「本気が作る「やる気」人間」

第15講「他人実現」が絆を生む

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2009年7月15日(水)

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 早稲田大学国際教養学部教授のカワン・スタントの学生に対する指導法を評価するのは、これまで紹介してきたように教育関係者や企業人だけではない。

 経済産業省でキャリア官僚だった田辺孝二は「日本の教育は、日本という島国の中でどう生きていくかばかりで、世界の中でどう生きていくかを教えない。それを教えるのが、スタント先生だ」とスタント・メソッドを高く評価する。

 通商産業省(現・経産省)の技術担当参事官だった1990年代後半に、田辺は21世紀の日本ビジョンを考えるための委員会活動を通じて、スタントと知り合った。

インドネシア人というよりもアジア人

 これからの日本人には、何が必要なのか。田辺には1つの答えがあった。それが「国境を越えたモノの見方、考え方」だった。

 田辺は京都大学を卒業後、75年に通産省に入省した、いわゆるキャリア官僚。シンガポールなどの海外赴任を経験したところで、日本人の内向きなモノの考え方に疑問を感じたという。その原因の1つが、教育だと考えた。

96年から「アジア人の会」を指揮し、アジアという大きな枠組みの中で日本人がどう活躍し、生きていくかを真剣に考えていた。

 そこで出会ったのが、スタントだった。その時の印象を、田辺はこう語る。

 「日本人でも、インドネシア人でもなく『アジア人』だと感じた。アジアのスケールで物事を考えていた。先が見えないことにも果敢に挑戦する意欲を持ち、周囲を巻き込みながらも可能性を持つ人たちを目覚めさせる力を持っていた」

 スタントはインドネシアの中国系の家庭で生まれ、差別に苦しみながら独学で勉強し、日本へ留学。その後も外国人という理由だけで職に就けなかったり、職場である研究の現場でも不当に扱われたりしてきた。

 そんな厳しい環境下でも、諦めずに4つの博士号を取得し、インドネシア人として初めて日本の大学の教授を務めるようになった。そして今、自分を裏切り続けた日本に対して「恩返しする」として、日本の大学の教育改革に奔走しているのだ。

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著者プロフィール

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に配属。翌年日経ビジネスアソシエ編集部へ移り、若手ビジネスパーソン向け経済情報を取材・執筆する。2007年から再び日経ビジネス編集部へ。重工、中堅・中小企業を担当。近年は第一次産業や人材業界に関する取材にも注力する。趣味は幼少期から続く宝塚歌劇鑑賞(月2回の観劇はマスト)と、ハマってから6年目になる阿波踊り。今年も徳島と東京・高円寺で踊る予定。



このコラムについて

本気が作る「やる気」人間

父親の事業の失敗、貧困、迫害そして希望の地日本から受けた裏切り――。インドネシア出身の早稲田大学教授、カワン・スタントは、いくつもの壁を乗り越え工学、医学、薬学、教育学と4つの博士号を取得した異能の人物。彼は世間一般が持つ大学教授のイメージとはかけ離れた熱血指導で、学生の心を振るわせ、やる気を育んでいく。これといった目的を持てず閉塞感に苛まされることが多くなった日本人に、スタントの生き様、そして指導法は、必ず響くものになるだろう。

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