早稲田大学国際教養学部教授のカワン・スタントの学生に対する指導法を評価するのは、これまで紹介してきたように教育関係者や企業人だけではない。
経済産業省でキャリア官僚だった田辺孝二は「日本の教育は、日本という島国の中でどう生きていくかばかりで、世界の中でどう生きていくかを教えない。それを教えるのが、スタント先生だ」とスタント・メソッドを高く評価する。
通商産業省(現・経産省)の技術担当参事官だった1990年代後半に、田辺は21世紀の日本ビジョンを考えるための委員会活動を通じて、スタントと知り合った。
インドネシア人というよりもアジア人
これからの日本人には、何が必要なのか。田辺には1つの答えがあった。それが「国境を越えたモノの見方、考え方」だった。
田辺は京都大学を卒業後、75年に通産省に入省した、いわゆるキャリア官僚。シンガポールなどの海外赴任を経験したところで、日本人の内向きなモノの考え方に疑問を感じたという。その原因の1つが、教育だと考えた。
96年から「アジア人の会」を指揮し、アジアという大きな枠組みの中で日本人がどう活躍し、生きていくかを真剣に考えていた。
そこで出会ったのが、スタントだった。その時の印象を、田辺はこう語る。
「日本人でも、インドネシア人でもなく『アジア人』だと感じた。アジアのスケールで物事を考えていた。先が見えないことにも果敢に挑戦する意欲を持ち、周囲を巻き込みながらも可能性を持つ人たちを目覚めさせる力を持っていた」
スタントはインドネシアの中国系の家庭で生まれ、差別に苦しみながら独学で勉強し、日本へ留学。その後も外国人という理由だけで職に就けなかったり、職場である研究の現場でも不当に扱われたりしてきた。
そんな厳しい環境下でも、諦めずに4つの博士号を取得し、インドネシア人として初めて日本の大学の教授を務めるようになった。そして今、自分を裏切り続けた日本に対して「恩返しする」として、日本の大学の教育改革に奔走しているのだ。
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