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上がり続ける失業率、リストラから身を守る

  • 永禮 弘之,長尾 朋子

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2009年8月4日(火)

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 リストラ(雇用調整)をテーマにして、前々回前回と2回にわたり、リストラの社会や個人生活への影響、リストラと業績との関係、リストラをしない経営のあり方、政府の雇用対策などにふれてきました。今回は、社員個人がリストラから身を守る「サバイバル術」を示します。

昨年の不服申し立ては50年ぶりの高水準

野々村人事部長

 厚生労働省の調査では、全国の労働基準監督署に対する2008年度の不服申し立て件数は約4万件で、前年度比11%増。戦後厳しい不況に見舞われ労働争議が盛んだった1950年代以来、53年ぶりの高水準だ。解雇に関する不服申し立ては、7千件を超えている。

 1990年代後半以後、日本企業が従来の雇用・人事慣行を捨て、社内に競争原理を持ち込んだことで、会社と社員の関係は大きく変わった。1990年代後半、早期退職の名の下に大企業でも退職強要が行なわれた。会社が一方的にそれまでの暗黙の約束を破り、違法行為すれすれの行状にいたるのを見て、社員たちは会社に対する不信感を募らせた。

 その結果、社員は会社を訴えることを躊躇しなくなった。役所に寄せられる内部告発は、年間5000件に達するようだ。(『内部告発』諏訪園貞明、杉山浩一共著 辰巳出版)労働紛争をすばやく解決するため2006年に導入された労働審判制度には、昨年社員から2000件を超える申し立てがあった。(日本経済新聞)

社員は法律を知ろう

 日本企業の人事部の代弁者、野々村さんは、以前勤めていた大手電機メーカーの同期から、解雇について相談を受けていた。

 彼は、創業者の息子が社長で、創業者一族が大半の株を所有し、主に飲食・サービス業と不動産業を営む地方の中堅企業の営業部長をしている。現社長とは、社長の常務時代に、ある会合で知り合ったことをきっかけに交流が始まった。彼が現会長から社長を継いだ直後の6年前、同期は不動産部門の営業部長としてヘッドハンティングされた。

 同社の拠点がある地域は公共投資に依存しているため、公共投資の落ち込みの影響は深刻だ。くわえて、大手電機メーカーの工場閉鎖が相次いだことから、地域経済は低迷していた。それにともない、同期が勤める会社の業績も下がっていった。

 転職当初の2年間は、営業成績がよかったこともあり、彼と社長との関係は良好だった。しかし、会社全体の業績悪化とともに、同期の営業成績も目標未達が続くようになった。しばらくすると、社長の彼に対する態度が一変した。

 毎月の実績報告会議では、全役員、全部長がいる中で、彼は社長から怒鳴られるようになった。目標未達の背景や原因を説明しようとすると、「自分の無能さを棚にして言い逃れをするな」という全人格を否定するような罵声を浴びせられた。

 昨年の世界同時不況は、同社の業績を直撃。メインバンクの地銀がサブプライムローンやデリバティブの損失をこうむったことで、貸し渋りにもあっていた。社長には、何とか業績を改善して、銀行の心証を良くしたいという焦りがあった。日に日に、業績の足を引っ張る不動産部門の営業責任者である同期に対する風当たりが強くなっていった。

 そして、先月、「これ以上営業目標の未達が続くならば、来月自主的に退職してもらいたい」という旨の通知が、内容証明郵便で届いたのだ。その中には、同期が交際費として精算した経費に私用の飲食費が含まれているので、自主的退職に応じない場合は、背任横領による懲戒解雇も辞さないとも書かれていた。


 リストラにはいくつかの手段がある。一番多いのが「希望退職」で、社員本人の意思で会社が提示する条件に沿って退職するもの。

 希望退職が社員による自主的な退職の意思表示が前提条件なのに対し、会社の急激な業績悪化にともなう「整理解雇」という手段もある。しかし、整理解雇は、後述するとおり、厳しい適用要件が定められ、会社が実際に行なうのはかなりむずかしい。

 本来リストラの手段ではないのだが、野々村さんの同期が突きつけられている「懲戒解雇」も、実際は外資系や中小企業ではリストラの手段として使われている。解雇のターゲットとなった社員について、就業規則に定められている懲戒解雇の事由にあたる事実がないか、会社は念入りに調べた上で、懲戒解雇にしない代わりに自主退職を迫るのが常套手段だ。中には、実際に懲戒解雇に踏み切るケースもある。

 社員個人から退職強要や解雇の相談にのり、前々回と前回にも登場いただいた人事コンサルタント、杉山氏は、中小企業の解雇の実態を語っている。

 「典型的な中小企業の社長は、自分が苦労して会社をここまで大きくしたという自負があります。会社のものはすべて自分の所有物であり、社員は自分の意向に従うのが当然だと思っています。だから、気に入らない社員が出てくると、首にするという発想になる。彼らにとって、自分が苦労してここまで大きくした会社なのに、一介の社員の分際で自分に楯突くなど言語道断なのです」

 「首切りのターゲットは、社長の好き嫌いで決まってしまうのが実態ですね。そして、中小企業のトップは労働法制の中身も知らないし、それを守るという発想もあまりないことが多い」

 現在劇場公開している映画『ハゲタカ』のテレビドラマシリーズに、休日玩具メーカーの社員たちが社長の自宅の草むしりをしているシーンが出てくる。第三者からすると、異常な光景なのだが、社長も社員たちも疑問を感じていないようだ。ドラマの主人公に公私混同を詰問されると、女性社長は、「社員たちは好きでやっているのよ」と開き直ってしまう。

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「野々村人事部長の歳時記2 人事部長100人とつくるコラム」のバックナンバー

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