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「作り方・売り方・接し方」。商売のすべてがここにある

成果主義から転向したレストラン起業家に学ぶこと

  • 子安 大輔

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2010年4月28日(水)

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 外食産業の世界で、「接客の神様」と呼ばれている人物がいます。

 それはHUGE(ヒュージ、東京都目黒区)の代表、新川義弘(しんかわ・よしひろ)氏です。新川氏は、グローバルダイニング(イタリアンレストランの「ラ・ボエム」、エスニックレストランの「ゼスト」、和食レストランの「権八」などを展開する外食企業)の副社長を長年務めていた人物で、ジョージ・W・ブッシュ前米大統領と小泉純一郎元首相の会食の接客を担当したことでも知られています。

 現在は、「リゴレット」というカジュアルなブランドを中心に、9店舗の飲食店を経営していますが、業界全体が厳しい中、いずれの店舗も好調な業績を誇っています(2009年12月期の売上高は27億円強、前年同期比31%増)。

「奇抜さ」「見映え」の前にやるべきこと

 先日、新川氏のお話をじっくりうかがう機会があったのですが、同じ業界に身を置く私にとってはもちろん、異業種の方にも参考になりそうな考えがたくさんありました。その中で、ここでは新川氏が意識している3つの視点をご紹介したいと思います。

 1つ目は、「60点を取り続けることの大切さ」です。

 「接客の神様」という表現から想像されるのは、おそらく「スペシャル」なサービスではないでしょうか。同じようにサービスが話題になる企業としてザ・リッツ・カールトン ホテルがあります。リッツ・カールトンが紹介される時には、「スタッフの機転の利いたサービスで、こんなにお客様は感動した!」というような「サプライジング」な事例が多いので、そう思われるのももっともです。

 しかし、新川氏率いるHUGEでは、そのようなスペシャルなものを目指しているわけではありません。目標にしているのは「赤点を取らないサービス」。言い換えれば、「どのお客様にもイヤな思いをさせないサービス」です。

 前提にあるのは、「あるお客様にとって100点でも、別のお客様にとって0点だったら、それは飲食店としてはダメなんだ」という思想です。

 例えば、一部の優秀なホールスタッフが常連客の名前をたくさん覚えていたり、おかわりを頼まれる前に先回りして注文を聞いたりというようなことは、素晴らしいサービスです。けれども、全員のスタッフがそれをできるかというと、そう簡単なことではありません。

 あるいは、誕生日を迎えた来店客のためにスタッフがバースデイソングを歌ってあげれば、その人はとても喜ぶでしょう。しかし、給料日明けの金曜日の午後8時、店内が満席でスタッフが走り回っている時に、それと全く同じことを行うのは、難しいかもしれません。

 顧客は、一度でもスペシャルなサービスを経験すると、次にもそれを期待するのは当然です。しかし、一部のスタッフだけしかできないこと、あるいはいつもできるわけではないことを追求してしまうと、それはサービスのバラツキにつながってしまうのです。そして、それは顧客の期待を裏切ってしまうことにもなりかねません。

 もちろんスペシャルなことは目指すべき理想ではありますが、その前に徹底すべきは「不満を抱かせないこと」です。飲食店で言えば、きちんと席に案内されて、しかるべきタイミングで注文を取ってくれて、あまり待つことなく飲み物や料理が出てくること、そしてスムーズに会計を済ませることができることでしょう。

 そんな「当たり前」の部分にこそ、まずは徹底的に注力しているのです。けれども、この「当たり前」の部分を、「当たり前」としてできている飲食店が決して多くないことは、皆さんもこれまでにあちこちで経験しているのではないでしょうか。

 このような基本の部分のことを新川氏はスポーツになぞらえて「基礎体力」と呼びます。まずは、この基礎体力がきちんとあることが何よりも重要なのです。そして、名前を覚えたり、気が利いたりするサービスをすることは、あくまで「運動神経」であり、それは基礎体力があって初めて効果を発揮すると言うのです。

 成熟した市場の中では、ライバルとの熾烈な競争を勝ち抜くために、「奇抜さ」や表層的な「見映え」に注力する動きが、多くの業界で強まっていることを感じます。ただし、これらはしっかりとした基本があってこそ、本来は有効なのではないでしょうか。

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