「東京R不動産」という不動産物件仲介サイトがある。古いけど味がある、バルコニーが広くて眺めがいいといった、デザインや感覚の視点から選んだ物件を掲載しているのが特徴だ。
この物件について仲介実務を担当するのがスピーク(東京都渋谷区)という会社。こう聞くと、スピークという不動産ベンチャーが、東京R不動産というブランドを立ち上げて事業を展開しているように思える。が、さにあらず。
ここに、21世紀型ワークスタイルが垣間見える。出てきたキーワードは、芸人のタモリ。一体、どういうことなのか――。
「未来の仕事」を考える。最終回は、筆者であるソウ・エクスペリエンス(東京都渋谷区)の西村琢社長が「兄貴分」と慕う、スピークの林厚見共同代表との対談をお届けする。
西村 琢(以下、西村) 最初に私が不動産物件仲介サイト「東京R不動産」で借りたオフィスが、コンクリート打ちっ放しという作りで内装はガラス張りという、ファンキーな部屋でした(笑)。こうした特徴ある物件を扱っていますが、景気が悪い今は、やはり成約率が下がっているのでしょうか。

スピーク共同代表。1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科、コロンビア大学不動産開発科修了。1997年よりマッキンゼー・アンド・カンパニーにて、諸業種大企業の経営戦略コンサルティングを行う。2001年スペースデザイン入社、2002年より財務担当取締役。財務、経営企画及びサービスアパートメント、サービスオフィスなどの開発における資金調達、業態企画、プロジェクト管理などに従事。2004年に事業用不動産の開発・再生プロデュースを手がけるスピーク(東京都渋谷区)を共同設立
林 厚見(以下、林) あんまり時代と関係なく、順調というか、“小さく順調”ですかね。東京R不動産は月間で約280万ページビュー。おかげさまで、20人ぐらいの規模でやっている不動産の集客数で言えば、たぶん日本で一番大きいんじゃないかと思います。
ただ、東京R不動産という事業自体、規模拡大は第1の目的では全くありません。コンセプト優先で着々と取り組んでいます。
西村 東京R不動産は、紹介物件が面白いだけでなく、組織としての働き方も興味深いですね。運営に携わっているフルタイムスタッフの人数が少ないという印象が私にはあります。
林 正確に言うと、社員が少ないんです。みんな個人事業。要するに、音楽のバンドですよ。ギタリストがここのバンドではこういう音楽をやっているけれども、ほかの人とユニットを作ったりもする。もちろん、解散することもある。メジャーに参加しながら、自分主導のバンドはインディーズのままにしておくとか。各自が、自由なのです。
人は合理的でないものに惹かれる
西村 なぜこのような形態になったのですか。
林 もともと東京R不動産は、リノベーションと言うか、「古い建物の再生」をテーマにして始めたプロジェクトでした。同じ興味を抱く4〜5人の個人が集まって活動したところ、消費者の支持を得ることができました。そこで「これをビジネスとして持続できる仕組みにしましょう」という話になり、メンバーがバーチャル事業主のような形でバンドを作ったわけです。今、5年ほど続けています。
我々としては、人それぞれの物件を選ぶ価値観や軸をもっと豊かにしたいというのが根底にはあります。ただ、みんな仕事の領域が異なりますし、1人ひとりがテーマを持っているので、会社として、いわゆるピラミッド的に拡大していくということではやっていないのです。

西村 東京R不動産のトップページの左に、「レトロな味わい」「眺望GOOD」「倉庫っぽい」といった表現の検索案内がありますよね。あれが心をくすぐります。
林 確かに、東京R不動産のコンセプトを理解してもらうのには、役立っていると思います。もっとも、機能としては全く合理的ではないんです。実際には、お客様が「レトロな味」とか「バルコニーがでかい」とかで検索するわけではありませんから。
お客様には予算も立地も要望があります。ただ、そこから入ってしまうと、驚きのある出会いにつながりません。偶発的にハッピーな出会いが期待できる方が、人の気持ちをそそるでしょう。出会うプロセスにワクワクする。ちょっと合理的でないところに、人は惹きつけられるであろう、と。
西村 セレンディピティー(発見する能力)と言うんですかね。林さんは工学部建築学科の出身で、建築家が造るような建築物に興味を持っていたことが、東京R不動産のようなサービスを思いついたきっかけですか。
林 特殊な建築家が造るようなものは好きなのですが、一方で、社会的には普遍性をあまり持たない部分があるのも確かです。これをどうクロスするか、ということはずっとテーマとして考えてきました。世の中にある合理性を追求した“金太郎飴”的な不動産流通みたいなものは、単純に感性としてつまらないと思っているので、それに対するチャレンジです。
誤解してほしくないのは、既存の在り方を全面否定しているわけではありません。オルタナティブ(代替案)はあるべきだし、あった方が面白いし、望む人は着実に一定量いるということです。
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ソウ・エクスペリエンス社長。1981年東京生まれ。2004年3月に慶應義塾大学経済学部を卒業。在学中の2003年、松下電器産業(現パナソニック)の事業プランコンテストで優勝、出資を受ける権利を得るが、起業の道を選び、2005年にソウ・エクスペリエンス(東京都渋谷区)を設立。体験型ギフトを販売するウェブサイト「

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