「食欲に透ける“建前と本音”学」

紅茶チェーンが見当たらないワケ

コーヒーとの違いは、「時間消費」の視点にあり

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2010年2月17日(水)

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 皆さんは「コーヒー派」と「紅茶派」、どちらですか?

 レストランや飛行機で食事をした後には「コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」と聞かれるくらいですから、多くの人の頭の中では、この両者は同列に位置するような存在と言えるでしょう。

 けれども、身の回りをよく見てみてください。

 ドトールやスターバックス、プロント、タリーズなど全国的にチェーン展開をしているコーヒーショップは数多く存在するのに対して、それと対抗するほど多くの店舗数を誇るティールームやティーサロンというのは皆無です(先に挙げたコーヒーショップでは、紅茶のメニューも販売はしていますが、前面的に打ち出しているわけではありません)。

 また、外食としての喫茶業態ではなく、缶やペットボトルに入った飲料でも同じことが言えます。コーヒーの有名なブランドと言えば、「ジョージア」「ボス」「ファイア」「ワンダ」「ルーツ」「UCC」など頭にいろいろ浮かんでくるとは思いますが、紅茶ではどうですか? 「午後の紅茶」以外に、いくつもの銘柄をすぐに思いつくという人は少ないのではないでしょうか。

同じ嗜好飲料なのに・・・

 コーヒーと紅茶は、似たような「嗜好飲料」と位置づけられているはずなのに、ビジネスの実態としての規模は大きく異なるようです。この違いは、一体どこから生まれるのでしょう?

 1つには「中毒性」や「習慣性」が挙げられるように思われます。実際のカフェイン含有量に関しては諸説あるようですが、少なくとも私の知る範囲では「コーヒー中毒」の人はいても、「紅茶中毒」というのは聞いたことがありません(もちろん紅茶中毒の人もいるでしょうが、絶対数としては少ないと考えられます)。

 このことは、味覚的な強さの違いに由来するのかもしれません。

 また、例えばスターバックスなどのコーヒーショップで紅茶を頼んだ時には、お湯とティーバッグを渡されることが多いと思います。支払った数百円の対価がお湯とティーバッグというその光景を見て、私は何とも言えない寂しい感覚を抱いてしまいます。

 すなわち、紅茶はコーヒーと比較した時に、中毒性や味覚的、視覚的な強さで劣っていると考えられます。分かりやすく言うならば、紅茶は「パンチが弱い」のです。そしてその総合的なパンチの弱さが、私たちに「お金を払う価値」を感じにくくさせているという側面があるのではないでしょうか。

 少し違う観点からも見てみます。嗜好飲料と言うのは、それを飲んでいる「時間」の視点が欠かせません。コーヒーと紅茶を、そのような時間的観点で比較してみましょう。

 コーヒーはボーッとしている意識を覚醒させたり、仕事や作業の合い間の休息を楽しんだりするために飲む印象が強いように思われます。すなわち、「リセット」や「スイッチ」という言葉が当てはまるような、比較的短い時間と相性がいいと言えます。

 それに対して紅茶は、アフタヌーンティーという言葉もあるくらいで、よりゆったりした時間を過ごすイメージがあります。「コーヒーブレイク」に対して、「ティータイム」と言えば、両者の違いが明確になるかもしれません。

 ますます時間に追われる現代人には、紅茶を飲んで心豊かな時間を過ごすような余裕すら残されていないのかもしれないと考えるのは、うがった見方でしょうか。

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著者プロフィール

子安 大輔(こやす・だいすけ)

子安 大輔カゲン取締役。1976年生まれ。東京大学経済学部卒業後、博報堂に入社し、飲料・食品・金融などのマーケティング戦略立案に従事。2003年、飲食業界へ転身。2005年に飲食店のプロデュースやコンサルティングを手がけるカゲン(東京都世田谷区)の設立に携わり、取締役就任。起業や独立などのための専門スクール「スクーリング・パッド」(東京都世田谷区)設立にも関わる。2009年、『「お通し」はなぜ必ず出るのか ビジネスは飲食店に学べ』(新潮新書)を上梓。



このコラムについて

食欲に透ける“建前と本音”学

食品スーパーや飲食店などが続々と登場しては、次々と消えていく――。食欲は、人々の本能であり、物欲が満たされつつある現在、「食」に対する関心と期待は高まる一方だ。そこで、「食」を通じて垣間見える、世の中の事象、そしてその背景にある人々の微妙な心理を取り上げる。人間の“欲”の本質を探ることで、マーケティングのヒントを得られる「視点」を提示していく。

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