「野々村人事部長の歳時記2 人事部長100人とつくるコラム」

「不況で削減できる研修など会社の自己満足に過ぎない」

不況のいま、会社の人事部長たちの声を聞く(1)

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2009年9月30日(水)

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 日々人事改革に挑む野々村人事部長。このコラムでは、採用、人員構成、教育、賃金、労働生産性・残業というテーマを取り上げ、野々村さんが不況に苦しむ流通チェーン、マルコーの緊急対策プロジェクトに取り組む姿を描いてきた。読者の方々からは、それぞれのテーマに対し多くの意見を寄せていただき、ありがとうございました。

 さて、一方で、実際の人事部長は、いま、どんな考えを持ち、意思決定、行動しているのだろうか。この連載にあたり、人事部長、人事責任者の方々にアンケートのご協力を新たにお願いしたところ、20人の担当者が熱い意見を寄せてくれた。

 今回から、3回にわたり、実在する人事部長、リアルな“野々村さん”たちの声をお届けする。まずは、採用と教育に関する人事部長たちの声を紹介していきたい。

新卒は採りたいけれど…

野々村人事部長

 野々村さんは、新卒採用数の見直しにあたり、「新卒採用は短期の利益を生むための調整弁ではない。新卒採用は続けたい」と主張していたが、新卒採用数を実際に抑制している人事部長たちはどのように考えているのだろうか。

 新卒採用を長期間抑制している医薬系企業の人事部長は、正社員の人員構成(年次構成)の歪みを感じながら、「組織の高齢化が著しく、中途採用で若手強化を図っている。新卒定時採用は組織活性化やノウハウ継承のために本来は必要だが、現状では困難」と答えてくれた。

 厳しい業績下のマスコミ業の人事部長からも似た意見が出ている。

 「新卒採用を凍結していた時期があり、30歳代の中堅社員の数が極端に少ない。数年前から新卒採用をそれなりの規模で復活させているが、年齢構成の歪みは簡単には解消できそうもない」

 「新卒採用が短期的な業績に左右されるべきではないと理解しているものの、現在の業績悪化は人件費を含めた収益構造に要因があり、それを解消しないと増員できる状況にはならない」

組織が弱体化していく恐れ

 新卒採用の抑制によって、組織に何が起こっているのだろうか。

 現在、人員削減に取り組む外資系メーカーの日本支社の事業部長が語る。

 「組織の高齢化によって、評論家が増える一方、意欲がありフットワーク軽く動く社員が激減している。マネージャーが会社で新聞を読んでいるような“古きよき時代”には戻れないことを組織メンバーに理解させ、マネージャー層が自ら動く体質に変えようとしているのだが」

 人材不足も深刻だ。中堅の食品製造業の人事課長は「過去、極めて近視眼的に業績動向により採用を増減させたことにより、現在40〜50歳代あたりの人材層が大変薄い。そのため役員から課長層に至るまでのサクセッション・プラン(後継者育成計画)が組めない状況」と危機感を募らせる。

 同じく、外食中食業の人事部長も「2000年前後からの5年間の新卒採用抑制が年次の空白を産み、世代間の格差ができてしまった。その時採用を継続していれば、現在の厳しい時代に最前線の強力なリーダーに育っているはずなのに、と悔やまれる」と過去を振り返る。

 さらに、前述の食品製造業の人事課長は組織の価値観(バリュー)形成に与える影響について言及する。

 「中途採用が7割に達しているため、“自社らしさ”や“自社のDNA”が希薄で価値観の軸が見えない。言い換えれば、組織に明確にあるのは『売り上げ・成長』の軸だけで、それ以外の軸がはっきりしていないのです」

新卒にかける期待は大きい

 新卒定時採用を抑制しているか否かにかかわらず、今回意見を寄せた大半の人事部長たちが「不況下においても新卒定時採用は必要である」と考えているようだ。その理由を聞いてみた。

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著者プロフィール

瀬川 明秀(せがわ・あきひで)

日経ビジネス副編集長。

永禮 弘之(ながれ ひろゆき)

永禮 弘之

株式会社エレクセ・パートナーズ代表取締役
これまで、化学会社の経営企画、外資系コンサルティング会社のコンサルタント、衛星放送会社の経営企画部長・事業開発部長、組織変革コンサルティング会社の取締役などを経て現在に至る。建設、化学、医薬品、食品、自動車、電機、情報通信、小売、外食、ホテル、教育出版、文具など幅広い業界の企業に対して、7000人以上の経営幹部、若手リーダーの育成を支援。ASTD(アメリカに本部がある、世界最大の人材開発・組織開発の非営利団体)日本支部理事、リーダーシップ開発委員会委員長。

著書・雑誌寄稿:『強い会社は社員が偉い』日経BP社、『問題発見力と解決力』日経ビジネス人文庫(共著)、『グループ経営の実際』日本経済新聞社(共著)、『日経ビジネスオンライン』連載「野々村人事部長の歳時記」、『日経ビジネスアソシエ』連載「MBA講座」、最近の著書に『強い会社は社員が偉い 社員様第一経営のススメ』(NB Online book)がある。

 

長尾 朋子(ながお ともこ)

長尾 朋子株式会社エレクセ・パートナーズ クライアントパートナー
人材開発に関する研修プログラム、アセスメントなどの商品・サービスの企画開発、マーケティングをはじめ、異業種合同研修プログラムの企画、事業会社の教育体系構築支援などに取り組んでいる。長年にわたり、大手流通業で、全社能力開発・研修体系の構築、次世代リーダー、階層別マネジメント研修プログラムの企画開発・運営管理を行い、その後、教育事業会社の立ち上げや、組織変革コンサルティング会社でのリーダー人材育成支援に携わってきた。
雑誌寄稿:『日経ビジネスオンライン』連載「野々村人事部長の歳時記

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