「食欲に透ける“建前と本音”学」

ウーロンハイって、おいしいですか?

「ビールの後の2杯目」というブルーオーシャン

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2010年2月3日(水)

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 皆さんは最近、居酒屋に行っていますか? 一連の不況の影響で、消費者の財布の紐はギューっときつくなっているようですが、それにより外食産業は大きなダメージを被っています。中でも居酒屋に代表されるようなアルコールが絡む業態では、そのマイナスの幅は甚大です。

 確かに居酒屋は生活に必須なものではないかもしれません。とは言え、多くの会社員にとっては、同僚や友人とのコミュニケーションのため、あるいは日頃のストレス発散や、生活の潤いのために、居酒屋は大切な存在であることも間違いありません。

 今回は、そんな居酒屋で皆さんが普段何気なく頼んでいるであろうお酒について、少し考えてみたいと思います。

 まず、乾杯と言えばビールです。いえ、「乾杯と言えば、ビールが定番だった」とした方が実は正確かもしれません。「若者のアルコール離れ」という言葉が最近しばしば聞かれますが、とりわけ「ビール離れ」は深刻です。居酒屋において最初からサワーやカクテルを飲む若者が増えていますので、「とりあえず生!」というフレーズは、近い将来に死語になってしまうかもしれません。

ビールのうまさを知りえない世代

 さて突然ですが、皆さんが最初にビールを飲んだ頃のことを思い出してみてください。おそるおそる口にしたビールは苦いばかりで決しておいしいとは思わなかったはずです。「大人は何でこんなまずいモノを、あんなに嬉しそうに飲むのか理解できない」というのが大抵の人の第一印象だったのではないでしょうか。

 しかし、大学生あるいは社会人になって、先輩や上司と飲む機会が増えると、「ビールしか選択肢のない状況」が頻繁に訪れます。そんな環境で仕方なく飲んでいるうちに、次第にその味に慣れていき、気づけばビールのうまさが体に染み付いてしまった。多くの人のビールとの関係は、こんなものではないかと思います。

 誤解を恐れずに言えば、ビールとは決して最初からおいしいと感じるものではなく、何度も何度も接しているうちに、そのうまさに次第に目覚めていくという類の飲み物です。この点は子供が飲んだとしてもおいしいと感じるかもしれない甘い果実酒やカクテルとの大きな違いです。

 しかし、近年、若者の間ではそのような「都合上、ビールを飲まざるを得ない状況」が急激に減少しています。大学でもサークルなどのコミュニティにわざわざ属さなくなり、社会に出ても仕事後に先輩や上司と無理して飲む時代ではなくなってきました。

 そうすると、酒を飲む機会自体が減り、また飲むとしても気の合う仲間と好きな味のカクテルやサワーを楽しむだけという状況ですので、わざわざ“苦くてまずいビール”に手を出すことはなくなるでしょう。

 こうして若者はビールの魅力を知らないまま、20代後半、そして30代へと年を重ねていくことになります。そんな彼らがある時を境に急にビールのうまさに目覚めて、がぶがぶ飲むようになるとは、とても考えられません。

 国内のビールの市場は長らく微減傾向が続いていますが、現在ビールを飲み支えているユーザーが高齢化したある時期から、微減どころか急速に需要が「消滅」していくのではないでしょうか。そのスピードは関係者の予想をはるかに上回るかもしれません。

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著者プロフィール

子安 大輔(こやす・だいすけ)

子安 大輔カゲン取締役。1976年生まれ。東京大学経済学部卒業後、博報堂に入社し、飲料・食品・金融などのマーケティング戦略立案に従事。2003年、飲食業界へ転身。2005年に飲食店のプロデュースやコンサルティングを手がけるカゲン(東京都世田谷区)の設立に携わり、取締役就任。起業や独立などのための専門スクール「スクーリング・パッド」(東京都世田谷区)設立にも関わる。2009年、『「お通し」はなぜ必ず出るのか ビジネスは飲食店に学べ』(新潮新書)を上梓。



このコラムについて

食欲に透ける“建前と本音”学

食品スーパーや飲食店などが続々と登場しては、次々と消えていく――。食欲は、人々の本能であり、物欲が満たされつつある現在、「食」に対する関心と期待は高まる一方だ。そこで、「食」を通じて垣間見える、世の中の事象、そしてその背景にある人々の微妙な心理を取り上げる。人間の“欲”の本質を探ることで、マーケティングのヒントを得られる「視点」を提示していく。

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