに、ロボット作りの天才、金子修平が作ったロボットが完成。アジア向けに輸出されようとしていた。

 携帯電話が鳴った。間中は黙ったまま相手の話を聞いた。

 「そうか。きみもつらいだろう。でも、今が正念場だ。陰ながらきみを応援している」

 ふみが息を引き取ったのだ。連絡をしてきたのは益男だった。叔母が亡くなったというのに、間中は笑いがこぼれそうになった。益男はこんなことを言った。

 「間中さんには本当に、ご迷惑をおかけしました」

 達也らの主張を鵜呑みにして、ジェピーから追放したことを詫びたのだ。そして、「団を入社させたことが間違いでした」と続けた。

 益男からは、ジェピーが存続しているのは、自分と母親の信用と財産によるものとの思いが伝わってきた。達也の功績など、微塵にも感じてはいないと思われた。間中は益男の性格を誰よりも理解していた。やっと、事態は間中の予想した方向に進み出した。

 「益男君。きみの言う通りだな。格好をつけるのは苦手だから黙っていたけれど、ボクはきみとジェピーを守りたかった。そのためには、悪人になるのも厭わなかった」
 「そうだったんですね」
 「ボクはね、きみがそのことに気づいてくれたことがうれしいんだ。わだかまりも消えたよ」

 間中は益男に“兄貴”のような口調で優しく言った。

 会話をしながら間中は考えていた。葬儀の連絡だけなら、益男が直接電話してこなくてもいい。しかも、2人は気まずい関係だったからなおさらだ。にもかかわらず、なぜ益男は自分に直接電話をかけてきたのか――。

 間中は薄々気づいていた。
 益男は、これからのジェピーの経営を相談したいのだ。

 間中は株式の所有割合を頭に浮かべた。筆頭株主はふみで持ち分は60%、次が間中の25%、そして益男が10%、残りの5%は従業員持ち株会だ。ふみの所有するジェピーの全株式は益男が相続するだろう。そうなれば、ジェピーは70%を握る益男のものだ。ふみの後ろ盾を失った達也を追い出すのも簡単だ。

 萌からの情報では、ジェピーの業績は上向いてきたらしい。それは達也の功績であることを間中は理解していた。だが、会社は上昇基調に乗るまでが大変で、乗ってしまえば、凡庸な者にも社長は務まるものだ。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の教えを胸に、中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。ジェピーでは、専務の間中隆三やその愛人の沢口萌らによる不正の数々が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、ジェピーを乗っ取ろうとしていた間中らのたくらみを暴いた。達也はその功績から取締役経理部長となった。CFOとしてジェピーの経営に参画することになった達也を待ち構えていたのは、ジェピーの特許を狙う米国の投資ファンドとの熾烈な戦い。しかも、相手は達也のかつての恋人、リンダだった――。物語を読み進めながら、生きた会計知識が身につき、会社経営の本質が分かる会計小説。

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