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不況下の「賃金見直し」論を考えよう【後編】

~レッドオーシャンにいる限り賃金は上がりません

  • 永禮 弘之,長尾 朋子

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2009年7月14日(火)

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 前回と今回の2回に分けて、「賃金の見直し」がテーマです。1回目の前回は、人件費削減の動向と、成果主義も含めた報酬制度の現状に焦点を当てました。2回目の今回は、前回示した現状の動向を踏まえて、報酬制度や企業の利益配分のあり方に触れます。


野々村人事部長

 日本企業の人事部の代弁者、野々村さんは、「緊急対策プロジェクト」の次回の会合で、当面の人件費抑制について、たたき台を示すことになっている。輸出依存度が高いメーカーを中心に、役員や管理職の報酬一律カットに踏み切るところが増えているらしい。大黒社長からは、目先の人件費抑制策だけでなく、中長期の賃金水準や賃金体系のあり方も提案するように、宿題をもらっている。

 野々村さんが勤める中堅流通チェーンのマルコーでは、2000年に短期の個人業績連動の人事評価・報酬制度を導入した。成果主義を採用することで、会社の業績に合わせて人件費の総額をコントロールするとともに、高い成果を上げる優秀な社員の働く意欲を上げることを狙っていた。

 しかし、結果は、惨たんたるものだった。職場の雰囲気が悪くなるだけでなく、前途有望な社員が、業績アップのプレッシャーから相次いで体調を崩し退職してしまった。かつては、社員同士で様々なアイデアを共有していたが、それもあまり見られなくなった。ぎすぎすした社内の雰囲気は、接客サービスの悪化にもつながった。地味だが誰かが引き受けなければならない仕事は、評価につながりにくいため、誰もが避けるようになった。

 野々村さんは、成果主義導入の失敗も踏まえて、賃金体系と利益配分のあり方をどのようにすべきか、頭を悩ませていた。


賃金が上がらない根本原因

 前回触れた通り、ここ10年間、日本全体では社員の賃金は上がっていない。賃金が上がらない構造的な要因は、会社が労働分配率(会社が生み出す付加価値を給与や賞与として社員に分配する割合)を下げたこと、1人当たりの労働生産性が低いことの2点だ。

 今回の不況が起こる前までに、日本の労働分配率は歴史的に低い水準に切り下げられた。労働分配率は、近年のピークである1997年に71%だったが、2007年には60%強にまで10ポイント下がっている。60%という水準は、株主や経営者への利益配分を優先するアメリカより低い。

 低い労働分配率は、非正社員の増加、業績に連動した成果主義の賃金制度の導入という企業の雇用・人事施策によるところが大きい。前回示した通り、バブル崩壊後の1990年代中頃から、総人件費を抑えるため、多くの日本企業が短期業績に連動した成果主義の人事評価・報酬制度を取り入れた。つまり、日本企業は、1990年代後半から意図的に社員への付加価値の分配を減らしてきたわけだ。

 社員の賃金を上げるには、パイの分配よりもパイ自体を増やすことが大切。ところが、社員1人当たりの付加価値創出額を示す「労働生産性」は、本コラム第3回でも触れた通り、日本は世界各国と比べて低い。社会経済生産性本部(現日本生産性本部)の調査(2008年)では、日本の2007年の労働生産性は、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中20位。先進7カ国(米英仏独伊加日)の中では、14年連続で最下位だ。

 儲け(会社が生み出す付加価値)を生み続ける事業構造にするのは、経営者の大切な役割。会社が高い利益を上げるには、どのような事業を手がけ、手がける事業をどのように営むかでほぼ決まる。それを決めるのは経営者だ。

コメント1件コメント/レビュー

もう一つ、賃金見直しに有効な方法として事業規模をどうするか考えるというものがあります。おそらくこの記事を読む限り、事業規模は今のままで据え置きもしくは右肩上がりを予測していると思われますが、例えば主力3事業以外は撤退・売却するという方法もあります。雇用主は変わりますが、雇用者は雇用を守られる可能性も高く、企業もコアコンピタンスに集中できるなど、利点も大きいです。日本の企業はなかなか事業規模を縮小するという決断をとらないですが、一つの経営手法として考えてもらいたいなと思います。(2009/07/14)

「野々村人事部長の歳時記2 人事部長100人とつくるコラム」のバックナンバー

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いただいたコメント

もう一つ、賃金見直しに有効な方法として事業規模をどうするか考えるというものがあります。おそらくこの記事を読む限り、事業規模は今のままで据え置きもしくは右肩上がりを予測していると思われますが、例えば主力3事業以外は撤退・売却するという方法もあります。雇用主は変わりますが、雇用者は雇用を守られる可能性も高く、企業もコアコンピタンスに集中できるなど、利点も大きいです。日本の企業はなかなか事業規模を縮小するという決断をとらないですが、一つの経営手法として考えてもらいたいなと思います。(2009/07/14)

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