今年失業率は戦後最悪になる

昨今雇用状況がますます厳しくなっている。2009年5月の完全失業率は5.2%で、前月(5.0%)に続き約5年ぶりに5%台に達した。失業者数は、前年同月比77万人増えて347万人に上り、5月の増加幅は過去最高だ。
「ハケン切り」として問題視された非正社員の失職者数は、昨年10月から今年6月までの間に、21万人を超す見通し。また、5月の離職の原因は、倒産や人員削減など勤め先の都合が、前年同月比46万人増えて110万人に上り、自己都合の離職者数(101万人)を超している。(総務省「労働力調査」)
経済学者やエコノミストの予想では、完全失業率が今年中に過去最悪(2003年4月)の5.5%(365万人)を超えるのは確実視されている。悲観論者の中には来年に500万人、7%超えを予想する人もいるくらいだ。
雇用情勢の悪化で、会社に対する社員の不満も高まっている。2008年の全国の労働監督基準署に対する不服申し立て件数は、約4万件に達し、53年ぶりの高さだ。賃金の不払いの申し立てが一番多く約3万件で、解雇に関する申し立ては約7000件だ。(厚生労働省調査)
リストラ効果で急場をしのぐ独立系自動車部品会社
実際、輸出依存度が高く、今回の世界同時不況で大きな影響を受けた自動車と電機業界を中心に、リストラ(雇用調整)が進んでいる。日本経済新聞の調査(今年6月)によると、国内の主要な自動車部品会社(12社)のうち、工場閉鎖を実施済みまたは実施予定の会社は8社に上る。国内で正社員の削減を行う会社は3社だ。とくに、大手自動車系列に属さない独立系部品会社では、7社すべてが工場の閉鎖や国内の正社員削減を実施する。
リストラによる収益改善効果は、国内で工場閉鎖や正社員削減を行う独立系の方が大きい。売上高に対するリストラ効果が、大手自動車系列会社では1%から4%なのに対し、独立系では2%から10%を想定している。後ろ盾がない独立系部品会社は、不況に対する危機感が強く、いち早くリストラに取り組んでいるのだろう。
そこで、今回から3回続けて、リストラの影響やリストラへの対処法について、社会全体、会社経営、社員個人の視点から記します。1回目の今回は、リストラによる社会不安や社員の生活への影響に焦点を当てます。
ドラッカーが心配した日本の“社会契約の崩壊”
中堅流通チェーン、マルコーの「緊急対策プロジェクト」会合から人事部の事務所に帰ってきた日本の人事部の代弁者、野々村さんは、珍しくスタッフに会合の経緯を愚痴っていた。「緊急対策プロジェクト」の会合は、人事や組織のテーマを中心に、足元の厳しい環境をどのように乗り切るか、社長や全役員も交えて話し合う場だ。野々村さんは、経営企画室長とともに、このプロジェクトの共同責任者だ。
どうも、会合の席で、パート社員も含めて雇用削減は一切行わないことを野々村さんが提案したところ、役員を中心に反論されたようだ。

「大手メーカーがリストラを行っているからといって、当社も同じことをやっていいとは限らないじゃないか。大手メーカーにとって、非正社員は雇用の調整弁かもしれないが、当社にとっては違う。パート社員も、正社員と変わらない仕事をこなす大事な働き手なんだよ」
野々村さんの愚痴は続く。「わたしが当社に入る前の1990年代に、店舗数削減と人員削減に素早く手をつけなかったため、その後10年近く業績低迷に苦しんだことは確かだ。だからといって、売り上げが落ちたらすぐ社員に辞めてもらうというのは、どうかと思うよ」。
バブル経済が崩壊し、リストラの波が日本に広がっていた1990年代前半、リストラを題材にした過激なアメリカ映画があった。金儲けを追求する金融業界の裏側を描いた「ウォール街」でアカデミー主演男優賞を取ったマイケル・ダグラスが主役を演じる映画「フォーリング・ダウン」(ワーナー)だ。
マイケル・ダグラス演じるまじめそうなサラリーマンの主人公が、リストラと離婚が重なる中でストレスがたまり、交通渋滞に巻き込まれるという些細なきっかけでキレてしまう。その後、短髪でネクタイとスーツを着た、無表情な主人公が、マシンガンやバズーカ砲で大量破壊と暴力を繰り広げるシーンは、妙にリアリティーがあり衝撃的だった。
リストラが発生・問題となる原因は以下が主要因と思います。1.企業の利益率が低く、売り上げが少し落ちるとすぐに赤字に転落して、資金繰りに窮する。2.無職になると、社会に居場所が無い。3.正規雇用の流動性が低いため、リストラされると次の仕事を探すことが困難。4.正規雇用が解雇困難なのに対し、非正規雇用が解雇容易で、差別が存在する(ように感じる人が居る)。なので、利益率の低い会社は無理に救済せず不景気の際に潰し、正規雇用も解雇を容易にして流動性の確保すると共に非正規雇用との差を無くし、転職・無職が当然でその状態でもある程度生きていける社会にする、必要があると思います。要するに、企業と企業人の新陳代謝を高めるということですね。企業が長持ちすること、企業に長く勤めることをあるべき姿とする高度成長期の価値観から早く脱却するべきでしょう。(2009/07/29)